「がんばる」の反対は「感謝する」?
「あすなろ BLOG」というブログがあって、大橋悦夫さんという人が、いろいろなことを書いておられる。その 8月 1日付に "「がんばる」の反対は?" というエントリーがある。
その答えは、「感謝する」なのだそうだよ。いや、別に反対するわけじゃない。ただ、やはりちょっとした齟齬感覚が残るのだよね。
なんでまた、「がんばる」の反対が「感謝する」なのかというと、以下のような理由なのだそうだ。
がんばっている最中というのは、なかなか周りが見えなくなるもの。
そこで、ふと立ち止まって、周りを見回して、いま自分ががんばることが
できているのは周りにいる人たちのおかげだ、ということに気づいて、みんなに「ありがとう」と言おう。
ふーむ、なかなか美しい主張である。でもこのことを言うのに、どうして「がんばる」の「反対」は「感謝する」だなんて、とってつけたようなレトリックが必要だったのだろう。
これくらいのインパクトのある導入だったら、もう少しひねりのあるオチ(いや、失礼、オチじゃなくて、「結論」ね)を期待してしまいがちだ。
いやいや、でも、世の中で本当に大切なことというのは、実はこのようなごく当たり前のことなのだよね。そうそう、その通り。
ただ、私なら同じようなことを言うのに、こうした類のあざといレトリックは使わないだろう。それは、「感謝する」 の方から逆の道筋をたどってみるとわかる。
「感謝する」の反対は、「がんばる」ことというよりは、「がんばってる自分に酔いしれてしまう」ことだろうからだ。この二つの微妙な違いは、きちんとおさえておきたい。そうでないと、「感謝しつつがんばってる人」 に気の毒というものだ。
大橋氏の翌日のエントリー、"「がんばる」と「感謝する」の時差" には以下のようにあり、「がんばる」 は未来志向で、「感謝する」 は過去志向ということなので、この二つは同時には成立しないかのようにみえる。
逆に「感謝する」という言葉を考えると、これは「過去」に向いていることが分かります。文法的には、「I will thank you.」という文は成立するとは思いますが、実際には使わないでしょう。感謝するのは今この瞬間か今より前の時点の何かを対象にしているはずです。
しかし、感謝というのは、今、あるいは過去にしてもらったことに対してのみ捧げるだけのものだろうか。感謝って、その程度の即物的なものだろうか?
私なら、「前もって感謝する」 ということもあるのだけれど。例えば日本の春祭りの多くは、民俗学では「予祝行事」といって、秋の豊作を前もって神に感謝して祝っておく発想との見方もある。
英語にも、"Thank you in advance." という言い方がある。もっと言えば、「本当の感謝」というのは、時間軸の過去・現在・未来に関わりなく、「未発の中」にあるというような、根元的なものなのだろう。
本来は、「感謝すればこそ、本当にがんばれる」ということなのだろう。だから、結局はこの人も同じことを言ってるみたいだけどね。
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