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2007年1月15日

個別と体系

近頃、定年退職目前、あるいは直後の団塊の世代から、パソコン操作を教えてくれろと頼まれることが多くなった。

悠々自適の生活をするにしろ、再就職するにしろ、インターネットぐらいできないと、自分の可能性が狭まるという危機感は、多くの団塊の世代が抱いているらしい。

そしてパソコンを始めたばかりの超初心者であるオッサン連中は、私みたいな者が身近にいると、かなり心強く思ってしまうらしいのだ。

「いやあ、tak さんみたいな人が身近にいると、困ったことがあったらすぐに聞けるから、本当に助かるよ」
「パソコン上達への最も手っ取り早い道は、身近に何でも聞ける人がいることだっていうからねぇ」

だがしかし、ちょっと待てよと、私は言いたいのである。そりゃあ、聞かれたら教えないでもないが、そう安易に何でもかんでも聞いてきたりしないでもらいたいものなのだ。こっちだって、そうそう暇人じゃないのだから。

それに何でもかんでも聞きゃあいいなんて、安易なことを考えているオッサンというのは、何度教えても、三日も経たないうちに、同じようなことを聞いてくるのだ。いい加減にしてもらいたいのである。

私はずっと、彼らは聞いた端から忘れてしまうのだと思っていた。だが、それはどうも違うようだと最近気付いたのである。だって、彼らは一度教えたことは、こちらが苦笑したくなるほど馬鹿ていねいにメモして、パソコンラックに貼り付けたりしているのだから。

聞かれる方は「それは、こないだ教えたばっかりじゃん」とか 「ほら、そのパソコンラックに貼ってあるじゃん」とか、つい言いたくなってしまうのだが、聞く方は「こないだ聞いたことと、これとは別」と思っているようなのだ。

どうやら彼らは、ウィンドウズというものを「システム」とか「メソッド」とかいう形で理解しているのではないらしい。いくら教えても、その知識は「体系」 ならずに「個別」にバラバラのままなのだ。

極端にいえば、テキストのコピー&ペーストと、画像のコピー&ペーストと、ファイルのコピー&ペーストは、それぞれ別モノだと思っているのである。いや、冗談じゃなく。

それで、うんざりした私は、「自分で調べた方がいいですよ」と薦めるのである。これは別に邪険にしているわけじゃない。

わからないことがあれば、マニュアル本をひっくり返して、とことん調べる。とにかく、泣きながらでも調べる。初めのうちは、ドンピシャリの回答にはなかなか行き着かない。しかし泣きながら調べているうちに、なんとかわかってくる。

この「なんとかわかってくる」というのが大切なのだ。一つのことを調べているうちに、行きがけの駄賃で、関連するいろいろのことがわかってくる。ものごとというのは、個別に捉えてしまうといくら覚えても覚えきれないが、「体系」として捉えれば、案外シンプルなのだ。

そしてそのうちに、「ウィンドウズというやつの常套的なやり口」(つまり、「システム」とか「メソッド」とかいうもの)が見えてくる。「なんだ、こいつ、案外単純なやつじゃんか」

そうなれば、別に人に聞いたりなんかしなくても、大抵のことは直感で操作できるようになる。コピー&ペーストという操作は、テキストだろうが画像だろうがファイルだろうが、みんな同じなのだとわかるだけで、大した進歩である。

なにしろ、私をうんざりさせずに済むのだから。

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パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
そういうタイプには年齢問わず遭遇しています。
パソコンに限らず彼らには「取扱説明書を読んで理解する」ことができませんでした。彼らは特定の単語に思考がとらわれて、contextを捉えることができないからです。なので、大量の本来不要な努力をして「オレmethod」を獲得しており、必要な場合でもそれを修正するのは不可能です。
思考が「点」に固定されてしまうのは、統合失調症の特徴のひとつであったと記憶するのですが、統合失調症と診断される人が全人口の1%いるはずなので、境界領域の人は10人に1人ぐらいいるのかもしれません。
私より遥かに博学な方に意見するようで我ながら厚かましいと思うのですが、詰る話、その手の人とは距離を置く以外心の安寧を得ることはできないというのが私の結論です。

投稿: あ~る。 | 2007年1月15日 02:39

左様ごもっと!耳が痛い・・・!
泣きながら説明書と戦え!!仰せの通り!
団塊の世代の走り的年齢のわたくし!反省大!であります!

投稿: 歩遅子 | 2007年1月15日 12:20

逆に手取り足取り教えるのが好きな人もいますが、
自分は手取り足取り教えられるのは苦痛だと思うのです。
小学生の頃、ピアノを習った事があるのですが、
母が自分の手の上に手を重ねて弾いて覚えさせようとした時は、
辟易したものです。
パソコン教えて君の人はお話から察するに几帳面で大変真面目な方なようなので、
そこを褒めてあげればすいすい伸びると思われます。
どうすればいい?と聞かれたら、黙って聞いてあげれば自分で答えを言いますよ(笑)

投稿: 夜の指揮者 | 2007年1月15日 18:51

あ、私は、やたらとメモとろうとする人を「メモの人」と分類して(そのまんまの名称ですね)います。いつまでも理解しないタイプの人ですね。
どうやらそのタイプの人は、目の前にある物に直面できないようなのです。だから懸命にメモをとる。次にその物を扱う時も、メモした小っちゃいノートを見るばかりで、そのもの自体にはあまり注意を向けない。
あるいは、こちら(教える側)の言うことを、「すべて重要なことである」と思い込んでいるフシもあります。全部メモするんで、うっかり冗談も言えない。
疲れます。疲れますので、そのタイプの人には教える前に一言、釘さしておきます。「ゴチャゴチャ考えずに目の前にある物を見てくださいな」と。あ、もう一言、メモとる暇があるならこっち見て話を聞け、と。
過去の記憶を頼りにして、現時点の物を見ずに、歳とって記憶力が衰えたと思い込んでいる人でも、メモを取らせずに目の前の物に触れさせるのはわりと効果がありますね。

投稿: 江都屋黄金丸 | 2007年1月15日 19:38

あ~る。さん:

>彼らは特定の単語に思考がとらわれて、contextを捉えることができないからです。

なるほど、なるほど。確かにその傾向はありますね。
単なる言葉に引っかかって、その先に進めなくなったりしますね。

>統合失調症と診断される人が全人口の1%いるはずなので、境界領域の人は10人に1人ぐらいいるのかもしれません。

ほほう。
まあ、そこまで大袈裟じゃないかもしれませんが、「心的傾向」 としてなら、ありえるかも。

投稿: tak | 2007年1月15日 20:33

歩遅子 さん:

私も、MS-DOS から Windows 3.1への移行期などは、「ひーん!」なんて言いながら、マニュアル本をひっくり返していたものです。

当時、Windows は世の中に出たばかりで、全員が初心者なので、自分で何とかするしかありませんでした。

あのときの 「ひーん!」 が、今の財産です。

投稿: tak | 2007年1月15日 20:36

夜の指揮者 さん:

>パソコン教えて君の人はお話から察するに几帳面で大変真面目な方なようなので、
>そこを褒めてあげればすいすい伸びると思われます。

ここで言ってるのは、特定の個人ではなくて、複数の人間の共通項をばっくりとくくっているので、「几帳面でまじめ」 ということで言えば、その通りの人も、そうでない人もいます。

>どうすればいい?と聞かれたら、黙って聞いてあげれば自分で答えを言いますよ(笑)

う~ん、そうならいいんですけどね ^^;)

投稿: tak | 2007年1月15日 20:39

江都屋黄金丸 さん:

>あ、私は、やたらとメモとろうとする人を「メモの人」と分類して(そのまんまの名称ですね)います。いつまでも理解しないタイプの人ですね。
>どうやらそのタイプの人は、目の前にある物に直面できないようなのです。だから懸命にメモをとる。次にその物を扱う時も、メモした小っちゃいノートを見るばかりで、そのもの自体にはあまり注意を向けない。

かなり核心をついた指摘だと思います。

「そんなにメモとってるくせに、どうしてモノにできないんだ?」 と言いたくなるような人って、パソコン操作に限らず、いますね。

メモった内容が、自分の中で身体化できず、いつまでも 「外部」 なんでしょうね。

>あるいは、こちら(教える側)の言うことを、「すべて重要なことである」と思い込んでいるフシもあります。全部メモするんで、うっかり冗談も言えない。

それも、あるある! 真面目すぎて、全体が見えない人。

尾車親方の講演で、「相撲の世界では、『無理偏』 に 『げんこつ』 と書いて、『兄弟子』 と読ませるくらいですから …… 」 というのを聞いて、 「漢和辞典で調べてみたんですが、『無理偏』 というのが、いくら調べてもないんで、どんな字か教えていただきたいと …… 」 と電話してきた人もいます。
参照: http://homepage3.nifty.com/tak-shonai/y_cracks/yc03/c38.htm#17

「それは冗談なんで…」 と説明しても、「そんな、冗談なんて言われても困りますよ!」 と、半分怒ってました。
この手の人は、扱いに困ります。

まさに、メモなんか取らずに、フツーにリラックスして聞いていれば、ちゃんと笑うべきところで笑えたのに。

投稿: tak | 2007年1月15日 20:53

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