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2006年6月21日

盗作の方が見栄えがいい?

まこりんさんが、面白いことを書いている。例の和田義彦氏の盗作疑惑で、一切の予見なしでみると、スギ氏のオリジナルよりも、和田氏の盗作の方が好みだそうだ (参照)。

下手するとブログが炎上しかねないが、まこりんさんの言いたいことは、私もかなりよくわかる。ある意味、もっともなお話だ。

まこりんさんのブログ経由で、スギ氏のオリジナルと和田氏の盗作を並べて検証しているサイトを知ったので、さっそく行ってみた(参照)のだが、なるほど、確かに「似ている以上」である。これを盗作と言わなかったら、世の中に盗作はなくなる。

それを十分に認めた上で、まこりんさんは、次のように書いておられる。

あらゆる先入観を排除して、和田氏の盗作作品を観賞する。

 ――結構好きだな、この絵。

 アルベルト・スギ氏のオリジナルと和田氏の盗作、予備情報まったくなしで、どちらの絵のほうが好みか、といわれたら、わたしは和田氏の盗作の方を、選ぶだろう。筆遣いや、色調など、些細な点なのだが、和田氏の作品のほうが、わたしの感性にしっくりくるのだ。

この点では、私もまこりんさんに同感である。和田氏の盗作の方が、なんというか、「こなれている」という印象を与えてしまうのだ。

しかし、これは当然といえば当然のことかもしれない。和田氏はオリジナルという土台の上に立って、それをさらに「進化」させるという作業に集中できたのだから。

優れた芸術作品を生み出すには、まず「発想」の部分でのイマジネーション、オリジナリティ、クリエイティビティといったもののほかに、その的確な表現を保証するだけの「テクニック」が求められる。

発想力だけでテクニックが伴わなければ、アートたり得ず、また、いくらテクニックがあっても発想力が貧弱ならば、二流の職人にもなれない。

和田氏の場合は、クリエイティビティのベースをスギ氏のオリジナルに全面的に依存できたのだから、あとは、仕上げ上のテクニカルな部分に集中できた。スギ氏のオリジナリティに、自分の優れたテクニックをプラスしたのだから、そりゃあ、見栄えがよくなるのも当然である。

もっとも、和田氏にもある程度の発想力がなければ、オリジナルを台無しにしてしまうというリスクもあったわけだが、それはさすがに避けられている。いくつかの例外を除いて。

もう完全に時効だから、白状しておく。

学生時代、ある授業で、友人のレポートを、丸写しとはバレないように、「てにをは」を多少変えて書き直し、提出したことがあった。その結果、オリジナルの友人は「良」で、私は「優」の評価だった。

どう考えても、私の文章の方がこなれていたというだけなのだが、それは、私がレトリックのみに集中できたために他ならなず、ベースはあくまでも友人の発想力である。

今回のお話も、次元はかなり違っても、まあ、そんなようなものなのではないかと思うのだ。コピーがどんなにこなれていたとしても、エライのは、元を作ったオリジナルである。

蛇足だが、その友人には私の方からもコピーの元をいくつか提供している。言い訳というよりは、やぶ蛇だが。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」 へもどうぞ

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コメント

質の高い読み手さんたちのおかげをもちまして、まったくブログが炎上してないまこりんです。
わたしも、めんどうくさい話しちゃったかも、とアップした後にふと思ったんですけれどもね。

表現というのは、どのようなクオリティーであっても、先達が築き上げた数多くの作品の土台の上に成立しているものであって、あらゆるものから離れたところにあり、絶対的に独創的であるものというのはない、と私は思っているので、真似るという行為自体そのものは、一概に否定するものではないと思いますけれど。

真似は、初心者にとっては、テクニック・クリエイティビティーの両方をやしなう、もっとも近道な練習法だと思いますし。

そこで、「盗作・パクリ」っていわれる作品と、「オマージュ・本歌取り・リスペクト」といわれる作品の違いは、色々要素はあるんでしょうけれども、それはクリエイティビティーに対する礼儀に集約されるんじゃないかな、と思いますです。

作品を作り上げるときにたち上がる、あるいは降りてくる、なんらかの「霊感」――これに敬虔でないアーティストはどのようなアーティストであろうともアーティストたりえない、んじゃないかな、と。
結局、和田さんに欠けていたのは、そこだったんだろうなぁ。

と、長文失礼。

投稿: まこりん | 2006年6月23日 09:35

まこりんさん:

まさに同感。

このエントリーは、まこりんさんのこのコメントをもって、見事に完結いたしますって感じです。

投稿: tak | 2006年6月23日 22:05

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