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2006年4月17日

がんばれ、讃岐うどん!

「松阪牛」 という商標は OK だが、「さぬきうどん」は認められないみたいというのは、なんとも気の毒なことではないか。

地域名と商品名を合わせた商標登録を積極的に認める「地域団体商標制度」が今月から始まったのだが、そこにはいろいろな軋轢や矛盾があるようだ。(参照

「さぬきうどん」が地域ブランドとして認められない公算が強いのは、あまりに知名度が高すぎるからということらしい。

新制度では、「地名+商品名」でも、一般的に使われる「イセエビ」や「サツマイモ」などは申請できないという。全国各地で作られている讃岐うどんもこれにあたる可能性が高いとみられるのだ。

しかし、「イセエビ」や「サツマイモ」と 「讃岐うどん」を同列にするのは、いささか気の毒だろう。さぬきうどん協同組合の大峯茂樹理事長は「全国的な知名度は我々の努力の成果。それを利用して粗悪品を作る者がいるから登録できないなんておかしい」と怒っているという。当然の腹立ちだろう。

美味しい伊勢エビを食うのに三重県に行こうとか、本格的焼き芋を食いたいから鹿児島に行こうとかいう人はいないが、「本場の讃岐うどん」を食いたいと思ったら、やっぱり香川県まで足を伸ばしたいと思うのが人情だろう。ということは、立派な地域ブランドではないか。

香川県以外で作られる「讃岐うどん」は、 「讃岐風うどん」というべきだろう。特許庁さん、それくらいのことは考えてやっていいんじゃないかなあ。

地域ブランドではないが、以前、「シャネルスーツ問題」 というのがあった。シャネルスーツというのは、ココ・シャネルが最初にデザインした、女性用の襟なしスーツで、以後同ブランドのラインナップでは、定番的存在になっている。

しかし洋服のデザインなんて、真似ようと思えばすぐに真似られるので、シャネル以外のフツーのメーカーが似たデザインの洋服を作って、その名も「シャネルスーツ」としてバンバン売り出した。シャネル社は、それに対して断固たる態度を取ったのである。

「『シャネルスーツ』 と呼べるのは、我が社の商品だけ」と宣言したのだ。それで日本のメーカーは「シャネル風スーツ」などと言いつくろおうとしたが、それも頑として認めようとしなかった。

「シャネル」が登録商標である以上、「シャネル風スーツ」というのだって、やっぱり浅ましい。「ゼロックス風コピー機」なんて言ったら、それだけで負けじゃないか。

ブランドというのは、それほど重要なものである。香川県以外の製麺会社が「讃岐うどん」の名称を使うのは、そりゃあこぎな「のれんへのただ乗り」というものだ。多少譲っても、「讃岐風うどん」がせいぜいだろう。

ちょっと分野は違うが、「東横イン」という名称のホテルを、「ちょっとずっこいなあ」とか「志が卑しいんじゃないか」とか言う人が多いのと同じ感慨を持ってしまうがなあ。

がんばれ、讃岐うどん!

【4月 23日追記】

「新鮮空気」 の冬花さんが、まるでこの記事に呼応するように 「香川へ。さぬきうどんを求めて」 というエントリーを書いておられる。麺好きの私としては、写真をみるだけでムラムラしてくる。

これを見ても、りっぱな地域ブランドだと思うがなあ。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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コメント

今の今まで、東横インは東急系だと思っていた私です!(本当)←30年以上東急沿線に住んでいたのに……。

東急ホテルズ(東急インを経営)のサイトを見たら、まず最初に「東横インとは一切関係ありません」といかにも迷惑そうに書いてありました(笑)

投稿: やまべ | 2006年4月17日 11:45

やまべさん:

東横インの名称は、いかがなものかと思ってしまいますよね。

それから、名ばかりの 「讃岐うどん」 も多いんですよ。
ぜーんぜんコシがないの。

先日、乾麺で 「讃岐うどん」 というのがあって、
たまたま買ってきて茹でてみたんですが、
茹で上がりは、細めのごくフツーのうどんでした。

「このどこが讃岐うどんなんだよ!」 と言いたくなりました。

投稿: tak | 2006年4月17日 13:07

恥ずかしながら、東急インというのを見たことがなかったので、
どうして東横インという名称が「ずっこい」のか分かりませんでした。

なるほどなるほど。そーゆーことだったんですねぇ。

それから、地元が岡山なので、うどんといえばコシの強い讃岐うどんです。
以前、博多でうどんを食べたとき、あまりのコシの無さに思わず吐き出しそうになりました。
九州ではコシの無いのがスタンダードみたいです。

ちなみに岡山では、風邪をひいたときに、おかゆではなくうどんを食べるという家庭が多いようです。

投稿: hrk | 2006年4月17日 21:55

hrk さん:

ほほう、岡山はうどんに関しては讃岐文化圏ですか。

私も以前、博多うどんとやらを食って、
「??? この程度のもんか ???」 と思いました。
(博多の人、ゴメンなさい)

ちなみに、日本三大うどんは、
稲庭うどん、讃岐うどん、水沢うどん(群馬)だそうです。
ただし、三番目は、水沢うどん以外にも、
伊勢うどんとか、五島うどんとか、諸説あるようです。

日本三大がっかり名所が、
札幌時計台、高知のはりまや橋、京都タワーとの説がもっぱらですが、
やはり、三番目は京都タワー以外にも、
沖縄の守礼の門とか、諸説あるのと似ています。

大体において、「三大なんとか」 というのは、
最初の二つは定番で、三番目にバリエーションがあるというのが、多いようです。

投稿: tak | 2006年4月17日 23:34

毎日拝見しております。相変わらずコメントは「やっぱやめとこう」となってしまい、ご無沙汰しております。でも今日は書きますね。実は、このテーマ、すごく正論だと思いながら読みまして。「じゃ、稲庭うどんのほうはどうなんだろう?」と思っていたのです。そして今日、軽いモノが食べたいと夫に言われて、探して家に有った乾麺が偶然にも稲庭うどんで。茹でながら何気なく袋の背を見たら「稲庭うどん協議会 証」という赤を基調としたマークが入っていたのです。ニセものを防ぐためですよね。
実に地味なサラリとしたやり方で、なんか潔い感じが格好良く思えました。讃岐うどんの方たちも、早速取り組まれたらどうかしら?と水切りしながら思ったのです。いえ、それだけなのですが報告したくなりまして。ではでは。

投稿: banan | 2006年4月23日 06:15

banan さん:

おひさしぶりです。

確かに、稲庭うどんは、ブランドを大切にしているという印象がありますね。

業界団体認証という手は、案外実効的かもしれませんね。
ウールマークみたいな感じで。

それにしても、私もブダペストで稲庭うどんを食べてみたいです。

投稿: tak | 2006年4月23日 09:01

はじめまして。「新鮮空気」の冬花です。
トラックバックありがとうございます。

讃岐うどんの定義は、全国生めん類公正取引協議会によると
1. 香川県で製造されたもの
2. 手打ち式、または手打ち風
3. 加水量・・・40%以上
4. 食塩・・・・3%以上
5. 熟成・・・・2時間以上
6. ゆで時間・・15分以内
とのことです。そんな協会もあるんですね。

個人的には、東京のどんなに美味しい店のゴーヤチャンプルよりも、沖縄でがっつくおばあ作のてきとうなゴーヤチャンプル
のが美味しいと思ってしまうように、
土地(風景と空気感)の力というのは非常に大きいので、やはり讃岐うどん。というのは香川で食べるうどんのことをいうのではないかと思うのです。

あちこちのチェーン店や乾麺の会社が「さぬきうどん」というものを発売しても、ちゃんと美味しいものが好きな人は香川に行きたいと思うだろうし、「名前を広めてくれてるな」と思ってもいいような気もします(笑)
ちょっと楽観的過ぎでしょうか?

投稿: 冬花 | 2006年4月23日 14:38

>土地(風景と空気感)の力というのは非常に大きいので、やはり讃岐うどん。というのは香川で食べるうどんのことをいうのではないかと思うのです。

そうなんですよね。
やっぱり風土というか、その土地で食うものは美味い。

>ちゃんと美味しいものが好きな人は香川に行きたいと思うだろうし、「名前を広めてくれてるな」と思ってもいいような気もします(笑)

確かに、「コピーされなくなったらおしまい」ということもあるので、あんまり固いことも言えないんですけど、それでも、「さぬきうどん」が地域ブランドになれないというのは、あまりに気の毒過ぎる気がします。

投稿: tak | 2006年4月23日 14:50

こんにちは。ベビーが短い眠りですが10分でもスヤスヤとしてるときを狙って急いでtakさんのブログを拝見しております。いつも様々なジャンルが入れ替わり立ち替わりで話題に上り、本当に楽しみにしています。
さて、「乾麺より現地で」が叶わない身の上としては「乾麺、ブラーボ!」でございます。稲庭うどんは、素人でも茹で水(水道水)が硬水でも、袋の指示通りに茹でれば本当に透き通るような乳白色でツヤツヤ。そして腰も失われず、その美しさと共に感動ものです。疲れた胃腸を休め、食欲を引き立ててくれる日本のうどん。ブダペストで食べるのは又感慨深いです。
讃岐うどんを香川へ行って食べられない身の上としては由緒正しい乾麺を食べたいかなぁ。ではでは。

投稿: banan | 2006年4月23日 16:42

banan さん:

ちょっと気になって調べてみたら、やっぱり稲庭うどんは、乾麺がデフォルトなのでした。

稲庭うどんの生麺というのも、あるにはあるけれど、それは職人だけの裏メニュー的なものであるらしいのです。

ということは、稲庭で作られたものは、どこで食べても、由緒正しき 「稲庭うどん」 なのです。

それが、生麺がデフォルトの讃岐うどんとの違いというわけですね。

投稿: tak | 2006年4月23日 17:15

なーるほど!!!そうなのですね。良く分かってなくてごめんなさい。どうりで美味しい稲庭うどんなのですね。ブダペストで食べるのは稲庭うどん、日本に帰任して戻れたら旅行して讃岐うどんをいただくことにしますね。ありがとうございました。

投稿: banan | 2006年4月23日 18:29

banan さん:

稲庭うどんのサイトには、「油を使わないそうめん」 というのもありましたが、稲庭うどんそのものが、元々 「油を使わないそうめん」 みたいなイメージですね。

実は、以前、キズものの稲庭うどんというか、折れてしまって規定の長さに達しなかった稲庭うどんを安く仕入れるルートがあって、ふんだんに頂いていました。

長さが足りないと言っても、ほんの少しだけ短いという程度のもので、おいしさは変わらず、かなりお買い得でした。

あの透き通った絹のような食感はたまりませんね。
私はどちらかというと蕎麦派なのですが、麺類全般が好きなので、うどんも大好きです。

ちなみに、私は、四国は高知以外にはまだ行ったことがないのです。
本場の讃岐うどんというのを、ぜひ一度食べてみたいものと思っています。

それから、本場ナポリのスパゲティ・ナポリタンも!
(と、思いっきりボケをかましてみる ^^;)

投稿: tak | 2006年4月23日 22:38

(今更ですが、乗っかります)


アタクシも、本場台湾で「台湾ラーメン」食べたいなぁ。

お邪魔しました。

投稿: がんなむぅ | 2007年6月13日 15:28

がんなむぅ さん:

>アタクシも、本場台湾で「台湾ラーメン」食べたいなぁ。

あはは (^o^)
止むに止まれぬお気持ち、しかと感じ入りました。

(もう、「本場のアメリカンコーヒー」 程度では対抗できませんね)

投稿: tak | 2007年6月14日 11:56

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香川県。 それは東京の民に取ってみればもはや海外。 そんな香川県のなお奥地、 高松駅から車で1時間以上山道を走らせた谷合に、 目的の谷川米穀店はある。 開店は11時。 我々が到着したのは11時10分位か。 この時点で、行列の長さは20人。 カラスもヤマガラも悠々自適に鳴き暮らしている山の中である。 ここだけ、人口密度が高い。 並んで食べたうどんは、弾力がすごくて美味しくて、 でも普段の生活と違いすぎるリズムなので、 戸惑いながら、とにかく、食べた。... [続きを読む]

受信: 2006年4月23日 14:39

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