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2007年1月 7日

マグロにイワシ

「鮪の刺身を食いたくなったと/人間みたいなことを女房が言った」と、詩人・山之口貘は「鮪に鰯」の冒頭で呟いたが、金があろうがなかろうが、マグロはだんだん食いにくくなる。

私はあんまりマグロに思い入れがなくて、イワシの方が好きというぐらいのものなので、世の中が何でそんなに騒ぐのかわからない。

私は寿司でもあんまり「赤ネタ」は食わない。好きなのはイカとホタテとイワシ、アジといった、地味な系統だ。いくら近頃イワシが高くなったとはいっても、依然として経済的な好みなのである。

マグロなんて、冷凍を下手に解かしたようなヤツを出されると水っぽくてどうしようもない。近頃では、まともそうな居酒屋などでもこの類のマグロが出てくる確率が高いので、油断がならない。

さらに「大トロ」 なんてのは高いばかりで、口の中に入れると本当に舌の上ですっと溶けてしまうのが、どうも気に入らないのである。その食感を珍重する人もいるが、私は「そんなのがありがたかったら、綿菓子を食え」と言いたくなってしまう。

それは、霜降り牛肉にも言えることで、私はステーキとかしゃぶしゃぶなんてあまり食う気はしないけれど、どうせ食うならあんなんじゃなく、歯ごたえのあるやつを、わしわし食いたいのだ。病人のおかゆみたいな食い物は、まっぴらなのである。

世の中には、マグロが気軽に食えなくなるのを妙に惜しむ人がいる。彼らは食卓にあの赤身の刺身があるというだけで、心が豊かになるらしい。その気持ちはわからなくもないけど、私としては、「別に、なくたっていいじゃん」としか思えないのである。

山之口貘の「鮪に鰯」は、ビキニ核実験に反対する思いを詩にしたものだといわれるけれど、私はずっと、「マグロなんて、別に食わなくていいじゃん」という詩なんだと思っている。

本当に本当に、イワシの方がずっとおいしいと思うし。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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グルメ・クッキング」カテゴリの記事

コメント

お邪魔します、がんなむぅです。

 山奥の温泉の、宿泊施設の夕食で出てくるメニューに、時々“海のもの”が乗っかってます。

 そうです。冷凍マグロ様です。
 精一杯、料理でもおもてなしをして下さっているのでしょうが、刺身のつまにまで“解凍液”による着色が始まっています。

 私は魚好きな方なので、マグロもいわしも大好きです。

 ただ、グルメ番組の“マグロ特集”みたいなので、「大トロの握り寿司」を美味しそうに召し上がる映像が流れますが、庶民的なおすし屋さんで同じ様なことを試みると、生臭くて脂臭くて、とてもとても…。

 よっぽど、山奥の冷凍マグロの方が、心がこもってます。

投稿: がんなむぅ | 2007年1月 7日 10:15

がんなむぅ さん:

>精一杯、料理でもおもてなしをして下さっているのでしょうが、刺身のつまにまで“解凍液”による着色が始まっています。

おぉ、何という臨場感たっぷりの描写!
マグロの刺身というのは、旅館の食事の必須アイテムってわけでもないでしょうにねぇ。

でも、食いますよ。私も。
出された物は何でも食べます。
おいしい物はおいしく、
そうでなくても、それなりに感謝して。

投稿: tak | 2007年1月 7日 20:07

懲りずにお邪魔します。

 解凍の表現に、お褒めのお言葉を頂戴し、まっごど恐縮です。

>出された物は何でも食べます。
 
 はい。「いただきます」、「ごちそうさま」です。

>そうでなくても、それなりに感謝して。

 高級なお店のことは、庶民である私が知る由もございませんが、中途半端な回転寿司屋さんなどで見るお魚は、身もグスグスにされちゃった『いわし』とか、マヨネーズたっぷりにしないと臭みが感じられる『サーモン』とか、調理人のプライドと責任を放棄しちゃっている店もありますからねぇ…。せめて食材の供養で食べてやらないと…。

 うん、マグロは山奥に限る。    (←おっと口がスベッた)

投稿: がんなむぅ | 2007年1月 8日 12:38

>せめて食材の供養で食べてやらないと…。

>うん、マグロは山奥に限る。    (←おっと口がスベッた)

わはは (^o^)
山奥のマグロは、もの悲しい風情がいいですね。

心づくしというべきか、あるいは、単なる間に合わせなのか。

投稿: tak | 2007年1月 8日 17:58

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