いにしえの峠道を辿る
昨日の早朝につくばを発って、酒田に帰郷している。先週の段階の週間天気予報では、この 3日間は「曇り時々晴れ」といった基調だったのだが、急に梅雨前線が北上して、今日は朝から雨が降っている。
晴れ男の私としては、実に珍しいケースである。まあ、今日一日は我慢していよう。
昨日は途中で仙台に寄り、久し振りに妻の母の墓参をした。そこから酒田に来るのに、普段は高速道路(山形道)を使うのだが、今回は時間に余裕があったので一般道で行くことにした。
私は実は高速道路があまり好きではない。ただ単に速く移動するというだけで、旅の実感がないからだ。時間に余裕さえあれば一般道を辿りたいと思っている。
国道 286号線を辿り、東北の背骨のような奥羽山脈を越えて山形県に抜けるのだが、その途中に笹谷峠がある。実は、私はこの笹谷峠を越えるのに、その下を貫通する笹谷トンネルしか通ったことがなかった。
しかし、この笹谷トンネルは 「山形道」 の一部として供用されているため、一般道を辿るとなると、旧道の峠を越えるしかない。
カーナビの地図を見ると、見事なほどギザギザの九十九折りである。
笹谷峠は宮城県と山形県とを結ぶ最古の峠で、標高 906mと、1000m近い。かなりの難所である。
Wikipedia をみると、その歴史は平安時代まで遡ることができるという。
「すぐせやな名ぞいなむやの関をしもへだてて人にねをなすからん」(源俊頼・散木奇歌集)、「ふた國の生きのたづきのあひかよふこの峠路を愛しむわれは」(斎藤茂吉) の歌が紹介されている。
陸奥の国と出羽の国という 「ふた國」 の間に、「いなむやの関 (有耶無耶関)」 というのがあったわけだな。この関には、鬼が出たと伝えられている。
ちなみに、「有耶無耶関」 の跡というのは、山形県に 2箇所あって、もう一つは庄内浜の北端である。「うやむやのせき」と読むのが今は一般的だが、源俊頼の時代には 「いなむやの関」 と読んだものらしい。
峠の登り口には、「大型自動車通行禁止」とあり、「落石注意」の看板が随所にある。道も狭く、車 2台がすれ違うのも容易ではなさそうだ。大雨でも降ったら、通るのに躊躇するだろう。
辛うじて舗装されてはいるが、まさに「いにしえの峠道」と呼ぶにふさわしい様相である。古代からなくてはならない道だったが、時には人を呑み込んでしまうこともある危険な道でもあった。(何しろ、鬼が出たぐらいだから)
峠の下を貫通する笹谷トンネルしか知らなかった私には、新鮮な驚きを伴う旅程だった。古人(いにしえびと)は、歩いてこの峠を越えたのである。彼らの身体感覚は、現代を生きる我々のそれとはかなり違っていただろう。
その「いにしえの身体感覚」を、我々は時には蘇らせて、五感をリセットしてみる必要があるような気がした。そうすれば、この世界はかなり違ったものとして認識されるだろう。
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