ドイツに行って、まず大切なこと
私の最初に行った外国は、ドイツである。たったそれだけのことで、私は単純なことに、ドイツには好印象をもっている。
だが、ドイツ語はさっぱりわからない。「ありがとう」 と 「おはよう」 「こんにちは」 「おやすみ」、三つまでの数、そして 「男」 と 「女」 しかわからない。ただ、一応はそれで足りる。
最初にドイツに行ったとき、知人に「ドイツのトイレは、日本のように男女を示すようなアイコンはほとんどなくて、字で書いてあるだけのが多いから、間違っても女性用トイレに入らないように」とアドバイスされた。
彼が言うには、「男性用には『ヘーレン』、女性用には『ダーメン』と書いてある。『入ぇれん』と『駄~目ン』で、戸惑ってしまうが、『ヘーレン』の方が男性用だから、そっちに入るように」ということだった。ふむふむ。
まだ若干 25歳の私は、フランクフルト空港に到着し、ホテルに荷物をおいて、レストランで昼食を取った。そしてそのレストランで、トイレに行きたくなったのである。
そのレストランのトイレは、地下 1階にあった。おもむろに階段を下りると、まったく同じようなドアが二つ並んでいて、確かに、片方に "Herren" とあり、もう片方に "Damen" と書いてあった。それ以外に、絵で男女を示すようなアイコンはまったくない。まさにシンプルで無骨なゲルマン流である。
私はうれしくなってしまった。「おぉ、確かに聞いたとおりだ。『入ぇれん』と『駄~目ン』だ!」
しかし、次の瞬間、私は肝心なことを忘れていることに気付いた。どちらが男性用で、どちらが女性用なのか、すっぽりと記憶から消え去っているのである。
これは面白いどころではない。慌てて階段を駆け上り、たまたまそこに居合わせたウェイターに聞いた。ドイツ語なんてわからないから、咄嗟の英語である。
"Which is men's room, herren or damen?"
ドイツという国は、けっこう英語が通じる。これはとても幸いなことであった。彼はとても真剣な顔で、人差し指を突き出して、2度繰り返した。
"Herren, herren!"
それは当然ながら、 "r" の音を舌の奥の方を振るわせて発音する見事なドイツ語だった。2度繰り返すことで、「間違っても女性用のドアを開けてはなりません!」 ということを明確に伝えてくれたのである。
私は思わずドイツ語でお礼を言った。"Danke!" そして、また階段を駆け下りた。これこそ、私が国際人になった一瞬であった。
で、ここで改めて確認しておこう。今年、ワールドカップでドイツに行ったら、トイレは、男性は「入ぇれん」の方に、女性なら「駄~目ン」の方に入ること。そして、男性の場合は、朝顔の位置がかなり高いところに付いているので、背の低い人は爪先だって用を足すこと。
以上。今日のテーマは、馬鹿馬鹿しいが、とても大切である。
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コメント
>男性の場合は、朝顔の位置がかなり高いところに付いているので、背の低い人は爪先だって用を足すこと。
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オランダの場合はさらに高いので、私と同行出張した小柄な課長は、彼の水平位置より上方にある朝顔めがけて、消防車のように放水していました。
投稿: alex99 | 2006年4月18日 03:20
alex さん:
>オランダの場合はさらに高いので、私と同行出張した小柄な課長は、彼の水平位置より上方にある朝顔めがけて、消防車のように放水していました。
まだ勢いがあってよかったですね。^^;)
年をとったら、踏み台を持っていかないと。
投稿: tak | 2006年4月18日 12:51
スイスのホテルの腰掛も高かったですよ~。カカトを浮かせて用を足しましたです。そういうところでも「外国に来たなぁ」って感じましたねー。
(チューリッヒはドイツ語圏。はい、初めての外国でドイツ語辞書買いました^^)
投稿: Sato-don | 2006年4月18日 23:04
Sato-don さん:
>スイスのホテルの腰掛も高かったですよ~。
高い椅子って、太ももの裏側が痺れますね。
エコノミー症候群になりやすかったりして。
西洋人と並ぶと、身長が同じぐらいでも、向こうの方が脚が長い。
その脚の長さの違いって、ほとんど、膝から下の長さの違いです。
だから、同じぐらいの身長でも、
椅子に座ると、足が床に届かなかったりするんですよ。
そういえば、ルフトハンザの座席も高いです。
背の低い人は、足の下に何か踏み台になるものを置いた方がいいです。
投稿: tak | 2006年4月19日 20:42