「政治なんて大嫌い」 のくせに
「政治なんか大嫌い」 なんて言っている割に、私はこのコラムで、政治について、少なからぬ本数を書いているような気がする。
昨年 7月にココログを使い始めて以後 「経済・政治・国際」 カテゴリーのコラムは 70本近くになり、そのうちで国内政治について論じたものは、ほぼ 3分の 1 といったところだ。
政治に関しては完璧に素人のくせに、よくまあいけしゃあしゃあと書いたものである。それでちょっと心配になって、自分の書いた政治関連のコラムが、見当違いに陥っていないかどうか、ちょっと検証してみたところである。
ざっと見たところ、安心した。結構まともなことを言っている。政治のプロとかでもなく、特定の主義主張に立脚してるわけでもないだけ、我ながらあまりバイアスのないことを書いているみたいだ。
とくに、今回の総選挙に関しては、例の郵政民営化が参議院で否決された翌日 (8月 9日) に、 「政治のガラガラポン」というコラムで、既に最重要部分をきっちりと書いてしまったと自負している。この日、こう書いている。
これまで私は、「どうしてこの程度の問題 (筆者注:「郵政民営化」 のこと)で、こんなにガタつかなければならないのか」と不思議に思っていたが、今、ようやくわかった。大きな化学反応をもたらすための、可能な限り無害な触媒という役割を、郵政民営化問題というのは、歴史の中で果たしているわけだな。
結果、その通りになった。ただ、この時はちょっと抽象化した書き方をしてしまったので、念のため、後日に 2度に分けて少しは具体的に書いている。
( 9月 5日付 「郵政民営化は、絶妙のテーマ」)
もしこれが「消費税引き上げ」とか「年金支給削減」みたいなテーマだったら、大きな動きを促進させるトリガーにはなるはずがない。「郵政民営化」みたいな、国民の大多数にはあまり実害のないテーマだからこそ、構造改革の有効な「触媒」の役割を果たせるのだ。( 9月 10日付 「私の選挙はもう終わったので・・・」)
郵政民営化というテーマは、それが正しいか間違っているかというのは、ほとんど問題ではない。(中略)一般人にはさして実害のない問題だけに、どんどん進めるのが 「正義」で、逆らうのは「悪役」 ということになるに決まってるのだ。その単純な図式を、恥ずかしげもなく前面に出せたのは、さすがに「変人以上」の人である。
「正しいか、正しくないか」を真剣に考える必要のない、「それほど重くないテーマ」だったのが、とても幸いしたわけだ。「郵政民営化触媒論」である。
「国政をたった一つのテーマに集約させた、まやかし的手法」 を批判する論調もあるが、それを言うなら、社民党は「護憲」という 「たった一つのテーマ」に、社会党時代から延々と集約し続けている。
「郵政民営化」なんてことより、「憲法」はずっと重い問題だ。この重い問題を 10年以上も訴求して、ちっとも反応がないのは、その十年一日の如きステロタイプの言い方がまずいのである。
この部分に関しては、選挙結果の出た直後、9月 12日に、「モノ、はっきり言うちゅうこってすわ」というコラムで、こう総括した。
今や政治の世界では、「どう言うか」 という要素が、「何を言うか」 よりも、ずっと重要な時代になったのである。
小泉さん、巷では 「頭がよくない政治家」扱いされているが、バックには、結構スマートなブレインがいるような気がする。それは多分「民」のセクターだ。政治をマーケティング的に捉える手法に、自民党中枢は、案外慣れてきているようだ。
民主党にだって、こうした考え方のできる人がいないわけじゃないのに、今回は、岡田さんが暗い顔して、自ら画面の外に歩いて消えるという、呆れるほど優れて予言的な TV-CF で、墓穴を掘った。何考えてたんだか。
とはいえ、今回の自民党、いくら何でも勝ちすぎだ。「勝ちすぎ」というのは、負の財産としても機能することを忘れてはならない。
文化人類学では 「贈答儀礼」という言葉がある。贈答というのは、実は受けた側の立場が弱くなるのである。返礼をしなければ、気が休まらない。この不安を避けるため、北米インディアンの「ポトラッチ」という風習では、時に互いの財力を使い切るまで返礼の応酬をする。
今回の選挙における「贈答」とは、とりもなおさず「過分の投票」である。選挙の票とポトラッチを一緒にはできないが、少なくとも、身の丈以上の投票を受けた自民党国会議員は、次回の選挙が不安でしょうがない。反動を最小限にするためには、必死に国民に「お返し」をするほかない。
この「お返し」に期待しよう。もし自民党がそれを忘れるようなら、あるいは、「お返し」のつもりで勘違いの愚行をするようなら、次は壊滅に追い込むことだってできる。何しろ、小選挙区制なのだから。
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