『国家の品格』 は、なるほど 「ベストセラー」 だ
最近あちこちのブログで話題になっている、藤原雅彦著 『国家の品格』 という本を読み始めた。講演を筆記したものをもとにしているので、やたら読みやすい。
下手すると、取手 - 上野間の常磐線の往復(約 90分)のうちに読み終えそうだったので、敢えて途中でカバンにしまったほどだ。
というわけで、今、第六章まで読み進み、最後の「第七章 国家の品格」というクライマックスを残している。一気呵成に読んでしまえばあっという間に読み終えそうだが、なんだか途中で「もう、いいや」という気になってしまったのである。
なるほど、「ベストセラー」というのは、こうあらねばならぬという要件を満たしているような気がするのである。
私は、世の「ベストセラー」という本をほとんど読んでいない人である。最近では、『バカの壁』というのも買わなかった。店頭でちょっと立ち読みして、「あぁ、今さら読むほどのことじゃないな」という気がしたので、買わなかったのだ。
一目見て、その内容に反感をもったとかいうのではない。もし反感をもったのだとしたら、逆にその反感をもつような内容の本が何故にそれほどまでに売れるのかを知りたくて、反射的に買ってしまっていただろう。
そうじゃないのだ。反感どころか、私は共感してしまったのである。その上で、「別に目新しい情報じゃない」と判断したのである。「この程度のことなら、とっくに知ってる」と。
今回の『国家の品格』というのは、「ちょっと自分も読んでおこうか」などと思いこんでいたために、さっさと買ってしまったのだが、本来ならばちょっと先に立ち読みして、『バカの壁』と同じような判断を下しておけばよかったような気がしている。
これが「ベストセラー」を作り出す人間心理というものだと、後で気が付いた。「自分と共通点を見いだせる人たちの多くが読んでいるようだから、高い買い物でもないし、取り敢えず買って読んでみようか」と思わせるのが、ミソである。
買って読んでみれば、別に新しい情報とか、斬新な切り口とか、はっとするような視点とか、そんなようなことが書いてあるわけじゃない。あちこちで言われているようなことをとても手際よくまとめると、こうなるということが書いてある。
自分で手際よくまとめられない人にとっては、格好の「入門書」になるだろうから、オススメしておいてもいい。しかし、これを読んだだけで、「そうだよね、本当にそうだよね、目からウロコが落ちたよね」と、感動するかなあというと、口ごもってしまう。
まだ最後の一章を読み残しているくせに、したり顔なことを書いてしまった。エラソーに聞こえたら、ゴメン。
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コメント
はじめまして。最近このHPを知って以来、いつも楽しく読ませていただいております。
「たしかにベストセラーとして置いてある本はあまり目新しい事が書いてないことが多いなぁ」と、今回の内容に大変共感したのでついコメントを残したくなりました。
今後も楽しみにしています。
投稿: osinko | 2006年4月 7日 12:04
私も、まだ1/3ぐらい読んだだけなのですが。
数学者にしては、持論の根拠が緻密ではありませんね。
先ずはじめに持論ありきで、そこまでの論拠が粗いように思えます。
いろんな角度から、緻密に考察を施した、というものではない。
自分に都合のいい材料だけを取り上げている。
(特に歴史について)
まあ、「世の中、理屈だけではない」と強調しているのですから、それもしょうがないかな?
NHKテレビの講演では、強引な右翼的言質でした。
理科系の職業を持つが、本来、感情家ですね。
投稿: alex99 | 2006年4月 7日 21:35
>osinko さん:
「たしかにベストセラーとして置いてある本はあまり目新しい事が書いてないことが多いなぁ」と、
あまり斬新なことというのは、万人には受け入れられないですからね。
ある意味、当たり障りのない論調とスレスレのところというのが、ベストセラーをつくる 「コツ」 なのでしょうね。
投稿: tak | 2006年4月 8日 09:55
alex さん:
>先ずはじめに持論ありきで、そこまでの論拠が粗いように思えます。
最近の日本論とか、日本人論とかいうのは、そういうのばっかりだと思います。
ですから、『国家の品格』 に書いてある内容には、ある程度共感できても、それでいながら、読んでいてなんとなく気恥ずかしい気がするんですよね。
内田樹氏のブログでは、
>たいへん面白く読みやすい本であった。
>藤原さんの言っていることのコンテンツについては、ほぼ95%私は賛成である。
>私が「私ならこういうふうには書かない」と思うのはコンテンツではなく、「プレゼンテーションの仕方」である。
と書いてありましたが、読んでみて、「なるほどね」 と思った次第です。
http://blog.tatsuru.com/archives/001616.php
投稿: tak | 2006年4月 8日 10:08