動物的ヘジテーション感覚
柳沢厚労相の 「産む機械」 発言に関しては、私はこのコラムで、原則的にマスコミのヒステリックな論調を批判しながらも、柳沢さんに対しても、しっかりとツッコミを入れている。
しかし、松岡前農相のスキャンダルは、ずっと無視してきた。いかにもツッコミどころ満載なのに、どうしてもツッコむ気がしなかった。
彼が自殺したというニュースで、なぜツッコむ気になれなかったかが、得心された。下手にツッコんだらいかにも壊れちゃいそうで、どうしてもためらわれてしまったのだよ。これは何というか、論理的というよりは、ある意味、直感的あるいは生理的なヘジテーション反応である。
ある程度強そうな相手に対しては、メラメラと闘志が燃えてしまっても、ちょっと脆そうな、壊れそうな、危うい感じの相手に対しては、思いっきりの攻撃を仕掛けづらいというのは、多くの動物に共通してみられる傾向なんじゃあるまいか。
受け身の下手そうなヤツには、危なっかしくてハードな投げ技は使えない。関節の固そうなヤツに思い切った関節技をしかけたら、簡単に脱臼しそうで逆にコワイ。簡単に傷ついてしまいそうなヤツには、冗談も下手に言えない。
松岡さんの場合には、なんだかそんなような感じがヒシヒシとしていたのだ。調子に乗ってツッコみ過ぎたら、何だかよくわからないが、きっと後で夢見の悪いことになるぞというような気がしていた。
国会で鬼の首でも取ったように追及質問をする野党議員には、「あ~あ、知ーらないぞ、知らないぞ」 みたいな気にもなっていた。「お前ら、そんなノー天気に攻撃できるなんて、動物的直感が鈍すぎ!」 と。
今になったら、その感覚の正体をこうして説明できるが、それは後出しジャンケンみたいなもので、種明かしの前は、漠然とした、自分でもわけのわからない感覚でしかない。
だから、まさか当人が自殺を図って、本当に死んでしまうとまでは、予想できなかったのである。世の中、本当にどう転ぶかわかったもんじゃない。まあ、責めるときでも最後の逃げ道までは塞がないようにという教訓なのかもしれない。戦争じゃあるまいしね。
| 固定リンク
コメント
ひとことです。がんなむぅです。
最近は、『手加減』を知らない反面、釈迦力の全力疾走もできない輩が増えてきました。
攻守のバランス、保てない?
バランスって、大切ですね。
投稿: がんなむぅ | 2007年5月30日 03:02
強力な武器を持つオオカミのような肉食獣は種の保存の為、弱みを見せた(降伏した)相手に対する抑制というのを本能的に備えていますが、反面、草食動物の方はそうした抑制を進化させていない為にいざ争いとなると、しばしば死に至る同士討ちを演じてしまうそうです。
(ローレンツ先生の受け売りですが)
問題は、人間はどちらに属するんだろうと考えてしまう事です。
投稿: clark | 2007年5月30日 03:13
がんなむぅさん:
>攻守のバランス、保てない?
民主党、ディフェンスも下手でしたもんね。
(いわゆる 「堀江メール事件」 の時なんか)
投稿: tak | 2007年5月30日 11:15
clark さん:
ハト派は、逆に恐い?
(私もローレンツ先生の受け売りです ^^;)
投稿: tak | 2007年5月30日 11:16