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2006年10月 7日

「東京だぬき」 で、いろいろ考えた

妻がどこからか、「東京だぬき」 という初めて聞く名前のお菓子をもらってきたようで、「おやつに食べて」という。「東京」と名の付くお菓子で、こんなにマイナーなのも珍しい。

なにより、発想が 「ひよ子」 のパクリっぽく、今時、オフィシャル HP も見あたらない。マイナー商品の要素をしっかり満たしている。

左の写真が問題の「東京だぬき」である。接写に失敗して、ちょっとボケボケだが、そのマイナー感にふさわしいといえば言えるかもしれない。

「ひよ子」に類した菓子はいくらでもあるが、他はある程度洗練された形になっている。しかしこの「東京だぬき」は、幼稚園の子どもの粘土細工レベルなのが、いかにも哀しい。

デザインとして、「うん、どうみてもたぬきだ!」と言わせるだけのファクターが、決定的に欠けている。「たぬき」のくせに、パッケージも本体も、見事に「きつね色」だ。少なくとも目の周りだけでもちょっと焦がしてあげれば、しっかりと「たぬき」なのに。

これでは、犬にも猫にもブタにも、下手すると、となりのおっさんにも見える。

そもそも「東京だぬき」という名称からして、ちょっとどんくさい。ネーミングの常道から言えば、濁らずに「東京たぬき」と、ちょっとだけ可愛らしくすれば、少なくとも一般ウケはするはずだ。これが「江戸だぬき」なら、語感として自然だけど。

と、ここまで考え、ふと思い立って「江戸だぬき」でググってみると、なんだ、ちゃんとあるではないか(参照)。これでわかった。パクリとしては「ひよ子」直系ではなくて、「ぽんぽこだぬきのお饅頭」「江戸だぬき」を経た、分派の末端だったのか。道理で「東京だぬき」だったのね。

とまあ、さんざんクサしてしまったが、これが食べてみると案外うまいのである。甘みにくどさがなく、シャープ感がある。口に入れてしまいさえすれば、こう言っちゃなんだが「ひよ子」より上だと思う。自信を持ってオススメしてもいいぐらいだ。

ところで、「タヌキ」は英語で "raccoon dog" という。英語の方から直訳してしまうと、「アライグマイヌ」である。英語民族にとっては、アライグマは珍しくなくても、「タヌキ」なんて見たことないから、きちんとした名称がなく、無理矢理そう呼ぶしかないみたいなのだ。

というのも、タヌキは東アジア独特の動物で、ヨーロッパにはいなかった。しかし、ロシア人が毛皮を取るために移入した結果、驚くほどの広がりを見せ、現在では、東欧、北欧はおろか、イタリアでも目撃されているという。

さすが、千畳敷と言われるだけのことはある。タヌキ、恐るべし。ちなみに、商家の軒先に信楽焼のタヌキがいたりするのは、「前金でお願いします」のメタファーであるとの説がある。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

いつも楽しい記事を展開してくださりありがとうございます。
東京たぬきという1個のお菓子からこんなにいろいろな発想と調査の仕方、さすがに拓明さん!
ちょっとだけ、正直言って写真がひどいと思ったのですが、そのひどさの、リアルさにつながる話の面白さ。江戸たぬきに続くアイデア。私自身、ブログについて少し行き詰っていたので、勉強になりました。同じ土俵で考えること事態、不遜なのですが。

投稿: KEICOCO | 2006年10月 8日 10:10

いやはや、本当にひどい写真です。
撮り直そうと思っても、もう食べちゃった後だったので、失礼しました。

それにしても、「ぽんぽこだぬき」「江戸だぬき」と比べると、その造形的貧弱さは …
おいしいから許すけど ^^;)

投稿: tak | 2006年10月 8日 23:44

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