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2006年6月14日

「謝るツボ」 の違い

港区のエレベーター圧死事件で、シンドラー社の幹部が記者会見を開いたが、責任逃れの印象を与えてしまい、評判が悪い。

これは、「とにかく謝っておけば間違いない」という日本の文化と、「重要事項では決して軽はずみに謝らない」という西欧の文化の衝突という様相を呈している。

西欧人というのは、とにかくよく謝る。道を歩いていて、ちょっと身体が触れただけで(ぶつかったというほどでもないのに)、すぐに謝る。かなりな衝撃でぶつかってもまず謝らない日本人とは、エライ違いだ。

ところが、このよく謝る西欧人は、交通事故など法律的な問題がからむことになると、とたんに謝らなくなる。"I'm sorry" と言ってしまったら、自分の非を認めたことになるから、急に慎重になるのだ。

要するに、彼らはちょっとしたことでは気軽に謝るが、重大問題ほど謝らないのである。

ちょっとしたことでは知らんぷりをしていて、大きな問題になりそうだと、とにかく頭を下げまくればなんとかなると思っている日本人とは正反対だから、かなり感情的な軋轢まで生じている。

今回の記者会見でも、「シンドラー幹部が謝罪」したと伝えられているが、記事をよく読めば、彼らが謝罪しているのは、法的責任を取らずに済む道義的な事項だけに限られていることに気付く。

彼らが謝っているのは、情報開示の遅れという初期対応の悪さにより、ユーザーに不安を与えてしまったということに関してのみである。ほかの事項では、一切謝っていない。

それどころか、「世界第二のシェア」を誇り、「構造や設計が原因の事例はない」と大見得を切りながら、原因はほかにあると言わんばかりの態度を示している。

原因究明が行われるまでは「軽はずみに謝らない」という態度については、それはそれなりに理解できるが、イメージダウンを懼れるあまり、強がりともみえる態度をとるのは、やはりちょっと「やり方がまずい」と言わなければならない。

きっと、まともなコンサルタントが付いていないのだろう。日本人のメンタリティを理解しないまま、自分たちのやり方を押し通そうとして、イメージを落としてしまっている。

過去にも雪印や JR 西日本、民主党など、不祥事を起こした時のリスクマネジメントがなっていないために、ますます問題をこじらせてしまった例がいくつもあって、その度に私はブログで嘆いているのだが、シンドラーも、少しはお勉強をしておくべきだった。

それにしても、シンドラー社のエレベーターというのは、公共機関でのシェアが高いようだ。その安い値段が、入札で強みを発揮しているのだろうか。国や自治体が、金をケチって危ないエレベータを導入し、さらにいい加減なメンテをしているんだとしたら、ちょっと恐いな。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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