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2005年8月 4日

そばのニューウェーブ

雑誌「男の隠れ家」9月号が、そばの特集をしている。この手の雑誌のそば特集は、秋口がお約束みたいになっていたが、今回は、一番乗りを狙ったか。

この特集、定番の、並木の藪とか、神田のまつやとかは出てこない。いわゆるニューウェーブのそば屋に焦点が当てられている。

そば好きの私だが、このニューウェーブのそば屋というのは、実は案外疎い。どこからどこまでが「ニューウェーブ」なのかということも、定かではない。私が時々食べているあの店も、この店も、もしかしたら、ニューウエーブなのかもしれないし。

山形県で生まれた者は、大抵がそば好きなのだが、私の父は「そばはあまり好きじゃない」という。寺の生まれの父は、子どもの頃、近所のオバサンたちが集まる「念仏講」で振る舞われる手打ちの田舎そばを食わせられた。それで、そばが苦手になったという。

「つなぎの入らない、太くてモソモソしたヤツを食わせられたからなあ」というのだが、同じものを食わせられた父の兄弟姉妹は、そば好きなのだから、それは理由にならないだろう。

その父も、たまにうまいと思うそばがあるらしい。よく聞いてみると、粗挽きで香りの高いそば粉を使って、細打ちにし、きりっとした辛めの汁で食うのであれば、大丈夫のようなのだ。そばが嫌いな割には、かなり贅沢なことを言う。

それは、この雑誌の特集で、「食べ歩きの達人」として紹介されている大野祺郎氏のおっしゃるところの「ニューウェーブ蕎麦屋の最新キーワードは、『粗挽き』と『手挽き』。粗いそば粉ならば十割でなくても美味しい」というトーンに通じる。

へぇ、うちの親父、図らずも、ニューウェーブだったのか。

私もあちこちでそばを食うが、細かく挽いたそば粉を使ってきっちりとした打ち方をする一茶庵系のそば屋が台頭している中で、どちらかというと、少々「やんちゃ」な趣のあるそばの方が好きだ。そのあたり、山形の田舎そばの系譜を引いている。

人間の舌で味を感覚する味蕾は、50歳を超えると、20代の頃の半分もなくなるのだという。つまり、歳をとると味がどんどんわからなくなるのだ。我々は、実際のところは「昔の記憶」でものを食っているのである。

子どもの頃から馴染んだ食べ物が一番旨いというのは、実はそういうことなのではないかと思っている。

うちの親父は、そのあたりでもやはりちょっと変わっている。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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