「わかった気にさせる」 ということ
人にものを説明するというのは、とても難しい。自分で理解することと、他人にわからせることは、かなり違う脳の働きが必要だ。
さらに、「本当にわからせる」よりも「わかった気にさせる」ことの方が、世間では重宝されたりする。だから、わかったつもりでも、実際にはさっぱりわからないことも多い。
ものごとを他人に説明するとき、初めから細部にわたって説明過多になると、エラそうに見えるか、逆に自信なさそうに見えるか、あるいは煙に巻いてごまかそうとしているように見えるかの三つに一つで、いずれにしても逆効果になりやすい。
例えば道案内をするときに、丁寧に教えようとするあまり必要以上の情報をくどくど言うよりも、「駅から三つ目の信号を左に曲がると、ケーキ屋さんがあるんで、その辺でもう一度電話ください」なんていう方が、ずっと効果的だったりする。
初めから全てをわからせようとするよりも、まずは、取っかかりだけでもなんとなくわかったような気にさせて、ある意味での信頼感を持ってもらうことの方がずっと重要なのだ。
この点で、まったくダメダメなのが、パソコン・ソフトに添付される純正マニュアルである。「わかってない相手にイチから説明する」のだということを、全然わかっていない。わかってるヤツが、わかってるヤツに確認を取っているだけである。
だから、市販の「少しはわかりやすい」マニュアル本が売れる。市販のものは、機能の全てにわたって正確に解説しているわけではないが、要するに、取っかかりがわかりやすければいいのである。
先頃の選挙で民主党が惨敗したのも、このような構造である。「IQ の高いヤツ?」なんて相手にしたのが、そもそもの間違いのもとなのである。
道案内をするときに、
駅前にジャスコがありまして、
その先 50メートルほどの小沢工務店のところの
一つめの信号を通り過ぎてもう 50メートルほど行くと、
二つ目の信号のあたりに、
鳩山デンタルクリニックがありますから、
そこを曲がらずに、もう一つ先の、
角の右側に管デザインオフィスのある信号を左に曲がると、
20メートルほど先に、
パーラー・マエハラという名前のケーキ屋さんがありますから、
ここであきらめないでくださいね。
その手前の小路を左に入って、次を右に ・・・
ってな具合に、くどくど言い過ぎたようなものである。
前述の如く、小泉さんは、これらをすべてひっくるめて、「駅から三つ目の信号を左に曲がるとケーキ屋さんがあるんで、その辺でもう一度電話ください」と言ったのである。この方が、とりあえず行ってみようという気になる。
ただこれだと、その気になって駅まで行ってみたはいいものの、「さて、どっち口から出たらいいんだ?」 なんて迷ってしまったりする。出口がいくつもあるなんて、想定外だったりして。
結局は、話の発端のところでウロウロさせて、その上、よく考えてみれば最終目的地も明確に示されていないというのが、いわゆるひとつの小泉流なのだが、それでも選挙で大勝利してしまうのである。
9月 12日付の当コラムで、"今や政治の世界では、「どう言うか」という要素が、「何を言うか」よりもずっと重要な時代になった" と書いたのは、こうした意味を含んでいる。
要するに、本当は肝心なところがさっぱりわからなくても、「あとでもう一度電話すればいいかな」程度に、わかった気にさせるというテクニックの方が、世の中ではずっと力を持つということだ。
これは「いい、悪い」の問題ではなく、世の中の傾向というものである。いずれにしても、「とことんわかる」なんてことは至難の業だし、仮にわかったところで、常に現実の変化に裏切られる。
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