立春に(限らず)卵が立つ
昨日朝の TBS ラジオで、詩人の荒川洋治氏が 『中谷宇吉郎随筆集』 を紹介していた。中谷氏は、雪博士として有名な科学者だ。
この随筆集の中に、「立春には卵が立つ」 という中国の故事から「人類の盲点」というところまで論を進めたものがある。なかなか興味深い話なのである。
この「立春には卵が立つ」というのは、中国の古書「秘密の万華鏡」(この書名については、確認したわけではない)に載っていることだという。
これにインスパイアされたのかどうか知らないが、昭和 22年の 2月に、日本の新聞各社が、本当に立春に卵が立ったという記事を、写真付きで報道したのだそうだ。
これについて、某学者は「立春には気温が低いので、卵黄が下に沈んで重心が低くなるためではないか」などと、さももっともらしいコメントを寄せたらしい。
しかし、このコメントは、実験に基づいたものではなく、単に頭の中でこねくり上げたものでしかなかった。中谷博士の偉いところは、さっさと軽い気持ちで卵を手にして実験してみたところである。
で、中谷博士の結論は、卵は立春に限らず、立てようと思えばいつでも立つということなのであった。
世の中では「コロンブスの卵」というエピソードがあって、卵の下をコツンとつぶして立てるというのが、さも大発見のように扱われている。
これは、卵というのはそこまで裏技を使わなければ立たないという既成観念に立脚している。しかし、この既成観念はウソだったのだ。ストロング・スタイルで迫っても、立てようと思えばちゃんと立つのであった。
あの有名な「コロンブスの卵」というのは、実はナンセンスだったのである。(まあ、「コロンブスの卵」の場合は、ゆで卵であるということで、一律には論じられないかも知れないが)
それを中谷博士は、「人類の盲点」と表現した。「人間の眼に盲点があることは誰でも知っている。しかし、人類にも盲点があることは、余り人は知らないようである」と述べているのである。
詳しく言えば、卵の重心が、卵の立つ平面に接するわずかな面積の上に落ちればいい。その許容角度は、約 1度であるらしい。
というわけで、私も実験してみた。卵は本当に、立春でなくても案外簡単に立つのであった。ここに紹介した写真は、私がわずか 1分足らずで立てた卵である。
【同夕刻 追記】
私のもう一つのブログ "Wakalog" に、もう少し風情のある背景で、卵を同時に 2個立てた写真をアップしておいた。写真のできは、そっちの方がいいので、興味のある方はご覧いただきたい。 Click !
【平成 21年 1月 9日 (思い出したように) 追記】
2年後のまさに立春に、もう一度卵を立てた。写真としては、これが一番リアルに表現されていると思うので、興味のある方は、こちらを Click !
【平成 21年 2月 4日 追記】
3年後の立春にも卵を立てた。写真としてはこれが一番できがいいので、この写真に限り知的所有権を放棄してどなたでもダウンロードして使っていいことにした。使いたい方はいくらでもどうぞ。(ただし、クレジットは入れてね)
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コメント
はじめまして。
21年1月9日の記事にあります「立春に卵が立つ」の写真を使わせて頂きますのでご了承下さいませ。
投稿: とよこさん | 2010年2月 4日 13:23
とよこさん:
>21年1月9日の記事にあります「立春に卵が立つ」の写真を使わせて頂きますのでご了承下さいませ。
「21年1月9日の記事」 ではなく、「21年1月9日の追記」 で触れた 20年立春の和歌ログの記事ですね。
和歌ログは元々著作権を一部放棄していて、自由に使って頂いて結構ですので、よろしくお願いいたします。
(参照)
http://homepage3.nifty.com/wakalog/copyrightl.htm
投稿: tak | 2010年2月 4日 16:10