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2005年9月16日

詰め込めば、頭がよくなる?

頭の良さって、一体何なんだろう? 昔は 「読み・書き・算盤」と言われたが、これは、理解力・表現力・計算力ということだろうか。

確かに、この三つの力があると、「頭のいい人」と言われる場合が多い。しかし、そのベースには「記憶力」がある。「物覚え」というのは、かなり重要なことのようだ。

9月 15日付 asahi.com では、「勉強したら脳細胞増える」とのタイトルで、次のように伝えている。

勉強すると脳細胞が増える仕組みの一端を、東大の久恒辰博・助教授(脳科学)と大学院生の戸塚祐介さんが実験で突き止めた。何かを覚える時に出ると知られている脳波の一種「シータ波」が脳の中の海馬という部分に伝わると、将来脳神経細胞に育つ前駆細胞が刺激され、最終的に脳細胞が増えることがわかった。(中略)

実験では、マウスの脳を切り取った切片に電極を刺し、シータ波と同じような刺激を人工的に与えた。すると、海馬にある前駆細胞が興奮し、この興奮が引き金になって前駆細胞が脳神経細胞に育つことがわかった。

成人の脳の神経細胞はいったん失われると再生できないといわれていたが、98年にスウェーデンの科学者が成人の脳でも海馬で神経細胞が新しく生まれると発表し、注目された。今回の研究で、新しく生まれるきっかけを作るのはシータ波であることが示された。

このニュースの中でも触れられているが、「シータ波」 というのは、「何かを覚える時に出る」ということのようだ。このシータ波が、海馬に伝わって脳神経細胞に育つ前駆細胞が刺激されるという。

この「何かを覚える」ということは、「勉強」の基本的な要素であり、 「読み・書き・算盤」のベースになると考えていいだろう。何しろ、文字を覚えなければ読むことすらできず、九九を覚えなければ、計算もむずかしい。

A, B, C という勉強をすれば、A, B, C という直截的な知識のみが獲得されるというわけではない。むしろそれによって、脳のキャパシティ自体が増大することの方が、より大きなメリットと考えてもいいだろう。

「こんなこと勉強して、何の役に立つの?」と、子どもに聞かれたら、とりあえずは、「お前の能力そのものがアップするんだよ」と答えればいい。「RPGで、ワンランク上に行くようなものさ」と言えば、今どきの子にはわかりやすいかも知れない。

いずれにしても、 「一を聞いて十を知る」といった「理解力」のアップは、「覚えること」と、かなり直接的にリンクするような気がする。

問題は、「覚える」ことと「考え、表現する」ことは、少々別のようだということだ。記憶力のいい人が皆、頭がいいわけではない。「覚える」ことで活性化された脳も、きちんと「考え、表現する」ことができなければ、大して役に立たない。

「詰め込み学習」は、確かに脳のキャパシティを増やす。しかしこれは、ベーシックな要素である。もう一歩進んで、きちんとした思考力、表現力が高められなければ、「こんなこと勉強して、何の役に立つの?」という子どもの疑問も、確かにもっともなことになる。

「ゆとり教育」への疑問は、「詰め込み教育」がいいか悪いかという問題ではない。「自分で考え、表現する教育」との、匙加減の問題だと理解すればいい。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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