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2007年6月 9日

「軍備」という名の美容院

先日、青山骨董通りの裏道を歩いていると、 "Kakimoto Arms" という名前の店がある。武器マニアの店ではなく、美容院である。

なんでまた、美容院が「カキモト軍備」なんて名前なのかと思ったが、調べてみると、日本には「アーム」または「アームズ」という名の美容院が、かなり多いようなのだ。

念のため、前提として書いておこう。"Arm" という英単語の意味はもちろん「腕」なのだが、"arms" になると、単に「腕」の複数形の他に、別の単語として、「兵器」とか「武器」とか「軍備」とかいう意味になる。

本当か嘘か知らないが、ヘミングウェイの「武器よさらば」(A Farewell to Arms)を「両腕よさようなら」と誤訳した専門家がいるという有名な笑い話があるぐらい、ややこしいことなのだが、とにかく、"arms" は、普通は 「武器」 なのである。

で、気になって「アームズ/美容院」というキーワードでググって見ると、出てくるわ出てくるわ。前述の「カキモトアームズ」はかなり有名どころらしいが、その他にも日本には、「なんとかアーム」とか「かんとかアームズ」(「アームス」 と濁らない場合も多い) とかいう美容室が、かなり多いのだ (参照)。

それにしても、北海道から九州に至るまで、武器マニアの店と間違えられそうな名前の美容院がこんなにも多いというのは、いったいどういうことなのだろうか?

で、ふと思い当たったのは、もしかしたら、「腕前」という意味のつもりで使っているんじゃあるまいかということである。しかし、英語の "arm" には、テクニックとかスキルとかいう意味合いはない。

試しに、Goo 辞書で引いてみると、「n. 腕; (動物の) 前肢(し); 腕木; (いすの) ひじ掛け; 大枝; 部門; 入江; 力, 権力.」とある。間違えないようにしていただきたいが、「ひじ掛け」の後にあるのは、「大技 (おおわざ)」ではなく、「大枝 (おおえだ)」なので、技術とは無関係である。

要するに、"arm" という言葉はほとんど形状的な意味合いが強く、象徴的な意味合いとしては、「技術」なんかじゃなく「権力」「支配力」という意味合いで用いられる。どちらかといえば、「腕ずく」というニュアンスだ。ああ、彼我のメンタリティの差を感じるなあ。西洋人の脳みそは、筋肉でできているんじゃないかと思われるほどだ。

あるいはもしかして、フランスかアメリカにでも、洒落で "Arms" という店名にした美容院があって、それにあやかっているのだろうかとも思い、"arms/beauty" でググってみたが、それらしいところでは、せいぜい脇毛処理の話がひっかかるぐらいである。

ああ、気になってしょうがない。誰か、美容院の名前の 「アームズ」 の由来を知っている人がいたら、コメント欄ででも教えてもらいたい。

【H25年 4月 5日 追記】

この名前の由来がわかったので、"「腕ずく」で仕事する美容院が日本中に溢れてるので" というタイトルの記事にした。よかったらお読みいただきたい。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

 

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コメント

自分は仏語はサッパリですが、ググッたら(
本当は「ヤフッた」のですが・・・)下記のよ
うなサイトがありました。
http://violetame.seesaa.net/

フランス語の「ame」(アーム=魂)を英語と
勘違いして「arm」と標記したんじゃないです
かね・・・。
美容院には「arm」は確かに絶対そぐわないで
すね。

投稿: hachi | 2007年6月18日 16:51

hachi さん:

どうも。

ただ、ここでどうしてフランス語の 「魂」 が出てくるのか、
必然性がわからないんですが。

投稿: tak | 2007年6月18日 21:37

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