歴史的パリの夜と、ノロウィルス疑惑
ノロウィルスによる感染性胃腸炎が大流行しているのだそうだ。毎年この季節になると取りざたされるが、今年は 81年の調査開始以来、患者報告数が最高になっているらしい。
81年といえば、私も牡蠣を食ってひどい目にあったことを、急に思い出した。あれは確か、5月だったのだが、ノロウィルスのせいかなあ。
1981年の 5月、私は仕事で初めて外国旅行というものをした。ドイツのフランクフルトに 5日間ほど滞在し、夜行列車でパリに入った。パリの 2日目、私は同行の日本人数人と、レストランで生牡蠣をたらふく食ったのであった。
パリの牡蠣って、やたらと大きいのである。その大きいヤツにレモン汁をばしばしかけて、じゅるじゅると食う。はてさて、何個食っただろうか。多分、30個や 40個ではきかなかったろう。おいしかったなあ。
さんざん牡蠣を食ってレストランを出ると、パリの街中は大騒乱状態だった。車という車がクラクションを鳴らしっぱなしで走り周り、歩道は浮かれた人たちが大騒ぎしている。いつもの気取ったパリとはまったく様相が違う。
同行の日本人連中は、「一体何があったんだ?」と訳がわからん状態。そういえば、フランスはその日、大統領選挙だったはずだ。
「こりゃ、きっと、ミッテランが勝ったんじゃないの? ジスカール=デスタンは、大分飽きられちゃってたみたいだしさ」
というわけで、歩道で浮かれているパリのオッサンに聞いてみた。といっても、私はフランス語ができないから、まず 「エレクシオン?」、そして親指を立てて 「ミッテラン?」、で、下に向けて 「ジスカール?」
すると、オッサン、抱きつかんばかりに大喜びで「ウィ、ウィ、ウィ!」と叫ぶ。ふむふむ、なるほど、ミッテランが勝ったらしい。おぉ、どうやらフランスの歴史的瞬間に立ち会ってしまったようだぞ。
そのオッサン、フランス訛りのすごい英語で、「アー・ユー・ア・ソシアリスト? (お前、社会主義者か?)」ときた。(ミッテランは社会党第一書記だった)
「ノン、ノン」 と答えてはみたものの、そのままでは済まされそうにないから、"But, I hate Giscard." (でも、ジスカールは嫌いだよ)と言うと、本当に抱きついてきた。あの夜、パリジャンは私の嫌いな気取り屋の集まりではなく、まるで、ニューヨークのハーレムにでもいるようだった。
で、その夜はその後にまたひとしきり酒を飲んで、かなり酔っぱらってホテルに帰ったのである。酔っぱらいすぎて、吐き気がしたことは覚えているが、そのまま眠ってしまった。
翌朝、胃がむかむかする。いかん、完全に二日酔いだ。もうろうとした頭でスケジュールをこなす。そして夕方頃から、ひどい下痢が襲ってきた。もう、どこにも出られず、ホテルの部屋(のトイレ)に籠りっぱなしである。
翌日は飛行機に乗って、帰国しなければならない。下痢が治まらなかったら、どうしよう。
しかし、帰国の朝は、何事もなかったように爽快な気分で目が覚めた。下痢はすっかり治ってしまっている。で、無事に日本に帰って来れたのでる。
私はこれまでずっと、あれは単なる二日酔いで腹を壊してしまったのだと思っていた。しかし今思えば、ノロウィルスだったのかもしれない。どちらだったのか、今となっては謎のままである。
ところで私は、パリジャンは「うんこ強い」と、あちこちで言ったり書いたりしている(ここでも書いている)。 事実、パリの歩道は犬の糞だらけだし、ベルサイユ宮殿にはトイレが少なかったので、ルイ王朝の貴族は、庭で垂れ流しをしていたらしいし。
私がことさらにパリジャンのうんこ強さを強調するのは、あの夜のトラウマのせいもあるのかもしれないと、今気付いた。
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コメント
いや……呪う居留守じゃないノロウィルスとか二日酔いとか言う以前に、生牡蠣30~40個はどう考えても食べ過ぎかと(笑)
投稿: 山辺響 | 2006年12月15日 11:02
山辺響 さん:
>生牡蠣30~40個はどう考えても食べ過ぎかと
私もそう思います。散財でした。
(あのころは、若かったのね ^^;)
投稿: tak | 2006年12月15日 11:09