晩秋から早春の庄内は、白鳥だらけ
あまり知られてないことだが、私の故郷、酒田市は、日本最大の白鳥飛来地なのである。毎年冬になると、約 1万羽の白鳥がやってきて最上川河口で越冬する (参照)。
白鳥たちは、日中はあちこちの田んぼに出張して餌をあさるので、庄内の冬の田んぼは、白鳥だらけになる (参照)。
白鳥が酒田に来始めたのは、記録によると昭和 41年からのようだ。最初の年は、わずかに 7羽だった。ところが、年ごとにどんどん増えて話題になり、酒田市民も最上川河口に白鳥見物をしにでかけるようになった。
私が高校 2年の頃に見に行った昭和 45年は、記録では 430羽が飛来したことになっている。今とは比べものにならない少なさだが、それでも、当時はものすごい数に思えた。考えてもみてもらいたい。一度に 100羽以上のオオハクチョウを見る機会なんて、滅多にないだろう。
それが今では約 1万羽である。私は最近は最上川河口まで行って見たことがないので、なにしろ想像を絶してしまう。
私の高校時代、最上川河口にびっしりと浮かんでいる白鳥たちは、土地の人が茶殻などの餌を撒いてくれる時間になると、ますますすし詰め状態になり、我先に餌にありつこうとしていた。
それはそれはすさまじいもので、ぴゃあぴゃあうるさく鳴きながら、阿鼻叫喚の様を呈する。水面にエレガントに浮かぶ白鳥のイメージは、一瞬にして吹っ飛び、思わず「畜生の浅ましさ」なんて言葉が脳裏に浮かんだりする。
それでも、遠くからみる白鳥はやはり美しく、鳴きながら群れをなして空を飛ぶ姿は、何度見ても感動的なほどだ。冬の酒田の名物は、地吹雪と寒鱈汁と白鳥である。この冬は、地吹雪はさっぱりだったが。
昭和 46年、高校を卒業して東京で大学生活を始めようとしていた春、白鳥たちも酒田からシベリアへの遠い旅路に発ち始めていた。
餌をあさりに行くのとは明らかに違う大きな編隊を組んで、コウコウと鳴きながら飛んでいく白鳥たちの姿に、自分自身の旅立ちを重ね合わせて見送っていたことを、私はまるで昨日のことのように憶えている。
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コメント
旅立ち・・・に涙しました!
キッパリした<決意・惜別>の姿!!
あ~~~、歳の所為でしょうか・・・!
投稿: 歩遅子 | 2007年2月17日 01:59
歩遅子 さん:
>キッパリした<決意・惜別>の姿!!
実は、それほどキッパリもしてなかったんですけどね。
それでも、後に映画 『アメリカン・グラフィティ』を見たとき、
あの白鳥を見送った頃のことをいろいろ思い出して、
自分でもちょっとジンとしちゃったものでした。
「庄内グラフィティ」 みたいな頃が、あったのですね。
投稿: tak | 2007年2月17日 22:49