箱根駅伝の功罪
正月 2日、3日の箱根駅伝の中継には見入ってしまった。日テレにとっては、今や正月のお昼の、最高のキラー・コンテンツである。
しかし、スポーツ・ジャーナリストの古内義明氏によると、箱根駅伝は功罪相半ばしており、とくに最近の男子マラソンの低迷の大きな原因となっているという。
まず、前提としておさえておくべきことは、1980年代以後、日テレが箱根駅伝を中継するようになってから、このレースが関東の大学にとっては、受験者を増やすための最高のマーケティング・ツールになってしまったということである。
だから大学、とくに新興勢力の大学は、全国の高校から長距離の有望選手を推薦入学させて、箱根駅伝対策を行う。何しろこのレースでトップ・グループに入って走りさえすれば、数時間に渡って大学名がテレビに出まくるのだから、宣伝効果抜群である。
そのため大学陸上部は、日頃から箱根駅伝に最適化した練習を行う。つまり、20キロ程度の距離を効率的に走るための練習である。42キロ余りを走るマラソンとは、練習の質が違う。
さらにレースを走る学生の意識としても、マラソンでオリンピックに出ることより、箱根駅伝で上位に食い込むことの方が優先されてしまう。箱根駅伝で名前を売って、後は一流企業に就職できればいいというような気になってしまう。
5日の TBS ラジオで聞いた古内氏の指摘はだいたい以上のような内容で、かなり納得させられてしまった。
考えてみると、女子陸上には箱根駅伝に匹敵するようなイベントはない。だから、学生時代に燃え尽きてしまうようなリスクは相対的に小さい。有森裕子や高橋尚子などの選手は、学生時代にはあまり注目されておらず、使い減りしていない。
どうも、甲子園野球で燃え尽きてしまう高校球児と同じような現象が、大学陸上の長距離界にも存在するようなのだ。大学の長距離陸上選手の全体的な器を、オリンピック・マラソンのレベルから箱根駅伝のレベルに(言っちゃ悪いけど)矮小化してしまうムードというのは、確かに問題だろう。
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