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2006年2月 4日

「語呂合わせ」 にも美学が要るのだ

数字に弱い私は、自宅の電話番号、ケータイ番号、車のナンバーなどなど、4ケタ以上の数字は、すべて語呂合わせで覚えている。

一方では、数字を写真で撮ったように覚えられる人もいる。友人に、200件以上の電話番号を記憶しているのがいるが、それは数字そのままで頭に焼き付けられているらしい。

私にしてみれば、日本語というのは語呂合わせがしやすいという点で、非常にありがたい言葉である。語呂合わせがなければ、鎌倉幕府の成立も、アメリカ大陸の発見も、何も覚えられなかった。

ところが、数字をそのままで頭の中に焼き付けてしまう才能のある者にとっては、語呂合わせというのは、面倒くさいもののようなのだ。1192年と、そのままで覚えられるものを、わざわざ 「いい国作ろう鎌倉幕府」 なんて言い換えて、それを改めて 1192年と翻訳するというのは二度手間で、まだるっこしく思えるらしい。

こうなると、脳みその構造の違いとしか言えない。私は数字そのままでは覚えられなくて、一度「意味のある言葉」に置き換えて、初めて記憶回路の関門を通過させることができる。

例えば、「さんぜんろっぴゃくじゅうはち」と「3618」が、うまくリンクしないのだ。どうしても「寒いわ」なんて語呂合わせしてしまう方が、たやすく記憶に入りやすい。

一方、数字をそのままで覚えられるというのは、「さんぜんろっぴゃくじゅうはち」とか、「寒いわ」とかではなく、「3618」そのものを、意味以前の、あたかも画像のようなものとして、まさにカメラで記録するが如く、直接記憶に「焼き付け」てしまうもののようなのだ。

うらやましい才能というほかないが、もしかしたら私のように「3618」を、何も考えることなく、瞬間的に「寒いわ」に置き換えてしまうことができるというのも、もしかしたら才能なのかもしれない。どちらが優れているというようなことではないということだ。

そういえば、8万3431ケタの円周率の暗唱に成功した千葉県の原口證 (あきら)さんも、独自の語呂合わせ(当人は「翻訳もどき」と言っているらしいが)で、世界記録を作ったのだという。

確かに語呂合わせも才能と言えば言えるかもしれない。例えば、前述の「3618」にしても、「見ろ、嫌」というよりは「寒いわ」としたいという、一種の美学が働くのである。このあたりには、多少こだわりたいと思うのだ。

円周率の語呂合わせでは、「身一つ世一つ生くに無意味いわくなく身ふみや読む似ろよさんざん闇に泣く」が有名だが、私としては「産医師異国に向こう」系を取りたい。しかし、それにもバリエーションがある。

「産医師異国に向こう産後薬なく産婦みやしろに虫さんざん闇に鳴く」よりは、「産医師異国に向こう産後厄なく御文や読むに虫さんざん闇に鳴く」の方が、風情の点で数段上を行くと思うのである。

数字の語呂合わせとはちょっと違うが、私は月の古名を「睦きさや 宇佐見不破名が 裃し」(むつきさや うさみふわなが かみしもし)と、五七五で覚えた。元はいわずとしれた「睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走」である。

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コメント

さて、ここで問題です。
「2236」を語呂合わせで訳して、それがいったい何の語呂なのか、当ててください。(^o^)/

ヒント1
これは昔は「2237」や「2234」とか言われていたように記憶していますが・・・。

ヒント2
私やtakさんは分かるはずですが、他の地域の方は、(-~-)???でしょう。

投稿: いどさん | 2006年2月 4日 18:21

2236・・・??? 何だろう ???

2237 や 2234 ???
ますます、わからなくなってきた。

>私やtakさんは分かるはずですが、他の地域の方は、(-~-)???でしょう。

うわぁ、それを言われたらプレッシャーです。
はて???

投稿: tak | 2006年2月 4日 22:42

あっ、悩ませてしまって、スミマセン。m(_ _)mも、もけです。

「2236」は「ふうふでみろ」です。「夫婦で見ろ」
鳥海山の標高ですね。(^^ゞ

私が小学生の頃は「2237」(ふうふでみな)だったと思います。もう少し経った頃(高校生の頃だったか)どこかの資料で「2234」(ふうふでみよ)って書いてあったと記憶しております。

山の標高の測り方の精度が上がってきたんでしょうか??? 最近は「2236」で統一されているようですね。

鳥海山は、山形側から見ると双頭山(西鳥海と東鳥海)、秋田側から見ると単頭山(東鳥海しか見えない)です。
元々は西鳥海が昔からあった本山で、東鳥海は後からできた新山だそうで、だから山形側から見るのが本義だ、と言う山形側の勝手な言い分です。(^^ゞ
更に言うと、山形側の鳥海山は東鳥海がすっくと凛々しく=お父さん、西鳥海はふくよかな姿=お母さん、つまり夫婦の山なのだと、だから「夫婦で見ろ」(2236)

ローカルな話題でスミマセンでした~。(^^)/へばのぉぅ。

投稿: いどさん | 2006年2月 5日 12:59

あ、そうでしたか。

あれ、確かに私は鳥海山の標高は 2237m と思ってたのに、
いつのまに 1m 低くなっちまったんでしょうか。
きちんと測ったら、そうだったんですか。

へぇ~~~、知らなかったです。

時代が変わると、鳥海山の高さまで変わるのか!

投稿: tak | 2006年2月 5日 15:41

今さらながら訂正。
昔は 2230メートルだと思ってました。

確かそうでした。

投稿: tak | 2010年4月 9日 15:51

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