肉を食わされるのは、かなわんね
昨夜は某団体の新年懇親パーティに出席。この席には片山さつき、平沼赳夫両衆院議員も参加され、それぞれ勇ましい挨拶と、誇り高い挨拶をされたが、その内容には敢えて言及しない。大方の想像はつくだろうから。
それよりも、日本人の「食の好み」というものについて述べようと思う。
来賓の挨拶と乾杯が終わると、それぞれ、好きな料理を皿に取って食べるわけだが、最近はどのパーティに行っても、一番人気はローストビーフである。大きな肉の塊を切り分けてくれるシェフの前に、長蛇の列が並ぶ。
業界のパーティに出席するようなアグレッシブな人たちは、皆さん、お肉が大好きなようだ。今回の米国牛の輸入ストップについては、かなり複雑な思いがあるのではなかろうか。
一方、私が最近付き合っている人たちの多くは、「中年過ぎると、肉を食わされるのはかなわんね」 と言う。肉よりも魚、野菜の方がありがたいというのだ。実は、かくいう私もそんな一人である。
仕事で欧米に行くと、ステーキハウスに誘われることが多く、とくにベジタリアンというわけでもない私は、仕方なく付き合うのだが、本心は「何が悲しくて、何百グラムだかの牛の肉なんかを腹に詰め込まなきゃならんのだ」と思っている。
そりゃ、相撲取りの草履みたいな巨大なステーキでも、出された以上、私は完食する。しかし、それは食いたくて食っているというよりは、もったいないから、日本男児の誇りにかけて食っているのだ。そのくせ、私を誘った方が半分も残すんだから、困ったものだ。
そもそも、ビーフステーキとかローストビーフなんていうのは、牛より他にまともに食えるもののない、貧相な土地の食い物ではないか。ペンペン草しか生えないので、それを牛に食わして、ようやくその牛を食う。面倒な話である。
ところが、最近の牛はそうじゃないらしい。牛が人間の食物であるはずの穀物を大量に食っているのだ。「肉食は私たちをどこに導くのか?」 というページには、次のように書かれている。
NHK の番組によると、世界のトウモロコシ年間生産量約六億トンのうち、約四億トンまでが穀物飼料に使われています。その穀物飼料の一割でも人の食用に回せば、世界から餓えはなくなるというのです。もしそうした場合、肉の生産量は減りますが、それは米国人と日本人が五回に一回、肉料理を減らすだけでしかありません。
我が家は肉の割合がかなり少ない食事をしていると思うのだが、そこまでいかなくても、血の滴るようなビーフステーキへのこだわりをちょっとだけ減らせば、世界の飢餓はかなり救えるというわけなのだ。
もちろん、国際的な政治や流通の問題もクリアしなければならないだろうが、とりあえず、肉をたらふく食うということは、飢えに苦しむ何億人もの人たちの犠牲の上に成り立つ行為なのだということを、ちょっとだけでいいから認識しなければならないだろう。
「単なる個人的な好みの問題」といえども、ほかの諸問題とまったく無関係に主張できるというほど、この世は甘くないのである。そして他との関係を意識すると、個人的な好みまで変化するということだってある。
例えば、料理屋で食事をすると、刺身のつまの千切り大根を丸々残す人が多いが、私は残らず平らげる。それは、「もったいない」というよりは、あれを食わないと、何だか口の中が熱っぽくなって、すっきりしないからなのだ。
大上段に振りかぶったベジタリアンやエコロジストの社会運動よりも、私としては、「肉を食わされるのはかなわんね」 という意識に、ちょっとだけ変わればいいことだと思っている。
【2月 3日 追記】
このエントリー、あちこちのニュースサイトで、「米国人と日本人が5回に1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなる」というタイトルで紹介され、かなりな反響を呼んでしまった。
アクセスがムチャクチャ増えたのは嬉しいのだが、私としては、「米国人と日本人が 5回に1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなる」なんて、一言も言っていないのである。ただ、NHK の番組を紹介したウェブのページの引用をしただけである。
その引用だって、計算上の話を紹介しているだけで、「米国人と日本人が5回に1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなる」なんて単純なことを言っているわけではない。
しかし、「米国人と日本人が5回に1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなるなんて、間違いだ」との反論があちこちでなされているみたいなのである。
そんなの当たり前である。政治、経済、流通の問題を抜きにして、そんな単純なことは言えない。
トラバしてくれればまだいいのだけれど、それもないんで、まあ、私としては放置しているのだけれど、「米国人と日本人が 5回に 1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなる」というタイトルは、ちょっとありがた迷惑だったような気がしている。
| 固定リンク
「グルメ・クッキング」カテゴリの記事
- ラーメン屋店主の「腕組み」を巡る冒険(2024.08.10)
- 「お好み焼き」がパリでも人気というのだが(2024.08.03)
- 「がっこ」が美味しそうでたまらない(2024.07.23)
- 本場のエスプレッソというもの(2024.07.21)
- コーヒー・チェーン、一番人気はやっぱり「スタバ」(2024.07.17)
「自然・環境」カテゴリの記事
- 2024年が最も暖かい年になる確率が 97% だそうだ(2024.09.18)
- 残暑は 10月中旬まで続くんだそうだ(2024.09.13)
- あと 1週間は、暑さに耐え続けなければならないようだ(2024.09.11)
- 戦争なんかより温暖化対策だよ!(2024.09.07)
コメント
みんなでクジラを食べましょう。
投稿: alex99 | 2006年1月25日 19:36
alex さん:
>みんなでクジラを食べましょう。
座布団 3枚!
投稿: tak | 2006年1月25日 20:11
残念ながら、たとえ余剰食糧が途上国に回っても、
その分人口が増えるだけなので飢えは無くなりません。
投稿: Veno | 2006年1月28日 18:36
Veno さん:
このエントリー、あちこちのサイトに、「米国人と日本人が5回に1回肉料理を減らすと、世界から飢餓がなくなる」 というタイトルで紹介されています。
これって、かなり誤解を呼ぶ言い方ですね。私はそんなことを言ってるわけじゃありませんので。
>残念ながら、たとえ余剰食糧が途上国に回っても、
>その分人口が増えるだけなので飢えは無くなりません。
う~ん、実は、これも単純すぎる思考じゃないかなあ。
なら、どうして多くの途上国の人口増加の方が、先進国よりずっと多いんだろう?
投稿: tak | 2006年1月28日 23:11