「レクサス」 戦略の成否を予言する
トヨタの高級車ブランド 「レクサス」 の広告が盛り上がっている。ホームページもやたらと金をかけているようで、動画が多いわ、階層は深いわで、見るのに手間がかかる。
この戦略、はたしてトヨタの思惑通り当たるのだろうか。私は、成功するにしてもかなり時間がかかると思っている。
以前、バブルの頃、マツダが 「ユーノス」だの「オートザム」だの「アンフィニ」だののチャネル・ブランドを前面に出したことがあった。いや、これらの新ブランドを前面に出したというよりは、意識的に 「マツダ」 のブランドを 「隠した」 と言った方がいいだろう。
これははっきり言って、マツダ自身が「マツダ」というブランドに自信がないことを示すものだった。それで、バブル期の軽薄な風潮に乗り、目新しいブランドでイメージ一新を狙ったのである。メーカーは「マツダ」に違いないが、商品にはそれぞれのチャネル・ブランドだけが表示された。
ところが自動車というのは、ティッシュペーパーじゃあるまいし、チャネルやストアのブランドで買うような 「軽い」 商品ではないのである。メーカーの信用が大きいのだ。当時、「オートザム」なんて、どこか東南アジアのメーカーかと思っていた人までいた。
要するに、安っぽいチャネル・ブランドを優位に置いて、メーカー・ブランドを隠したために、せっかくそれまで培った「マツダ」のそれなりの信用を、マツダ自身がドブに捨てたのである。
そして 1991年、あの「ルマン 24時間耐久レース」で、せっかくマツダが優勝したのに、「マツダ」の車を売る店がどこにもないので、プロモーションが展開できないという情けないオチまでついて、この戦略は完全に失敗し、今では、マツダは 「マツダ」 に戻っている。
そして、今度はトヨタの 「レクサス」 である。
かつての 「マツダ」 の失敗は、大衆車市場における自社ブランドに自信を持てなかったことによるものだが、「レクサス」は、高級車市場における 「トヨタ」 ブランドのステイタスに、トヨタ自身が自信を持っていないことの表れと言える。
違いは、マツダは従来の主力市場における自信のなさだったのだが、トヨタの場合は、新規市場における自信のなさということだ。そして、マツダは一度に多数の新規ブランドを打ち出したために、イメージが拡散したが、「レクサス」の場合は一点集中である。
また、レクサスは、マツダの時ほどメーカーを隠してはいない。それどころか、「バックにあるのは、トヨタの総合力ですよ」ということを暗に示してさえいる。
これらの違いが「救い」となって、レクサスはマツダのような惨憺たる失敗はせずに済むだろう。しかし、すぐに大成功というわけにもいかない。いずれにしても、 「負のイメージ」は、上手に隠してはいるものの、透けて見えてしまっているのだから。
ある意味、"「レクサス」は「トヨタ」の高級バージョン" という位置づけを払拭し、逆に、"「トヨタ」は「レクサス」のお買い得バージョン" というイメージにまでもってくることができれば、この戦略は大当たりということになる。
ただし、それには時間がかかる。
【平成18年 9月 12日 追記】
その後の経過は、「急ぐな、レクサス!」(H18.01.27)、「レクサスは失敗したわけじゃない」(H18.06.12) に記載されている。
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