中国の御用マスコミになれと?
新年になり、生臭い政治関係のエントリーは減らそうと思っていたのだが、こればかりは呆れてしまったので、やはり書いてしまおう。
既にあちこち (当欄末尾参照) で批判されているが、「中国、日本政府に報道規制要請・日中関係改善に向け」 というニュースである。関係改善を臨むならば、こんな非常識は言わないことだ。
すべての独裁政権は、まずジャーナリズムを自分の統制下に置いて、「御用マスコミ」 にしようとする。日本のマスコミの多くは 「小泉政権の独裁的体質」 を批判するが、それが言えるだけ、まだマシだ。
中国外務省の崔天凱アジア局長は 9日の日中局長級協議で 「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかりなぜ書くのか。日本政府ももっとマスコミを指導すべきだ」 と述べ、日本側に中国報道についての規制を要請した。(Nikkei Net より引用)
「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書く」 との批判だが、客観的に見れば、決してそうは思われない。日本のマスコミは中国に対して概ね好意的である。中国出張帰りのビジネスマンの多くが、(影でこっそりと) 「あんな国はもうこりごりだ」 と言っているのとは、かなりのギャップである。
それだけに、日本のジャーナリズムを (今以上に) 中国の御用マスコミにしろと言わんばかりの子供じみた主張は、驚きを通り越して切ないものがある。中国 (韓国も似たところがあるが) の対日批判の多くは、こうした非常識を臆面もなく言える発想による文脈の一環であることを、過不足なく認識しておきたい。
ちなみに朝日新聞は、今回の問題に関する記事の末尾に、次のようなお約束コメントを付け加えている。
中国が報道規制にまで言及するといったいびつな日中関係が続けば、小泉政権後に関係改善をはかる手だても失われかねない。(asahi.com より引用)
これは、単なるお約束コメント以上の、重要な意味合いを含んでいる。文脈からすると、日本のマスコミ上で (非現実的な?) 「中国脅威論」 がにわかに台頭しているために、中国としても、報道規制まで言い出さざるを得なくなったというストーリーになっているのだ。
「中国側にそこまで言わせてしまういびつな日中関係にしてしまった、日本側の姿勢が問題」 いう 「朝日的ステロタイプ」 に、無理矢理帰結させているのである。
「日本側の姿勢が問題」 ということについての是非は、ここではあえて触れない。より具体的な問題が、このコメントに内包されているからだ。
私が問題にしたいのは、朝日新聞が 「報道規制」 という中国の不作法な要求に対して、最後の最後で 「そこまで言うのも無理もない」 と言わんばかりの理解を、さりげなく示しているということだ。
日頃 「政府のマスコミ操作」 なんてことには、無条件に反発するはずの朝日が、中国の言うことだと、とたんにこんな態度になる。確実に自分の首を絞めるであろう、その妙な物分かりのよさ、よく覚えておくことにしよう。
なお、この問題に関しては多くのエントリーがあるが、以下のブログでもそれぞれの視点から批判されている。(トラックバックさせていただいた)
bearzonic blog、時事ブログ グースの勿忘草、 セキュリティ&コンサドーレ札幌
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コメント
以前書いたように、私は元商社マンです。
私の中国担当の同僚が帰日して、中国へ帰る前に飲んだ時、「本当にあの国へ帰るかと思おうといやでいやで仕方がない 人間が最低なんだよ」と嘆いていました。
他の国の駐在員は、その国の悪口はしっかり言いながらも、どこかその国を好きになって帰ってきていました。
韓国なんかは、かの国の人達を男女を問わず(笑)懐かしそうに語っていました。
そう言う意味で、私は韓国人(朝鮮民族)には、一般の日本人が未だ知らないいいところがあるんだろうと思っています。
私は、歴訪した三十何カ国の中から言えば、ヴィエトナム人と英国人が好きです。
投稿: alex99 | 2006年1月11日 12:02
alex さん:
真面目な仕事で中国に長く滞在した人は、大抵中国が嫌いになるようですね。
物見遊山とか、接待とか、色仕掛けがらみで渡った人は別ですが。
韓国人は、一度心を許すと、かなりいい人になっちゃうみたいですけどね。
ヴィエトナム人とは付き合ったことがないので、よくわかりませんが、英国人は、フランス人 (とくにバリジャン、パリジェンヌ) なんかよりずっと謙虚で、付き合いやすいという印象があります。
投稿: tak | 2006年1月11日 20:29
英国人は日本人にとって、つきあいやすい民族だと思います。
パリにパリジャン・パリジェンヌがいなければ、パリは世界で最も素晴らしい都市であるという話があります。
投稿: alex99 | 2006年1月12日 01:17
>パリにパリジャン・パリジェンヌがいなければ、パリは世界で最も素晴らしい都市であるという話があります。
それ、恐縮ながら、かなり共感してしまいます。
投稿: tak | 2006年1月13日 07:28