データの背後にある見えない事実
厚生労働省研究班の調べによると、自殺した人や、しようとした人の 8割は、事前に家族や友人に相談していなかったという。そして、9割は最初の試みで死んでいる。(参照)
これによって「覚悟の自殺が多い」 と結論付けているのだが、このデータだけでは、必ずしもそうとは言い切れないと思う。
というのは、調査をしたのは、自殺を図って本当に死んでしまった人の遺族や関係者、そして自殺未遂者だけのようだからだ。これでは、自殺しようとは思ったが、事前に誰かに相談して、いい助言を得られたために自殺に踏み切らなかったという人のデータが、反映されていない。
自殺を考えたけれども、とても親身のアドバイスのおかげで未遂にも至らずに、頑張って生き続けてみようと思った人というのは、かなりの数に上ると思う。しかしそれはデータの背後に隠れて、見えない数字になっている。
だから、日本人が誰にも相談せずに一人だけで思い悩んで、「覚悟の自殺」を孤独に決行してしまう傾向があるとは、言い切れないだろう。
ニュースでは、「米国の研究では、自殺を図った人の約 2割が、その直前 1カ月間に精神科を受診しており、日本と大きな差があった」としている。これも裏から読めば、米国では 1ヶ月以内に精神科をj受診しても、自殺を思いとどまるに至らなかった人が 2割もいるということで、これはこれで大問題だと思う。
データというのは、解釈のしようでどんな結論でも導き出せる。ちょっと気をつけなければならない。
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コメント
お邪魔します。がんなむぅです。
会社組織に所属していた当時、日常の事象に対する作業員の安全確保の行動について、たった4回調査して『当事業所は7割5分から10割の達成率』として、報告書作ってました。
結果を読ませたい対象に応じて、解釈を誘導する様なセンテンスがくっついていることがあります。
最近、テレビで報道される『世論調査』には、その手法が色濃く反映されている気がしてなりません。
投稿: がんなむぅ | 2007年4月26日 15:59
がんなむぅ さん:
うぅむ、『当事業所は7割5分から10割の達成率』というのは、なかなかガンチクのある表現ですね。
最大限に好意的にみれば、「完全に近い安全」 で、逆にみると、「4回に 1回はヤバイかも」 ということでしょうか ^^;)
>最近、テレビで報道される『世論調査』には、その手法が色濃く反映されている気がしてなりません。
世論調査というのは、回答の選択肢の設定でどうにでもなるものだと思います。
投稿: tak | 2007年4月26日 19:16
世論調査というか、世論操作というか・・・
確率統計を少しでも学んだ者からすると鼻水が出そうな事を
平気で言いますからね。
・調査対象(母集団)の数量は充分に大きいか
・調査対象が既にある条件によって絞られていないか
・結果有りきの偏見がないか
・条件付けがおかしくないか
ぐらいは見なければいけません。
で、問題の調査から判ることですが
「亡くなった人のうち、未遂歴のある人は1割程度」
これは「自殺した人の内、それまでに見つかった事がある人が1割」
という事です。
何度も未遂をしているのに誰も気付かなかった、という場合もあります。
「センターに運ばれた未遂者1516人」
未遂者は、自殺に失敗した人です。
つまり、いい助言を得られた人だけではなく、
自殺を達成した人の声も反映されません。
つまり、母集団としては完全ではありません。
「亡くなった209人の遺族」
遺族の方々には酷な言い方ですが、裏を返すと
「自殺に気付かなかったか、止められなかった方」
とも言える訳です。
やはり、母集団としては完全ではありません。
こういった調査より、むしろ
「自殺を考えたことがあるが、自殺しなかった人は
どんな理由で自殺をしなかったのですか?」
の方が、よっぽどためになると思いますが・・・。
投稿: bono | 2007年4月27日 13:53
bono さん:
真っ正面からのご指摘、ありがとうございます。m(_ _)m
勉強になりました。
投稿: tak | 2007年4月27日 20:15