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2007年4月 1日

地方空港とハエ取りリボン

「ハエ取りリボン」 という商品をご存じだろうか。リボン状の粘着テープを天井から吊し、飛び交うハエをくっつけてしまうものだ (参照)。

高度成長期以前は日本中で普通に使われたが、最近は滅多に見られなくなった。しかし、ここ 10年ほど、ハエ取りリボンの生産量が再び増加し、隠れたヒット商品となっている。

先月、某社の社内報企画で、衛生と環境保全の関連をテーマにした特集に関わり、大阪和泉市にある安政 3年創業の老舗にして国内シェア 45%の最大手、大日本蝿取紙本舗(株) の取材をして、このことを知った。

ハエ取りリボンは人体に害を与えない害虫駆除グッズとして、再び脚光を浴び始めているというのである。

取材に応じてくれた同社の服部専務によると、ハエ取りリボンの需要は 10年ほど前に底をつき、一時は廃業寸前まで追い込まれたが、それ以降はV字回復的な持ち直しで、とくにここ 2~3年は、1年中生産ラインをフル稼働させても需要に応じきれないほどだという。

この時ならぬ需要増加の最大要因は、地方空港が増えたことである。最近、不必要なほどの数の地方空港が次々に開港しているが、そのほとんどは、典型的な田園地帯にある。

その周囲の田んぼや畑は、最近有機農業の台頭によって、鶏糞や堆肥などの自然肥料を大量に使う傾向がある。有機米や有機野菜は、市場で高値で取引されるため、今や農家にとって最も重要な作物になっているのだ。

このため、空港周辺では春から秋にかけて自然肥料に群がって大量のハエが発生する。しかしそれを駆除しようにも、殺虫剤を大量散布するわけにはいかない事情がある。

それは、空港利用者の健康を守るためということもあるが、最大の理由は、空港で殺虫剤を大量使用すると、周囲に漏れだしてしまい、近隣の農家が、ドル箱の 「有機米」や 「有機野菜」のブランドを使えなってしまうことだ。つまり、農家の営業妨害になるのである。

しかし、空港ビル内をうなりを立てて飛び交うハエの大群に手をこまねいているわけにはいかない。そこで窮余の一策として考えられたのが、ハエ取りリボンを大量にぶら下げるという方法だったのである。

春から秋にかけて地方の空港を利用すると、真っ黒なリボン状のものが、空港ロビーの天井から何本もぶら下がっているのに気付くだろう。あれがハエ取りリボンである。真っ黒に見えるのは、表面にびっしりとくっついたハエなのだ。

私の故郷の庄内空港に問い合わせたところ、年間のハエ取りリボン使用量は、約 240ダース、金額にして 100万円以上になるという。月に 2度の交換作業は、空港職員総出で半日を要するそうだ。

ざっと計算すると、日本中で生産されるハエ取りリボンの 80%以上は、地方空港の需要ということになるようだ。世の中、何が幸いするかわからない。

こうして一時の危機を脱したハエ取りリボン業界だが、その生産は機械化が遅れており、しかも若年労働者が不足しているため、最近では逆に、供給不足が恒常的に続いている。地方空港では、端境期の冬の間に大量に買い占める動きを見せているほどだ。

大日本蝿取紙本舗では昨年、中国上海に生産工場を移転し、生産を拡大しようと計画したが、中国ではハエは殺虫剤の大量散布で駆除すればいいという考えが支配的なため、そんな産業を導入しても自国の利益につながらないと判断した模様で、許可が下りなかった。

服部専務は、「中国でもハエ取りリボンの有用性に気付くぐらいにならないと、地球規模での環境汚染は続く」とコメントしている。

ちなみに九州地方の空港では、今年最初のハエ取りリボン設置を、今日 4月 1日に行なうそうだ。そうか、なるほど。

【4月 2日 追記】

えぇと、恐れ入りますが、これは改めて申し上げるまでもなく、エイプリルフールのネタということで、ご容赦願います。

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コメント

お邪魔します。がんなむぅです。

 10年ほど前の飲食店店長時代に、殺虫剤が使えないので、店の中で使ってました。

 当時若い店員(現在は30前のいいお父さんもいます)は、使用目的も使用法も知りませんでした。(当然といえば当然ですが…)

 ハイトリと古新聞の筒っぽ(ハエ叩き)が、夏場の店内主要迎撃装備でした。

投稿: がんなむぅ | 2007年4月 1日 12:55

がんなむぅ さん:

サイドバーの 「最近のコメント」 にがんなむぅさんの名前を見たときは、「いくらエイプリルフールでも、あまりにも見え透いたネタを」 と、突っ込まれてるんだとばかり思ってしまいましたが…。

本文に、「古新聞の筒っぽ」 も加えておけばよかったと思いました ^^;)

投稿: tak | 2007年4月 1日 23:52

こんばんは、satoです。

うははは、知ってます知ってます。輪っかに指をかけてにゅるにゅると引き出すあれですよねー。あのにゅるにゅる感が楽しくて、何本も出したおぼえがあります。一度引っ張り出すと元にもどらないので、うちの台所には何本もぶらさがっていました。

投稿: sato | 2007年4月 2日 00:00

sato さん:

ハエ取りリボンは、sato さんのプチプチ・エアクッション替わりだったんですね。

投稿: tak | 2007年4月 2日 00:02

この週末PC環境になく、2日になってから読んだので、最後までしっかり「ふむふむ」と頷きながら読んでしまいました(涙)

投稿: 山辺響 | 2007年4月 2日 10:52

無念なり。

takさんの種明かしまで、気付いてませんでした。

その種明かしで、4/1がいとこの誕生日だったことに気付きました。

スマン、いとこ…。

投稿: がんなむぅ | 2007年4月 2日 23:28

がんなむぅ さん:

>takさんの種明かしまで、気付いてませんでした。

やっぱり ^^;)

ちょっと不安になったので、今日付の記事で誤解を解いておきました。

投稿: tak | 2007年4月 3日 07:45

山辺響 さん:

あれ、山辺響 さんのコメントには、昨日のうちにレスしたはずなのに、消えている。

失礼しました。

>最後までしっかり「ふむふむ」と頷きながら読んでしまいました(涙)

ネタにしては、あまりもっともらしい書き方をしすぎたかなと、反省しております。

来年からはもっと他愛もないネタにさせてもらいますので、ご容赦ください。

投稿: tak | 2007年4月 3日 09:52

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