「おばんざい」を巡る冒険
「おばんざい」という言葉がある。何だか知らないうちは、「何でまた『万歳』に "お" を付けるんだ?」 なんて思っていたが、どうやら、メシ関係の京都弁らしいと知ったのが、30歳を過ぎてからのこと。
35歳を過ぎた頃に、「おばんざい」を売り物にした店で実食デビュー。結構おいしかった。
その時の印象から、「おばんざい」とは、会席料理のような肩肘張ったものではなく、要するに京都の家庭料理なのだなと思ったのだった。私はそうした料理が好きなので、歓迎である。
というわけで、私は「おばんざい」とは、日常の晩ご飯のお総菜ということで、「お晩菜」なんだろうなあと、勝手に思いこんでいた。
ところが、このほど本宅リンクページの 「今月のお薦めサイト」で、萌野さんのブログ「むしやしない」にリンクさせてもらったのを機に、「おばんざい」の意味をちゃんと知ろうとしてみたところ、一筋縄ではいかないということに気付いたのである。
そもそも、この「むしやしない」という京言葉からして、なかなか奥が深い。小腹が空いたときにちょっと食べるものという意味のようで、漢字で書けば「虫養い」なのだろう。京都人というのは「腹の虫」と、長年の共存共栄関係を築いているもののようだ。
いやいや、今回は「おばんざい」の話なのであった。「虫」の話はまた今度にしよう。
「おばんざい」の漢字表記は「お晩菜」のほかに、少なくとも 2つの説があるということを発見してしまったのである。
まず、「お番菜」である。これは、善右衛門さんという方が、ご自身のブログで紹介されている。(以下引用)
おばんざいというのは「お番菜」と書きます。この番というのは「番茶」などに使う字で、「通常の」とか「上等じゃ無い」という意味があり、常日頃に食べるおかずの事で、本来はお客様には絶対食べさせられない「おはずかしい」おかずだったのです。
(中略)
京の織物業界を代表とする商人の家では奥様も働き手ですから、少しの時間を見てそのとき安い物(旬のもの)で作り置きできるおかずを用意する必要がありました。そこから生まれた料理法や工夫が今に伝えられているのです。
ということだ。なるほど、雰囲気はものすごくよく伝わる。まさにそうしたものなんだろうなあ。
しかし、「番茶」の「番」は、Goo 辞書によれば "古くは「晩茶(遅くつんだ茶)」の意で品質が劣るとされた" とされており、「上等じゃない」というのが本来の意味というわけではない。だから、まったく外れているわけではないが、ちょっとだけ苦しい気がしないでもない。
「晩茶」説に従えば、本来は「お晩菜」ということになってしまうが、「晩ご飯のお総菜」という意味からはちょっとずれてしまう。
もう一つの説は、「お万菜」である。ORBIS PICTUS というサイトの「京都駆け足紀行」というページに、以下の記述がある。
おばんざいとは「お万菜」と書きまして、要は煮物などの和風のお惣菜をいいます。ただ、京都らしく薄味で仕上げてあり、関東風の煮物よりは上品な感じ。
ふぅむ、「よろずの菜」というわけか。必然性の観点から言うと、別に「万」でなくてもいいような気もするが、もしかして、「お総菜」の「総」の代わりに「万」なのかもしれない。似たような意味だし。
ちなみに、Google の検索結果は、 「お晩菜」617件、「お番菜」590件、「お万菜」367件だった。
しかし、圧倒的に強いのは何といっても「おばんざい」で、84,200件である。やはり、漢字で決めつけたりせず、「おばんざい」は「おばんざい」なのかもしれない。ところが試しに、にごらない「おばんさい」でも調べたところ、4,200件もヒットした。
うぅむ、またわからなくなってしまった。
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