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2007年3月26日

「産む機械」というビジネス

代理出産がちょっとした話題になっている。世論的には、「法整備が現実に追いついていない」として、代理出産という行為そのものはあまり疑問視されていない。

しかし、私はこれをかなり疑問に思っている。それは、女性を「産む機械」とする奇妙な「ビジネス」と化しているからだ。

「代理出産」という行為を、単に「医学的に可能だから」というだけで、簡単に認めてしまっていいのだろうか。私は「絶対反対」というわけではないが、現状としては、もっと慎重な態度で吟味すべきだと思っている。

まず、「代理出産」というシステムにおいては、出産を担当する女性は、文字通り「産む機械」として機能しているということが挙げられる。柳沢氏の「産む機械発言」に対して、あれだけヒステリックに反応したマスコミやフェミニスト達が、「代理出産」に関してはほとんど疑問視していないことに違和感を感じるのは、私だけではないようだ(参照)。

それに、この「産む機械」を利用するには、かなりの費用が必要になるようだ。「代理母ドットコム」というサイトがあって、これを見ると、代理出産というのは、ひとつのビジネスとして成立しているように見受けられる。

代理出産には、無償のボランティアの場合もあるが、多くの代理母は報酬を目当てに体を売っている。身内などの場合を除けば、何の得にもならないのに、自らの子宮を10ヶ月近くも無報酬で提供する女性など、ほとんどいないだろう。

まあ、フツーの出産だってかなりのビジネスと関連しているわけだから、目くじら立てる方がおかしいという人もいるかもしれないが、私の感覚からすると、代理出産ビジネスというのは「かなりフツーじゃない」という気がするのだ。

上述のサイトには、代理出産の費用が示されている(参照)。どのくらいかかるかというと、こんな感じだ。

  • エ-ジェンシ-料金 $30,000
  • 基本料金 $20,000~$35,000
  • 代理母へ支払う必要経費 $2,000
  • 妊婦服代(妊娠20週に達した時) $1,000
  • モック・トランスファ-に対する報酬 $250
  • トランスファ-(受精卵移植)に対する報酬 $1,000
  • 帝王切開をすることになった際の追加報酬 $1,500
  • 多胎出産に対する追加報酬(1人増える毎に) $5,000
  • 代理母が就業している場合、妊娠により休む際、その期間の給料が加算される。
  • 弁護士費用(依頼者、および代理母の弁護士)約 $6,000 ~$7,000
  • 健康保険(代理母にかける保険)約 $300/月
  • 体外受精及び受精卵移植にかかる医師の費用 $10,000~$15,000
  • 薬代 $5,000
  • エスクロ-フィ- $800
  • バックグランドチェック $150~$200
  • サイコロジカル・エバリュエーション 約 $600
  • 依頼者のサイコロジストによるカウンセリング費用 $500
  • 代理母およびその家族のためのカウンセリング/サポートグループフィー 約 $1,500
  • ドクターによる代理母及びそのパートナーの健康診断 約 $1,000
  • 代理母及びそのパートナーの血液検査費用 約 $800
  • 大ざっぱに計算しても、総額で最低でも 8万ドル以上。日本円にしたら、1000万円以上かかるということだ。

代理母への支払いだけをとっても、基本料金として、2万ドル~3万5000ドル (約 240万~420万円) 、その他付帯料金として、大体 3000ドル、そして、休業補償的に、休んでいる間の給料まで支払わなければならない。

代理母が仕事を持っている場合は、その支払いだけで、500万円以下ということにはならないだろう。そうなると、総額は 1000万円を遙かに超える。一説には、支払総額の平均は 1500万~1700万円だという。さらに、当事者のアメリカでの滞在費用などを入れたら、相当なコストになる。

もし、代理出産ではなく養子を迎えていたとしたら、たまにはささやかな贅沢を許したとしても、高校卒業ぐらいまでは十分に養える金額に相当すると思う。

つまり代理出産というのは、べらぼうな費用がかかるということで、相当な金持ちでないと無理なシステムだということだ。誤解を恐れずに言えば、「自分たちの遺伝子をもつ子供を、大金で買う」 という、かなりエゴイスティックな行為ということになる。しかも、下手をしたら生命の危険さえ伴う「代理母」という「産む機械」を金で買って。

一方では、世の中には里親を必要とする不幸な子供が大勢いるという現実もある。「親の必要な子」と「子が欲しい (「必要」ではなく、あくまでも「欲しい」)親」 とのマッチングには、絶望的なギャップがあるようだ。

【追記】

昨年秋に発表されたものだが "「美談」 ではすまない代理出産ビジネスの実態" という記事が見つかったので、参考のためリンクしておく。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

時間が経過しましたが、この記事のトラックバックを書き、送信しました。けれど、私が不得手なのか、つながりませんでした。一応ご報告します。

投稿: KEICOCO | 2007年4月 9日 10:08

KEICOCO さん:

レスし忘れてました。ごめんなさい。

今回のケースでは、どうしても自分たちの DNA を残したいという欲望があるんでしょうけど、そのあたり、私はよくわからないんです。

DNA を残したいから、子供を産むのか?
そこまで執着するのは、物欲、性欲、食欲などが強すぎるのと同じことだという気がします。
私は、DNA がつながるというのは、あくまで付随事項だと思うんですよね。
授かりものなんだから、養子でもいいじゃないかと思うんです。

ついでに言えば、私は他人の臓器をもらってまで長く生きようという気もありません。

投稿: tak | 2007年4月12日 12:52

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