「気の利いたおばちゃん」 が消える不幸
首都圏 JR 駅構内のキヨスクが今、危機的状況なんだそうだ。「近頃、キヨスクのシャッターが降りっぱなしだなあ」と思っていたら、要するに、売店のおばちゃんの人員整理が進んで、補充ができてないらしい (参照)。
そうか。この分では、世の中から「気の利いたおばちゃん」が消えてしまうのだろうなあ。
新聞と雑誌と、ペットボトルのお茶を買って千円札を差し出すと、コンマ数秒で代金と釣り銭を計算し、職人的な早業で釣り銭を的確に手渡してくれる、キヨスクのおばちゃん。思えば、彼女らはかけがえのない日本の財産だったのである。
翻って、今、首都圏の駅構内で増殖している 「New Days」 なるコンビニでは、たかが新聞と雑誌とペットボトルのお茶を買うだけで、レジに行列しなければならない。この程度の買い物でレジを打たなければならないから、支払いと釣り銭の受け渡しに手間取るのは当然のことである。
さらに 「New Days」のバイトのにいちゃんは、新聞をレジ袋に入れて手渡そうなんてことをする。ただでさえ私はレジ袋なしを心がけてるのに、新聞ごときをレジ袋に入れるなんてのは想定外のことなので、財布からコインを取り出している間に、レジ袋に入れられた新聞を押しつけられる。
思わず「あ、レジ袋、要らないから」と言うと、向こうは、「あ、失礼しました」なんてことになって、袋から新聞を取り出す。そんなこんなで、手間取ることおびただしい。
この感覚、何かと似ているなあと感じていたが、その正体に思い当たった。そう、蕎麦屋のおばちゃん、いわゆる 「花番」 さんである。
席の案内、注文の取り方、さりげなく新聞を持ってきてくれる気遣い、蕎麦湯を持ってきてくれる絶妙のタイミング等々、気の利いた花番さんのいる店でたぐる蕎麦は、至福の時をもたらしてくれる。
いくら蕎麦そのものはうまくても、バイトのにいちゃん、ねえちゃんしかいない蕎麦屋は、ストレスの元である。
「大盛り一枚ね!」と注文すると、「何の大盛りですか?」なんて聞いてくる。蕎麦屋で「大盛り」と言ったら、決まってるじゃないか。それを言うと、「はぁ、『盛りそばの大盛り』ですか?」 なんて、客の方が恥ずかしくなるようなことを言い出す。さらに、「蕎麦湯お願いね」というタイミングを、こっちの方が必死に気を遣って見計らわなければならない。
ああ、この国では「ちょっとした接客」という仕事が地滑り的に崩壊しつつある。高級割烹のようなトゥーマッチはいらないけど、単にてきぱきした気持ちのいい接客を求めようとて、それは得られない世の中になりつつあるのだ。
バーコードだの、ICチップだのの便利さと引き替えに、てきぱきした気の利いたおばちゃんという人間国宝を、我々は失いつつあるようなのだ。
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コメント
fujiokaです
気の利いたおばちゃんたちは何処に行ってしまったのか?についての考察
実はまだまだ絶滅したしまったわけではなく、そば屋や、スーパーなどでは彼女たちはバックヤードで、食べ物を作っています(いるはずです)。
レジなどは素人でもできるようになったけれど、料理を作ることにはちゃんとした人がどうしても必要です。
それに経営者や管理職は常にバックヤードにいるのですから、自分のストレスをためないためにも気の利いた人を自分の側に置いているのです。
もちろん絶対数が減っているから必要性の薄いところから情けない兄ちゃんねぇちゃんに代わってきていると言うことでもあります。
だけど気の利かないねぇちゃんを気の利いたおばさんに育てるのは実は小うるさい客だと思いますので、客として優しく厳しく彼らを育てるようにしたいものだと思います。
投稿: fujioka | 2007年4月16日 22:12
fujioka さん:
>そば屋や、スーパーなどでは彼女たちはバックヤードで、食べ物を作っています(いるはずです)。
確かに、あの弁当やお総菜なんかは、よっぽど手際がよくなかったら、あんな値段ではできないでしょうね。
>だけど気の利かないねぇちゃんを気の利いたおばさんに育てるのは実は小うるさい客だと思いますので、客として優しく厳しく彼らを育てるようにしたいものだと思います。
う~ん、小うるさいことを言うだけでは、単に 「うっせぇなぁ」 と思われるだけに終わりそうな気がします。
彼らには、よほどわかりやすく、懇切ていねいに教えてあげないと。
あ、でも、若いねえちゃんでも、とてもよくできた子もいますよ。
私がよく行く蕎麦屋のねえちゃんは、私がマイ箸持参なのを知っているので、初めから割り箸をもってきません。「その箸、素敵ですよね!」 なんて、単なるお愛想にしても嬉しいこと言ってくれたりします。
蕎麦湯をもってきてくれるタイミングもいいし。
投稿: tak | 2007年4月17日 12:59