英語力の要は中学英語
本宅 「知のヴァーリトゥード」 が、90,000 ヒット目前である。週末はややアクセスが落ちるので、日曜の夜明け頃に達成か。恒例のキリプレ和歌は、今回はなし。旧盆過ぎとみられる 10万ヒットまでお預けということで。
ところで、「英語力の要は中学英語にあり!」 という共感できる主張を見つけた。
「よのなかフォーラム」という、一種の BBS の中の書き込みで、「国際シンポジウムにおけるプレゼンの技術」というセミナーを受講しての感想という形になっている。
講師は宇宙核物理学という分野の実力派若手研究者、望月優子さんという方だそうだ。
国際シンポジウムでのプレゼンなので、もちろん、スピーチは英語で行われた。
このスピーチで、講師の望月さんは、
- 聴衆は英語を母語とする人だけじゃない。
- むしろ今はアジアやロシアなど英語圏以外の研究者に向けて話すことの方が多いし、重要だ。
ということを指摘されたそうだ。
その上で、この書き込みをされた「よっちゃん」という方は、次のようにまとめておられる。(以下引用)
英語圏の人に話をするなら、気の利いたレトリックも必要かもしれないし、流ちょうな発音も必要かもしれません。
その方がインテリだと思ってもらえる可能性も高くなります。が、英語圏以外の人に話す場合、気の利いたレトリックを使ったがために理解されない恐れ (ママ) が大きくなってしまいます。
だから、むしろシンプルに話した方がいい。
シンプルに話すための指標になるのは、中学校で習う程度の英語。
特に、中学英語程度の文法を使って話すといいのです。
この主張はもっともなことである。
国際的な会議やフォーラムなどでは、英語がデファクト・スタンダードである。このような場においては、私のようなネイティブ・スピーカーでない者が聞いてよく理解できるのは、英語圏以外の人の英語なのだ。
英語圏以外の人のスピーチは、大抵ほぼ完璧に理解できるが (もちろん、専門分野以外の、日本語でも理解できないような小難しい話を除く)、ネイティブ・スピーカーのスピーチは、7割わかれば上出来という気がしている。
私の場合、ネイティブ・スピーカーの発音が苦手というわけではない。発音だけに限れば、非英語圏の訛りの強い英語よりも、米国東部の英語の方がずっと聞きやすい。(オーストラリアやニュージーランドの英語は、かなりてこずる)
苦手なのは、とくにニューヨーカーあたりに顕著な、マシンガンのようなスピードと、気の利きすぎたレトリックである。ペラペラペラっと早口でジョークを交えられると、残念なことに何がおかしいのかわからないことが多い。
彼らの多くは、重要な本筋部分は案外ていねいにわかりやすく話しても、ジョークの部分は自分本来のリズムに戻るので、私には速すぎるのである。周りのネイティブ・スピーカーにどっとウケてるジョークにほとんど反応できないのは、哀しいものである。
上記の BBS の書き込みは、こうした自分自身の経験からも賛成できるものである。
「世界標準語」としての英語は、文法の視点からは、本当に「中学英語」で十分である。言い方を変えれば、日本の英語教育は、文法の視点からは中学校の段階で必要十分なレベルまで習得できるようになっている。高校以後は、とくに目新しいことは教わらない。
中学校で十分な文法レベルに達するのだから、後は単語力だけである。
よく単語なんて何百語程度で十分などという主張を聞くことがあるが、それは 「トラベル英会話」 の世界のお話で、道案内程度以上のコミュニケーションをしたかったら、やはり数千語レベルの単語力は必要だ。
とはいえ、中学校で習得する英語の「足腰」部分がきちんとしていれば、単語なんていうのは単純に覚えればいいだけの話なので、楽なものなのである。
日本の英語教育が間違っているなどとよく言われるが、そんなことはない。ちゃんとやれば国際的に十分通じるようにできている。通じないのは、ちゃんとやらなかっただけのことなのだ。
とはいえ、私も英語のジョークですかさず笑いたい!
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