ケータイと心臓ペースメーカー
最近 JR などで、ケータイの電源を何が何でも切れとは言わなくなった。優先席以外では、マナーモードにすればいいという。
心臓ペースメーカーへの影響に関しては、2年前には、22センチ以上離せといわれていたが、最近の総務省の調査では、8センチ離せば十分ということらしい。(参照)
私は 3年前に、自分のサイトで 「電車の中のケータイ」 というコラムを書いている。当時は、JR の電車に乗ると、「心臓ペースメーカーに影響を与えるので、携帯電話の電源を切るように」 とうるさいほどにアナウンスされていた。
これに関する 3年前の私の推論は、以下のようなことだった。
JR の車内アナウンスであれだけしつこく「携帯電話のスイッチをお切りください」というのは、ペースメーカーに影響があるのかないのかは定かではないが、もし何かあった時に、「私どもは 携帯電話については車内アナウンスで十分に注意していたのですが……」 と言うためのアリバイ工作ではないかと思うのである。
PL法施行以後にどっと増えた、言わずもがなの警告表示みたいなものである。
実際問題としては、車内アナウンスを聞いた乗客が実際にスイッチを切るかどうかは、あまり問題ではないのだろう。JR にとって重要なのは、「スイッチを切るように、頻繁に呼びかけているという事実」 なのである。これによって、万が一、重大な事態が発生した際の責任を逃れることができる。
これは、かなり当たっていたと思う。大体において、巨大企業の安全対策というのは、そうしたところがある。どうでもいいところに必要以上に気を遣って、肝心なところがおざなりになっていたりするのだ。
ところが、2年前に 「22センチ以上離せば大丈夫」 という調査結果が出た。これで、JR は言い逃れの必要すらなくなったので、しつこい車内アナウンスを止め、マナーモードにすればいいということにした。
もし何か重大事態が発生したら、今度は 「22センチ以上離せばいいと聞いていたので」 と言い逃れができる。この保険をしっかり手中にした以上は、面倒なアナウンスはしなくてもいい。
とはいえ、「優先席付近では電源をお切りなり……」 ということは、今でも時々アナウンスしている。年寄りが妙に気にするあまり、「気のせいで」 心臓がおかしくなってはたまらないので、このあたりは、まだ暗中模索段階のようだ。
以前、ケータイで通話しようとしたら、近くにいた心臓ペースメーカーを装着した人に 「私を殺す気か!」 とエライ剣幕で怒られたという話を聞いたことがある。「気のせい」 とか 「思いこみ」 というのは、恐ろしいものである。
ケータイの電磁波で死ぬようならば、日本中で何人の死者が出るか知れたものではない。それに、パソコンを使って仕事をすることもできないだろう。
就職の際に、「あぁ、あなたはペースメーカーを装着しているから、パソコンを使った仕事ができないでしょう。不合格です」 なんて言われたら、そりゃ、差別である。一方では、ペースメーカーを付けていながら、ケータイで長話をしている人もいる。
今回、22センチが 8センチになったのだから、このあたりの認知が進めば、もしかしたら、優先席付近でもマナーモードで済むようになるかもしれない。
そもそも、8センチにまで近づけようなんてしたら、その前に、痴漢に間違えられそうだ。世の中には 「年寄りフェチ」 なんていうのもあるそうだから。
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コメント
はじめまして。
「逃げないほうが楽なんだよ」というブログを書いています。
私自身は、ペースメーカーは入れてはいませんが、心臓疾患を抱えています。
ケータイとペースメーカーについては、実際に事故が起きたと言うこともききませんし、最近はだいぶ安全性が周知されているようですね。
投稿: TOM | 2008年8月17日 10:11
TOM さん:
>ケータイとペースメーカーについては、実際に事故が起きたと言うこともききませんし、最近はだいぶ安全性が周知されているようですね。
ケータイと心臓の距離よりも、体に接したところに保持することによる長期間の視点での影響が、まだうやむやなので、その方が気になります。
投稿: tak | 2008年8月17日 13:42
携帯電話の電波ごときで誤作動する可能性がある
ペースメーカーというのは、もうその時点で
不良品なのではないでしょうか。
その辺の安全対策が成されていないまま、
商品として売り出してしまうメーカーは大丈夫なのでしょうか。
命に関わる道具なのに。
総務省の調査が行われる以前に、
メーカー側の安全性チェックとして、
この手のテストは厳しく行われているはずです。
何故なら もしこのような事で人が死んだ場合、
真っ先に非難されるのは、通話していた乗客じゃなくて、
携帯電話の電波ごときで
誤作動を起こすような製品を売り出していた
メーカーの筈だからです。
この手の話はなんか、偽科学というか、デマというか。
胡散臭い話ですよね。
車内で大声で通話してる客に対して、
迷惑だから辞めてくださいというよりも、
人を殺すかもしれないから辞めてくださいと言った方が
効果的だからそう言っているんだろうと、僕は踏んでました。
投稿: 外の人 | 2008年10月 3日 01:02
外の人 さん:
>携帯電話の電波ごときで誤作動する可能性がある
>ペースメーカーというのは、もうその時点で
>不良品なのではないでしょうか。
確かに、今どきはいろいろな電磁波が飛び交ってますから、それでは危なくてしょうがないですね。
そんなものばかりでは、これまでに何人も死んでいるはずです。
投稿: tak | 2008年10月 3日 08:50
ペースメーカは定期的に内部の機械の設定を生体にあわせてプログラム変更しなおす必要があるんだよ。
で、それは何でやるかっていうと、電波。
心臓に直接繋がってるものだから
外部に接続端子とか置いておくわけにはいかないし
何かあればしょっちゅうプログラムするのに
体内からその都度取り出すわけにもいかない。
だから電波を使ってプログラムするわけで
そのせいで電磁波に弱い。
具体的には電気コンロや万引き防止センサー、全自動麻雀卓、発電所など
強力な磁気や電波を使用する機器に対しては極力接近しないように指導されてるはず。
確かに危なっかしいよ。不良品って言われてもしょうがないかもしんないけど
コレつけないと死んじゃうんだからしょうがないよね。
他にいい方法ないもんね。
投稿: 臨床工学技師より | 2008年12月12日 05:39
臨床工学技師より さん:
で、ケータイはどうなんだ?
投稿: tak | 2008年12月12日 12:23
その理屈で言ったら電波による指示で動作する自動機械はみんな誤動作しますね。
身近な例としては携帯電話やFeliCaを使用している自動改札機等々。
ペースメーカって人工的に脈動を生成してるんでしょ?電動機か何かで。
体内に置いているんだから低電力じゃ無いとやってけないんじゃ?
したら電磁波で脈動パターンが乱れる可能性はあるのでは?
投稿: syu | 2009年1月22日 11:43
syu さん:
>したら電磁波で脈動パターンが乱れる可能性はあるのでは?
だから、総務省の調査で、RFID 機器からは 22cm 以上、ケータイの場合は 8cm 離せば大丈夫で、しかも、影響は可逆的だから、一度乱れても、すぐに離せば大丈夫って、報告されてます。
(本文からのリンク先参照)
投稿: tak | 2009年1月22日 13:04