「器用さ」 の守備範囲
私の指先は、客観的に見れば決して不器用なわけではないと思う。PC のタッチ・タイピングができるし、ギターが弾けるし、蝶結びがきれいにできるし、箸の使い方だって上手だ。
それなのに、私は細かい指先仕事をするのが嫌いだ。時々、自分の不器用さに苛立ってしまうからである。
何でまた、そんなに不器用なわけじゃないのに、自分の不器用さに苛立つのか、この歳になるまでわからなかった。それが、近頃ようやくわかったような気がする。要するに、指先にも得手不得手があるのだ。「器用さ」にも守備範囲があるのである。
私の指先は概して、押すとか、つま弾くとか、絡ませるとかいう動きは得意なのだ。だから、上に述べた動きの他にも、ツボをおさえた指圧とか、あやとりとか、マウス操作とか、みじん切りとか、ドライバーでねじを回すことなどは得意なのだ。
しかし指先で細かい物をつまむとか、つまんで引っ張るとかいう動作は、どうも苦手なのである。
例えば、私は針の穴に糸を通すのが大の苦手だ。しかし正確には 「糸を通すこと」 だけなら、それほど苦手というわけではない。本当に苦手なのは、穴に通した糸の先をつまんで引っ張り出すことなのである。
何度やっても、針穴の向こう側にほんの少し出た糸の先を正確につまんで引っ張ることができず、妙なつまみ方をして、せっかく通した糸をまた引き戻してしまうのだ。だから私はこれまで 「針穴に糸を通すのが苦手」 と、不正確な思い込みをしてきたのである。
同様に、私は辞書を引くのが苦手だ。といっても、辞書を引くメソッドは、ほぼ完璧に理解している。50音だって、アルファベットだって、漢和辞書の部首索引だって、全然苦労しない。辞書のどのあたりのページを開けばいいのかは、ほぼ瞬間的に見当が付く。
何が苦労なのかというと、辞書のあのデリケートな薄いページを指先でめくるという物理的動作である。大雑把にパラパラッとめくるのは得意なのだが、問題は目指す項目に近づいて、1ページずつめくる段になってからの動作が、まどろっこしいのだ。
例えば、翻訳作業などでキーボードを打ち続けていて、ちょっと自信のない単語にぶち当たる。こんな時、以前ならばおもむろに紙に印刷された英和辞書を開いて単語を探した。
しかし、ただでさえページをめくるという動作が苦手なのに、直前までタイピングというまったく感覚の違う動作をしていた私の指先は、ますます不器用になる。というわけで、紙の辞書を引くのは、本当にイライラしていたのである。
だから私は、パソコンで辞書を引くという機能を本当にありがたく思う。
どんなにバッティングの得意な野球選手でも、苦手なコースがあるというのもうなずける話である。相撲取りが右四つとか左四つとかにこだわるのも道理である。書道家によって漢字が得意だったり仮名が得意だったりするのも、やはり当然である。
それぞれ、得意な守備範囲があるのだ。まあ、いずれにしても、私の最も苦手なのは金勘定なのだが。
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