欲しい商品が買えないパラドックス
以前にもコラムに書いたが、我が家では天然酵母の自家製パンを作っている。こねるのは私で、焼くのは妻の役割。全粒粉を 50%ブレンドした素朴な風味が特徴だ。
しかし、なにぶん手作りなので、生産が追いつかず、仕方なく市販の食パンを買うこともしょっちゅうである。
市販のパンは、ライ麦パンか発芽玄米食パンというのを買うことにしている。我が家の自家製パンの素朴な風味に近いからだ。
真っ白なふわふわすぎる定番の食パンは、あまり好みではない。あんなのは、カリカリにトーストしないと食えたもんじゃないと思っている。
しかし、どこのスーパーでも、ライ麦パンと発芽玄米食パンというのはすぐに売り切れてしまって、夕方近くに行っても手に入らないことが圧倒的に多い。一方、白い食パンは、いつ行っても豊富に品揃えしてある。
それで、10回のうち 9回は、しかたなく白い食パンを買って帰る。車で足を伸ばせばパンの専門店もあるのだが、そこまでするのもおっくうだ。今日の物が溢れる時代で、希望の商品が手に入らないというのは、ちょっとした悲哀である。
元々、ライ麦パンと発芽玄米食パンは、仕入れる量が圧倒的に少ないようだ。普通の白い食パンと比べると、多いところでも、せいぜい 5%以下ではないかと思われる。これでは、あっという間に売り切れるのも道理である。
しかし、これほどまでに品薄になりがちな商品を、どうしてもっと仕入れようとしないのか。私は、店の担当者のデータ分析力不足だと思う。売上げを分析する POS システムによって吐き出されたデータを、きちんと読み取る力がないからだ。
ライ麦パンと発芽玄米食パンは、仕入れ量が少ないから、当然、売上げも圧倒的に少ない。それで、ただでさえ「売れ筋」とは認識されにくい。
さらに、ライ麦パンを買いに来た消費者も、それが品切れならば仕方なく白い食パンを買って帰ることが多い。これによって、「仕方なく買った白い食パン」でも、コンピュータには「積極的に買った白い食パン」とまったく区別されずにインプットされ、「販売好調」の商品としてアウトプットされる。
そのデータベースを見た担当者は、どう分析するだろうか。
「なんだ、ライ麦パンなんて、これしか売れないのなら、力を入れる必要なんて、まったくないな。それに比べて、定番の食パンの売れ行きは好調だから、今後もこっちを重点的に仕入れよう」
と、こうなるに違いない。ちょっとした誤解である。
しかし、もう少し突っ込んで分析したら、ライ麦パンは一日のうちの早い時間に完売してしまって、午後は「販売機会損失」となっていることに気付くはずである。決して「売れない」のではなく、「売らない」から数字にならないだけなのだ。
さらに、定番の白い食パンは、常にかなりの量が売れ残って、翌日の値引き販売につながることにも気付くはずだ。
閉店間際になっても売れ残っている定番食パンの、2-3 割でいいから、ライ麦パンと発芽玄米食パンだったら、値引きしなくてもその日のうちに正価で売れるはずなのに。このことに気付く担当者は少ないようだ。
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