電車で寝るのは、日本人だけ?
人からどう言われようと、徹底的に開き直って、改める気がない悪癖(?)が、私には 2つある。冷たいおしぼりでゴシゴシ顔を拭くのと、通勤電車の中での熟睡だ。
電車で寝るのは日本人だけだし、おしぼりゴシゴシは、日本人の中でも、さらにオジサンしかしないそうだが、そんなの知ったことか。
冷たいおしぼりゴシゴシは、とくに真夏の暑い日にやるのが最高だ。うら若き女性は口を極めて非難するが、この爽快感だけは譲れない。よくぞ男に生まれけりである。女性がしたくてもできないのは、化粧が取れて別人になってしまうからだろうと決めつけている。
通勤電車での熟睡も、なかなか手放せない。「電車で寝るのは日本人だけ」という説があるが、これは嘘である。電車の座席で軽く目を閉じてウツラウツラしているぐらいは、日本に限らずどこでも見られる。
ただし、私の行った大抵の国では、「次は○○」なんて車内案内はしてくれないし、治安だって日本ほどよくないから、「軽く目を閉じてウツラウツラ」程度にとどめて、いつでも目を覚まして周囲をウォッチできる準備をしておかないと、危なくてしょうがない。
だから、座席に座っている少なくとも半数以上が、揃って平和にこっくりこっくりしている光景なんてものが見られるのは、確かに日本の通勤電車だけだと思う。さらに「熟睡」までできるのは、間違いなく日本に限られるだろう。よくぞ日本男子に生まれけり。
電車での熟睡を可能にするには、少なくとも 2つの条件がある。どえらく長い乗車時間と、車内の治安の良さだ。日本は、この 2つの条件が満たされた希有な国である。ただ、治安がいいのは嬉しいが、乗車時間が長いというのは、決して喜ばしいことではない。
ただ、いくら治安がいいと言っても、荷物を網棚に載せたまま熟睡するのは考え物だ。盗まれるおそれがあるだけじゃなく、降車駅でハッと目が覚めたとき、あわてて自分の荷物を忘れて飛び降りる危険性もある。
私はどんなに熟睡しても、降車駅を過ぎて寝過ごすということは滅多にないのだが、一度だけとんでもない寝過ごし方をしたことがある。
新橋から有明(今は豊洲まで行ってるらしいが)に行く「ゆりかもめ」で、国際展示場正門(有明の一つ手前)まで通勤していた頃の話である。仕事が終わってから同僚と一杯飲み、8時半頃に新橋行きのゆりかもめに乗ったまま、すぅっと眠りに落ちた。
ふと目を覚ますと、ゆりかもめは終点新橋のホームにさしかかったところである。私は思わず自分自身を褒めた。「おぉ、どんなに酔っぱらっても、新橋に着く直前に、こうして自然に目が覚める。我ながら立派なものではないか」
ところが、周囲の様子がどうもおかしい。8時半にゆりかもめに乗ったのだから、せいぜい 9時頃のはずなのだが、どうみても深夜モードに近い雰囲気がある。はっとして時計を見ると、10時半を過ぎていた。
どうやら、新橋-有明間を、1往復半してしまったようなのである。ああ、人情紙の如し。私なら、終点で目が覚めずに眠りこけている人を見かけたら、ちゃんと起こしてあげるんだがなあ。
ちなみに、眠りこけている女性を起こしてあげるには、ちょっとした注意が必要である。下手に肩をつついたり揺り動かしたりしたら、「キャ!」 なんて悲鳴を上げられるおそれがあるからだ。そっと声をかけようとして顔を近づけるだけでも、変に誤解されたら面倒だし。
私はそんな時、決して立ち止まらず、通り過ぎる瞬間に、女性の頭の後ろの窓枠を正拳突きで 「ドン!」 と叩くことにしている。女性がはっとして目を覚ました時には、私は既にその場にいない。私の正拳突きの音でも目が覚めない女性までは、面倒見切れない。
そういえば、私がいつも乗車する 8時 *分取手発上野行きの快速電車の 5~6両目では、時折ものすごいいびきが聞こえてくる。それは本当に大音響といっていいレベルで、私だったら自分自身のいびきにびっくりして、飛び起きてしまうだろうというぐらいのものだ。
そして、ある日、わたしはその大いびきの音源をこの目で確認することができた。それは信じられない光景だった。体重 120キロほどはあろうかという大男が、つり革にぶら下がり、立ったままで大いびきをかいていたのである。
これは、電車内熟睡大国の日本といえども、そうそうお目にかかれない超絶技だろう。
| 固定リンク
「比較文化・フォークロア」カテゴリの記事
- 日本人は「赤・青・白・黒」以外の色のコンセプトが薄い(2021.04.06)
- 「太陽が赤い」というのは日本人だけということについて(2021.04.05)
- バレンタイン、スイートピー、スイーピーの三題噺(2021.02.13)
- キムチを巡る中韓対立(2021.01.20)
- 神道式の結婚式の歴史は案外新しい(2020.12.04)
コメント
>ただし、私の行った大抵の国では、「次は○○」 なんて車内案内はしてくれない
米国のNYからのノーザンラインでは、一応、アナウンスしてくれるんですけれど、1回だけだし、知らない駅名はリスニングしにくい。
車掌って、わざと?わかりにくく発音する悪癖がある。(笑)
特に夜の列車に乗ると、駅に照明がほとんど無いから困る。
ポーランドで乗り越ししたことがあります。
夏で避暑地からワルシャワに帰ってきたんですが、ワルシャワの駅に停車した時に、わかっているのに乗り越し。
と言うのも、欧州では大都会には駅が複数ある。
そのワルシャワ駅は、私にとってなじみの無いワルシャワ駅だったんで、気がつかなかったんです。
夜の東欧で、ワルシャワへ帰着するのは大変でした。
投稿: alex99 | 2006年11月 3日 12:01
alex さん:
>車掌って、わざと?わかりにくく発音する悪癖がある。(笑)
確かに。日本でもそうですよね。
山手線には、以前とても訛りのある車掌さんがいて、「つぐは、うぃの」(上野) とか 「おかつまつ」(御徒町) とか言ってました。
私はこの車掌さんが好きで、乗り合わせると嬉しくなってましたけど。(^o^)
>と言うのも、欧州では大都会には駅が複数ある。
そうですね。何でもかんでも東京駅に集約したがるのは、ちょっと変ですよね。
>夜の東欧で、ワルシャワへ帰着するのは大変でした。
想像するだに大変そうですね。ご苦労様でした。
私は東欧は一度も行ったことがないんですが、ぜひ行ってみたい地域の一つです。
仕事の上では縁の薄い地域ですので、自腹で行くしかないでしょうね。いつ行けるかなあ。
投稿: tak | 2006年11月 3日 15:54