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2005年11月 7日

「女女格差」と「男男格差」

10月 31日付の毎日新聞夕刊で、上野千鶴子氏が「フェミニズムはどこへ向かうのか?」という文章を書いておられる。

"ネオリベの下で広がる「女女格差」/男に有利な社会は変わっていない" という見出しだ。フェミニズムの新思潮は、同性の中に新たな「敵」を見出すことのようにさえ見える。

上野氏は、今回の総選挙で女性国会議員が史上最多の 43人に達したことを挙げ、「わたしたちはこれをもって、自民党が『女にやさしい』政党に変身した、と解釈していいのだろうか?」と疑問を投げかけている。

聞くだけ野暮である。そんなはず、ないではないか。

当然それがわかっているから、上野氏自身、「女ならだれでもいいのか? 今度の選挙ほど、この古くからある陳腐な問いが、新たな意味をもったことはない」と重ねて述べている。この「陳腐な問い」が、そんなに「古くからある」とは知らなかったが。

この問いにも、同じ答えを繰り返すほかない。「聞くだけ野暮である。そんなはず、ないではないか」 と。「男ならだれでもいい」というわけないのと同じである。

上野氏はさらに次のように述べている。

ネオリベのもとで拡大する格差に、女もまた巻きこまれている。男女格差だけでなく、女女格差が拡大し、「勝ち組」のなかに参入する女性が増えるいっぽうで、「負け組」の女は「自己責任」とされる。

皮肉なことに、上野氏の指摘する 「女の中の "勝ち組"」 として 「少子化・男女共同参画担当相」 に就任した猪口邦子氏は、先月中頃の外国人記者クラブでの記者会見で、 "Mr. Koizumi is the most gender-minded prime minister." (ANN の翻訳字幕では  「小泉総理は男女差別の意識のない人です」 )と言い放ち、外国人記者は、その発言にどっと湧いていた。(参照

この外国人記者団のどっと湧いた笑いの中でも、最もシニカルな笑いに、上野氏は同調しているようにみえる。「勝ち組」のいう "gender-minded" という要素など、信じるに足りないことのようなのである。

ここでは、"「自己責任」とされる「負け組」は、女だけではない" という、当たり前すぎて言うまでもない事実を、敢えて言っておこう。「男男格差」だって相当のもので、男であるからというだけで「有利」というほど、世の中は単純に甘くない。

もう一つ付け加えるとすれば、上野氏はこの文章の末尾に近いところで 「女が家族の外でも、ひとりで安心して子どもを産み育てることができる社会を」と述べておられるが、「女はひとりで安心して」も、私には、子どもが本当に安心して育つかという視点が抜け落ちている点で、一方的な言い方のように感じられる。

ここから先の議論は、私ははっきり言って腰が引けている。というか、リスク覚悟でまともに切り込むほどの意義を見いだせないでいる。

【平成 19年 6月 21日 追記】

「女女格差」 ということばが、1年半も経ってから AERA の記事のせいで、にわかに生き返ってしまったようだ。その件については、こちら

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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コメント

これでは上野千鶴子、田嶋陽子と変わりませんね。

投稿: alex99 | 2005年11月 7日 07:57

alex さん:

あまりテレビを見ない私にとって、大分前ですが、このお二人の区別が付かない時期がありました。恐縮の至り ^^;)

投稿: tak | 2005年11月 7日 11:08

この議論はもううんざりですね。

女 「女が家族の外でも、ひとりで安心して子どもを産み育てることができる社会を」

男 「ひとりで子供を育てるなんて出来ないんじゃない?」

女 「だからそれができる社会をつくるの!」

男 「具体的にはどのような?」

女 「知るか!お前らが考えろ!」

男 「・・・」

テレビで見る限り、いつもこんな感じですね。

投稿: hrk | 2005年11月 7日 16:07

>テレビで見る限り、いつもこんな感じですね。

私、テレビのいわゆる「討論番組」は、あまりの馬鹿馬鹿しさに見ないことにしてるんですが、そんな感じですか。はあ。

見ないでいてよかった。

投稿: tak | 2005年11月 7日 22:37

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