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2006/08/26

耳障り? 耳触り?

先月末の Reiko Kato さんの 「的を得たり、耳障りが良かったり」というエントリーを読んで、「耳ざわり」について書いてみようと思いながら、つい 1ヶ月近くも忘れていた。

「的を得る」 については、うっとうしいが、私の 3月 7日付エントリーを読んでいただくことにして、さて、問題の 「耳ざわり」 である。

最近、(かなり目障りなんだけど) 確かに 「耳障りがいい」 という表記を目にすることがある。ググってみると、652件もヒットした。

その最上位にランクされているのは、"「耳障りがいい」 はおかしい" と指摘した件の Reiko Kato さんのページなのだが、他のほとんどは、何の疑いもなく「耳に心地よい」という意味で使っている。

これは、明らかにおかしい。「障り」というのは、「さまたげ」とか「支障」とかいう意味なので、元々「よくない」ことなのである。

口語で 「耳ざわりがいい」 と、つい口にしてしまうのは、わからないでもないが、「耳障りがいい」と文字で表記してしまって疑問を感じないのは、日本語センスがビョーキだ。

もっとも「耳障り」 で違和感を覚えた人がもう一度変換キーを押して、「耳ざわり」 で決定してしまうことも、かなり多いようなのだ。その証拠に「耳ざわりがいい」でググると、突然 10倍以上の 7390件に増えてしまう。

ちなみに「耳触りがいい」でも 5100件になる。これはより手間をかけた変換をしていいて、執念を感じる。よほど、この表現がしたかったようなのだ。

まあ、「耳触りがいい」 という表現をしたくなる気持ちもわからないではない。「手触りがいい」「肌触りがいい」 などの表現の延長として理解できる。「タッチがいい」 ということだ。

世の中には「実際にヘッドホンが耳に触れているから耳ざわりがいい音楽と言う」 なんていう人もあるらしい(参照)が、そんな想像力のない苦しいことを言うから、かえって変痴奇論になる。物理的に触れているかいないかは、この際、関係のない話なのだよ。

例えば、いかにももっともらしい誘惑的な言い回しについて、ちょっとした皮肉を込めて「耳ざわりはいいけど……」 なんて言うのを、実際によく聞く。これなんか、曰く言い難いニュアンスが思いやられて、つい認めたくなってしまうほどだ。

結論。「耳障りがいい」 という漢字表記に限れば、どう考えてもおかしい。ただ、「耳触りがいい」という表現は、私自身は原則的には歓迎しないけれど、世の中で広まってしまうだろうと思う。あるいは、漢字で区別しなければならない時代がくるかもしれない。

余談だが、「目障りがいい」 という表現を何の疑いもなくストレートに使っているページが、広いインターネットの世界で 1件だけ見つかった。(あえてリンクするほどの意味はないので、しない)

それもびっくりだが、さらに、「目触りがいい」 という表現をしたくて、キーボードをいくら叩いても「目障りがいい」が表示されるといって憤慨している、プロ中のプロと目される物書きもおいでだ (参照 以下の引用は、改行修正済み)。

例えば、「耳触りがいい」という正しい言い回しがある。「目触りがいい」は、普通には使わないが小説の言葉では間違いなのだろうか。キーボードをいくら叩いても「目障りがいい」が表示される。私たちは打鍵しながら、知らず知らずにワープロ文体にならされ、そのコンセプトで作品を書くようになる。文体を自分で作る、個性豊かな文章を創造するという、作家の基本が育たない。

「目触りがいい」 が間違いじゃないかどうかは別として、"キーボードをいくら叩いても 「目障りがいい」 が表示される" と言いながら、ちゃんと その前のセンテンスで 「目触りがいい」 と入力できている (このテキストの冒頭で、筆者は 「私はこの原稿を富士通のFM・Vという機種で書いている」 と断っている) という事実は、どうなってるのだろうか。

この引用部分以外にも、いろいろな意味で、心の底から驚くような記述が満載で、揚げ足取りが好きな人なら、大喜びしそうなテキストである。

「ワープロ文体」 ということに関しては、私は 3年以上前に、"はっきり言わせてもらえば、ワープロごときで文体が変わってしまうなどというのは、実は、その人は 「文体」 と称するに足るスタイルを、元々持ち合わせていなかっただけなのである" と、喝破させていただいている (参照)。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

「目障りがいい」という表現を何の疑いもなくストレートに使っているページ、
二つありました~
http://search.yahoo.co.jp/search?p=%22%CC%DC%BE%E3%A4%EA%A4%AC%A4%A4%A4%A4%22&fr=top_v2&tid=top_v2&search.x=1

投稿: ach | 2006/08/26 05:19

ach さん:

>「目障りがいい」という表現を何の疑いもなくストレートに使っているページ、
>二つありました~

ほんとだ ^^;)

投稿: tak | 2006/08/26 07:50

>もっとも、「耳障り」 で違和感を感じた人がもう一度変換キーを押して、「耳ざわり」 で決定してしまうことが、かなり多いようなのだ。
>その証拠に、「耳ざわりがいい」 でググると、突然 10倍以上の 7390件に増えてしまう。

私は違和感を感じたに強い違和感を持ちます。
もっと言えば嫌悪感すら抱きます。
本当にバカなのではないかと。
こんな不細工な表現をしている人の日本語センスを疑います。

投稿: 違和感を感じるに違和感を覚える | 2014/06/04 15:16

違和感を感じるに違和感を覚える さん:

あんれま、本当だ。
私としたことが、なんておばかな。

訂正しておきました。ありがとうございました。

投稿: tak | 2014/06/05 00:52

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