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2006年2月 2日

toto は 「くじ」 から 「ギャンブル」 に脱皮できるか?

サッカーくじ "toto" がますます酷いことになって、当初の目的だったはずのスポーツ振興助成金どころではなくなっている。

こうした状況をみて、「そら見たことか。私は元々、toto には反対だった」 と、鬼の首を取ったように言う人がいるが、それはちょっとだけズルいんじゃないかと指摘しておきたい。

確かに、toto は、呆れてものも言えないぐらいの惨状に陥っている。売上げは、初年度の 平成 13年が 604億円で、以後、14年 408億円、15年 203億円、16年 156億円と右肩下がりを続け、17年も 150億円を切りそうだという。

ちなみに、toto 開始前には、関係者は 1600億〜2000億円の売上げを見込んでいたというのだから、お笑いぐさだ。売上げ予測の 10%にも達しない事業なんて、この世で成立するはずがない。

これでは、「スポーツ振興」 のためではなく、単に独立行政法人日本スポーツ振興センターの理事と職員が給料をもらうためだけに、toto は存在するということになる。

しかし、この不振にも原因がある。最大の原因は、「toto は面倒くさくて当たらない」 ということだ。当たる確率を 「宝くじ並み」 に設定したというが、宝くじなら、確かに滅多に当たらないが、少なくとも面倒くさい予想まではしなくてすむ。

大した情報もくれずに 13試合もの結果を予想させるなんて面倒を強いるくせに、当たらないこと宝くじ並みというのでは、そんなもの、誰だってやる気がしない。150億円も売れたことすら驚きだ。

なんでこんなに 「労多くして当たらない」 方式にしているのかというと、toto のスタートにあたって、「射幸心を煽らない」 という免罪符を、文部科学省が必要としたからである。

「健全なスポーツをギャンブルの対象にするな」 という建前的反対論を唱える良識派に対抗するために、「ギャンブルじゃない、『くじ』 なのだ」 と、苦しい言い訳をせざるを得なかったのだ。

そもそも 「ギャンブル」 と言おうが 「くじ」 と名を変えようが、どっちも、元々射幸心から発したものに違いはないのである。こうした類のものが、射幸心を煽らずに商売になるはずがない。宝くじだって、ああまで露骨に一攫千金の射幸心を煽るから売れるのだ。

つまり、toto の開始時から日本スポーツ振興センターは、「射幸心を限りなく薄めた売れないくじ」 を展開せざるを得ないという自縄自縛に陥っていたのだ。そんな絶望的な事業を拙速にスタートさせてまでも、新しい天下り先を確保するために。

こんないきさつがあるのだから、スタート前から toto にハンディキャップ・レースを強いた立場の良識派が、「そら見たことか、だから私は元々反対だったのだ」 と迫るのは、あまりにもエラソーだなあと思うのである。

この人たちが toto に無茶な重荷を背負わせなかったら、もしかしたらうまくいって、スポーツ振興助成金だって、コンスタントに拠出されたかもしれないという可能性だって、まんざら否定しきれないと思うのだ。(元々お役人のやることだから、必ずうまくいったはずとは、決して言わないが)

そんなこんなで、いよいよ日本スポーツ振興センターとしても、「射幸心を煽らない」 なんて呑気なことは言っていられなくなったようだ。心機一転、「より買いやすく、当たりやすいくじ」 を売り出す方針のようである。ホームページも、まさに明日からリニューアルされるそうだ。

「スタートしてしまえばこっちのもの」 ということなのだろうが、それに気付くのが、ちょっと遅すぎたんじゃなかろうか。果たして toto は 「くじ」 から、本来の姿であるフツーの 「ギャンブル」 に脱皮できるのだろうか?

誤解のないように言っておくが、私は決して toto ギャンブル化推進派というわけではない。廃止するならさっさと廃止すればいいし、スポーツ振興助成金を出すために、あくまでも続けるというなら、きれい事は言わずに堂々とギャンブルにすればいいと言うだけのことだ。

中途半端が一番いけないのである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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