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2006年10月16日

「戦略的シンクロニシティ」ねぇ

sato さんのブログで「戦略的シンクロニシティ」なるコンセプトを知り、ググってみると、今よく売れているらしい本が見つかった。

顧客は追いかけるな!48時間で顧客が集まるシンクロニシティの法則」という本である。分類するとすれば、常に隠然と売れ続ける「スピリチャル系ビジネス本」 と言えそうだ。

「シンクロニシティ」 というのはユングの造語なんだろうが、アカデミックな世界では一般に疑似科学扱いされているコンセプトである。"Synchronic" (共時的な)という形容詞から派生した名詞で、「共時性」なんて訳されており、「因果律」とは区別されている。

わかりやすく言うと(わかりやすいかなあ?)、「朱に交われば赤くなる」というのは因果律(law of causality)で、「類は友を呼ぶ」というのが共時性(synchronicity) である。朱に交わって赤く染まるのは合理的に説明できるが、本当に類が友を呼んだのかどうかは、単なる偶然と区別がつかない。

それでも、我々の実体験の中には、シンクロニシティといえば言えるという現象がいくらでもある。単なる偶然というには、確率論から言っても多すぎるような気がする。ただ、あくまでも、「気がする」のである。類が友を呼ばないケースは、印象に残らないだけで、呼んだケースよりずっと多いのかもしれない。

それでも一度でも友を呼んでしまえば、後は相乗効果という十分に理論で説明のつく現象で、少なくとも友をはねつけるよりはずっと楽な作業になる。だからビジネス理論で言えば、「最初の友を呼ぶ」というステップさえクリアすれば、後は楽になるだろう。

件の本の目次を見ただけで、そのメソッドはおおよそ見当がつく。最初に「完璧な顧客」を明確にイメージし、それとともに、自分がその顧客に提供できる最大限に誠意を込めたサービスをも作り上げる。

そうすれば、その「完璧な顧客」が実際に獲得できた時点で、そこから先のプロセスは、ほぼ自動的に発現することになる。つまり最初の前提はかなりスピリチャルで神懸かりとさえいえるが、そこから先は十分にマーケティング理論に則っているわけだ。

マーケティング論といえば、現在は十分に「学問」としての地位を確立しているのだが、元々は人間の心の動きによる結果を追認していくプロセスである。だから、通俗マーケティングの世界では、スピリチャル系がかなり力をもっていて、それが実際に効果的だったりする。

理論的にはどこから見ても隙のないアカデミックなマーケティング論でも、効果がなければ誰も振り向かない。逆に効果さえあれば、科学的かどうかなんていうのは、あまり問題にされないのである。要するに儲かれば結果オーライなだけに、案外融通無碍だ。

通俗マーケティングの世界は、かなりプログマティックな性格をもっていて、同時に、スピリチャル系が根を張る要素も強い。「ID 論」(インテリジェント・デザイン論)が 「科学といえるかどうか」 というレベルで(そんなもん、いえるわけないだろうに)すったもんだしている純粋アカデミズムの世界とは、趣がかなり違う。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

トラックバックありがとうございます。そうなんです、スピリチュアルの言葉と思っていたのがビジネス・コーナーにあったので意外だったのです。

まだ読みかけですけど、今のところ、エクササイズの17日目「新しいものを受け入れるスペースを作る――シンクロニシティはきれいに整頓された空間で生じる」というのが一番役に立ちそうです。「うぉ~! それってメールと書類と部屋を整理しろってか」と掃除のすすめと解釈して、「いい仕事をするための心得帳」のノリで読むとけっこう面白いです。

投稿: sato | 2006年10月16日 07:58

世の経営者という種族には、案外神懸りが好きな人、多いですからね。

>今のところ、エクササイズの17日目「新しいものを受け入れるスペースを作る――シンクロニシティはきれいに整頓された空間で生じる」というのが一番役に立ちそうです。

た、確かに・・・!
こちらも、耳が痛い ^^;)

投稿: tak | 2006年10月16日 10:50

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