ユーザーにとっての 「便利」 とは?
米国の百貨店、サクス・フィフス・アヴェニュー(SFA)の上得意になると、コンシェルジュが、その客の手持ちのワードローブと組み合わせできる服を上手に選んで勧めてくれる。
アマゾンでも、買い物をした商品に関連した「いかにも」 という品物が見繕われて、「こんなのもいかが?」と、購入を勧められる。
検索エンジンもまた、同様の志向性を示しているようだ。
20日から始まった 「Search Engine Strategies 2006」で、ヤフーの井上俊一検索事業部長が、同社の今後提供する検索サービスのイメージ、「ソーシャルサーチ」の概念について講演したという。(参照)
ヤフーは「ユーザーの持つ知識や知恵が集まるコミュニティの集合体である『ソーシャルメディア』を目指しており、その知識を整理して他の人にも提供するサービスこそが『ソーシャルサーチ』だ」と解説した。
例えばこうした一環で提供される「マイランク」というのは、個々のユーザーの志向性に即したランキングで、検索結果が表示される仕組みであるらしい。同じキーワードで検索しても、そのユーザーに合った結果が表示されるというわけだ。
SFA のコンシェルジュも、アマゾンの「オススメ商品」も、「マイランク」も、ユーザーにしてみればとても便利なシステムには違いない。しかし、よく考えるとちょっと背筋の寒くなるところもある。
SFA の顧客は、ワードローブの中身まで、百貨店に知られているのである。アマゾンの顧客は、買い物をすればするほどどんな分野に興味を抱いているかを特定される。そして、ヤフーのユーザーも、興味の対象という情報をがっちり握られてしまう。
これらはちょっとした個人情報である。商業主義的に利用したら、ものすごい利用価値がある。「ユーザーにとっての便利」さと称されるものは、ベンダーにとってみれば、その何倍も都合のいい情報なのだ。
私は百貨店にたんすの中身まで知られたくはない。一企業に、どんな商品に興味を持っているかなんて知られたくない。「余計なお世話」はまっぴらだ。
インターネット検索をする度に、システム側に個人情報が蓄積されるような検索エンジンを、一体誰が好んで使うものだろうか。
私はあるサービスを利用するときは、いつでも「ニュートラルな個人」でありたい。「いつものヤツ」で通じるのは、行きつけのメシ屋と飲み屋ぐらいで十分だ。
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