自転車の歩道通行
自転車の歩道通行を一部容認する道路交通法の改正案が、国会で審議中だ (参照)。
ただ、現実には都会の交通の激しい道路の歩道は、現状でもほとんど「自転車通行可」になっているような気がするのだが。そうでもないと、自転車がフラフラと車道を通行したら、危なくてしょうがないという印象だし。
今回の改正案では「標識がなくても小学生以下と、車道通行が危険と政令で認める人」は、歩道通行が可能になる。さらに路上駐車があったり自動車通行量が多かったりで安全に通行できない場合は、誰でも歩道通行が可能になる」ということになる。
かなりゴチャゴチャしてわかりにくい。「車の往来の激しい道路では、自転車の歩道通行がデフォルトに近いものになる」ということなのかというと、それは違うらしい。産経新聞の記事では、次のように表現されている。(記事中の 「井沢さん」 は、警察庁交通企画課の課長補佐、井沢和生さん)
「改正法案は自転車を車道に戻し、“歩行者で込んだ歩道では自転車を降りて押す” という原則を徹底することが目的」 と井沢さんは強調する。
自転車を車道に戻す方針を打ち出せたのは、民間監視員導入など取り締まり強化で、自転車の車道通行を妨げる違法駐車が減ったことも大きい。さらに「車道の自転車レーン設置の可能性も調査しており、この結果に基づいてレーン指定などを道路管理者と検討することになる」 とも。
つまり「自転車は車道を通るもの」というデフォルトを掲げ、なおかつ「混んだ道路では危ないから、自転車は歩道を通ってもいいけど、降りて押せ」ということのようなのだ。ああ、これって、超 「本音と建前」的運用である。きちんと守るのは、かなり大変だ。
車を運転するものの立場で言うと、自転車は歩道を通行してくれる方がずっと安心だ。交通量の激しい道路で、フラフラと危なっかしく車道を通行する自転車がいると、「まったくもう、歩道を通れよ!」なんて思ってしまう。そうした道路の歩道は、ほとんどが「自転車通行可」になっているし。
ただ、自転車が歩道を通行すればしたで、歩行者の立場からするとうっとうしいのだ。歩道を通行する自転車の多くは「歩道を通らせてもらってる」という意識がとても薄く、平気で「チリンチリン」とベルを鳴らして「そこのけそこのけ、自転車が通る」という態度である。
「本来なら歩行者専用の道を、お情けで拝借させてもらっている」という意識の全然ない人が、圧倒的に多いのだ。つまり、めちゃくちゃ図々しい。私はそんな自転車は横から蹴飛ばしてやりたい衝動にかられたりする。
私は以前、東京千代田区内の道路を自転車で通行する機会がよくあった。勤務するオフィスから、司法書士のオフィスまで中途半端な距離なので、自転車で行くのが都合よかったからである。
その場合、私はルートのほとんどで、迷うことなく歩道を通行した。車道を走ったりしたら、かなり危ない。しかし歩行者の往来の多いところでは、絶対に歩行者優先を徹底した。ベルを鳴らしたことなんて一度もない。前があくのを辛抱強く待ったものだ。
ただそんな場合でも、「自転車を降りて押す」なんて必要はない。近所の学校の下校時に重なり、歩道はかなり混雑することもあったが、時々片足をついて止まったり、ノロノロ運転をするだけで、基本的には自転車から降りて押すなんて必要はまったくなかった。
「混んだ歩道では自転車から降りて押して通行する」なんてことを杓子定規的に言い出したら、都会で自転車に乗るメリットなんてなくなる。歩行者が自転車という余計な重い荷物を引っ張るだけということになるからだ。
今回の道交法改正で、この「超本音と建前」があまり厳密に適用されないことを望みたいものである(まあ、厳密に適用しようったって、無理だろうが)。要するに、自転車がちょっと「分をわきまえる」だけでいいのだ。「自転車レーン」の設置なんて、難しい場合が多いだろうし。
【4月 24日 追記】
いっくんのお父さんから、とても納得できるトラックバック (参照) をいただいたので、うれしくなって、滅多にないトラバ返しなぞをさせて頂いた。
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コメント
うーん、わたしの意見はちょっと違います。
わたしは自転車1対歩行者9くらいの頻度で両方の立場ですが、
今一番「そこのけそこのけ」なのは歩行者だと思います。
都会の主要道路の歩道は、拡張され、歩行者と自転車の共有の通行帯となっていることが多いです。
そこでは自転車は「本来なら歩行者専用の道を、お情けで拝借させてもらっている」わけではないのです。対等に権利があるはずです。
(もちろん、交通弱者に対し傷つけないよう配慮は必要ですが)
きちんとそういう標識も出ていますし、自転車と歩行者のエリアはラインで区切られていたりします。
しかし、ほとんどの歩行者はそんなルール全くお構いなしです。
自転車の通行帯にまではみ出して、もしくは、単に知らないせいでしょうがわざわざ自転車の通行帯のほうを歩いている歩行者に対して、自転車は遠慮なく「チリンチリン」していい、いや、すべきだと思います。
交通整理の警察官も、そういう歩行者に注意すべきです。
歩行者が車道を歩いていたらクラクションを鳴らされるのです。それと同じです。
横断歩道だって見てみて下さい。本来歩行者が通っていいのは「横断歩道」であるゼブラゾーンの中だけです。
ゼブラの外側にある一本ラインの間は「横断歩道」にあらず、「自転車横断帯」なのです。
ところが、自分が自転車に乗っている時、そこを順当に通れたためしがありません。
歩行者が違反してはみ出しているくせに、本来そこが専用レーンである自転車が前から来てもよけようもしません。
そんな時はベルを鳴らしますが、おそらく「歩行者優先なのになんて偉そうな自転車だ!」くらいに思われていそうです。
そんなわけで、たまに自転車に乗るとちっとも進めないし、本当に歩行者には不愉快な思いをします。
左側通行しておきながら、おしゃべりに夢中で後ろも気にせず突然横っ飛びで自転車エリアの進路をふさいだりするのです。
そのくせ、ぶつかったらきっと自転車が悪者です。踏んだりけったりです。
わたし自身が歩行者の時(9割方そうです)の時は、きちんとルールを守ります。
声を大にして言いたい。幼稚園や小学校で習っているはずの、「歩行者のルール」を、
大人の歩行者にも今一度きちんと徹底すべきです!
そういうキャンペーンを張ってほしい!
熱く語ってすみません。 (^^;)
投稿: ach | 2007年4月19日 04:02
お邪魔します。がんなむぅです。
私の生活する地域は中途半端な田舎なので、歩行者様と自転車の共有の通行帯(きちっと仕切られているヤツ)はありません。
狭いと思える歩道に、『自転車通行可』の標識があるくらいで、そうでなければ車道の傍らにある、幅数十センチの「自転車通行帯」が通り道です。
空き缶やビニールごみ、砂埃が積層しているところなど、そんな僅かな自転車の通り道は、危険がいっぱいです。
投稿: がんなむぅ | 2007年4月19日 09:26
ach さん:
自転車と歩行者のエリアが、明確にラインで区切られているということは、「自転車レーン」が設定されているということですね。
そうした場合には、おっしゃるとおり、歩行者が自転車レーンを歩いたら、歩行者の方が無神経とか、あつかましいとかいうことになります。
しかし、そうしたレーンがなく、単に 「自転車通行可」 と表示されている場合は、「歩行者と自転車の共有の通行帯」 とか、「対等の権利」 とかではないようです。
http://www.sp.hkd.mlit.go.jp/news/bicycle/bicycle3.html#q2
ach さんは、通行レーンが明確に区別されているケースについておっしゃっているのだと思いますが、「歩行者と自転車の共有の通行帯」 との表現は、いずれにしても誤解を招きそうなので、念のためコメントさせていただきました。
投稿: tak | 2007年4月19日 12:58
がんなむぅ さん:
>空き缶やビニールごみ、砂埃が積層しているところなど、そんな僅かな自転車の通り道は、危険がいっぱいです。
確かに、それは言えそうです。
車道に自転車レーンを設定したら、そうした危険があるでしょうし、歩道に設定したらしたで、ach さんのご指摘のように、歩行者が無神経になだれ込むでしょうし、運用は難しそうですね。
投稿: tak | 2007年4月19日 13:17