内輪の顔を立てて、対外的な面目を失う
先月、仕事で宮城県の「大崎市」というところに行った。しかし、そう言っても、ほとんどの人はそれがどこだかわからないだろう。
「古川市とその周辺が合併して、大崎市になった」と言うと、かなりの人が、「ああ、古川か」と納得する。「古川」なら知っていても、「大崎」なんて誰も知らないのは哀しい。
ちょっと調べてみると、「大崎市」というのは、古川市、遠田郡田尻町、志田郡三本木町・松山町・鹿島台町、玉造郡岩出山町・鳴子町の 1市 6町が、いわゆる「平成の大合併」で一緒になって誕生したとある。
この中で、古川は東北新幹線の駅名にも、東北道のインターチェンジ名にもなっているので、一般に知名度がある。また、鳴子町は温泉とこけしで有名だ。この知名度に勝る 2つの名をどぶに捨ててまでこだわった 「大崎」 とは、どんないわれがあるのか?
これもちょっと調べたら出てきたのだが、この辺りは、古くは大崎地方と呼ばれ、昔は郡が 5つあったので、「大崎五郡」と言われていたのだそうだ。しかし私の妻はそのすぐ近くの仙台市出身だが、「大崎地方」 なんて、聞いたこともないそうだ。
より年上の宮城県出身者何人かにも聞いてみたが、「大崎地方」 なんて、全然知らないという。かなりマイナーな名称のようだ。普通ならば、知名度の抜群に高い「古川」の名前になりそうなものだ。で、Wikipedia にも次のように記されている。(参照)
大崎市の市名は一般公募により決められたものであるが、公募においては、中心市である「古川市」が応募数でトップであり、最終選考まで残ったものの、合併協議会の委員による投票で「大崎市」に決定した。
合併協議会委員のお偉方たちが、「古川の地名のみを残してしまっては、その他の町村の顔が立たない」とかなんとか、余計なことを考えて、忘れられかけた昔の名前を無理矢理持ちだしてしまったんではないかと、勝手ながら想像してしまう。
こういうのって、一般公募とは名ばかりのアリバイ作りのようなもので、実際は出来レースというのが多いからね。
しかし、誰も知らない「大崎」の名前にしてしまったおかげで、日本中で「それどこ?」とか、「山手線の五反田の隣?」などということになる。内輪の顔なんか立てて、対外的面目を失うのである。
これって、マーケティング的に考えても、かなりの損失である。なにしろ新幹線の駅名、高速道路のインターチェンジにまでなっている地名も、名の知れた温泉地の名前も、正式な市の名称とちっとも連動しないんだから。
そもそも「出身地はどちら」聞かれ、「宮城県の大崎市です」と答えなければならない身になったら、かなり哀しい。
聞いた相手に怪訝な顔をされ、「えぇと、昔は 『古川市』 と言ったところです」、「鳴子温泉のあるところです」補足説明をして、ようやく「あぁ、それなら知ってます」になるというのは、観光リソースから言っても、かなりの損失だ。
これ以上どことは言わないが、今回の平成の大合併では、これに類したナンセンスな地名がかなりあるようだ。すんでのところで幻となった「南セントレア市」は、多分マーケティング発想が前面に出すぎたのだろうが、そうした発想が貧弱すぎるのも考えものである。
10年も経ってから、「オヤジどもが勝手に変てこな地名にしてしまったおかげで、しばらくは商売やりにくくってしょうがなかった」なんて言われそうである。
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コメント
私が大嫌いな田中眞紀子が、もう切れ味もない、ただの悪態に終始していましたね。
もう鮮度も落ちて、ああなると、醜いだけ。
投稿: alex99 | 2006年10月10日 16:58
alex さん:
「パパの革靴」論も、回りくどいだけでしたね。
ご自分は「オヤジの下駄」履いてるだけになっちゃって。
投稿: tak | 2006年10月10日 22:57