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2007年6月 1日

「カンタンケータイ」 への疑問

シニア層は 「携帯電話で残された最後の "新規契約市場"」 なのでそうで、携帯各社は、いわゆる 「カンタンケータイ」 で、新規ユーザー獲得を狙っているんだそうだ。(参照

だが、断言してもいいけど、この試みは、思うような成果を上げられないだろう。年寄りは「簡単なら使う」というわけじゃないのだ。

ケータイは、今や生活必需品と化したかのように思われる。まだケータイを持たなかった 10数年前は、そんなものなくても、全然不便を感じなかったのに、今ではたまにケータイを忘れて外出したりすると、一日中、漠然とした不安感にさいなまされたりする。

こんなような実感があるから、「ケータイは持ってて当たり前」と思っている人間は、「お年寄りにも使いやすいケータイ」なんてものを開発しようとする。そんなケータイがあったら、おじいちゃんやおばあちゃんは、喜んで使ってくれるだろうと。

しかし、それはほとんど幻想である。

「ケータイが当たり前の時代」 となった今日、それでもケータイを持たないということを選択している層というのは、「そんなものなくても、全然不便を感じない」という、我々が 10数年前に抱いていたイメージの方に、より「しっくりくる」ものを感じているのだ。

その状態に「しっくり」きてるんだから、「ほぉら、こんなにカンタンでしょ。家庭電話とほとんど変わらない操作方法なんだから、おじいちゃんだって、楽に使えるわよ」なんて言われても、それは余計なお世話なのである。逆に馬鹿にされているような気さえする。

家庭電話と変わらない操作方法なら、家庭電話を使えばいいじゃないかと、彼らはごく当然のことを考えるのである。「外出先で便利」なんて言われても、一人で外出するのは、近所の買い物か、散歩ぐらいのもので、遠出するときには大抵、誰かケータイを持ったものが一緒にいる。自分で慣れないものをもつ必要なんて、全然ない。

例えば、私の父などは、大分前に妹からケータイをプレゼントされたが、その電源を入れたことすら滅多になく、「使わんものに基本料払うのもアホらしい」と、つい最近、解約してしまった。

身近にも、家族から無理矢理ケータイを持たされながら、「かかってくるのがうっとうしいから」と、誰にも自分の番号を教えないという人が、何人かいる。こういう人は、大抵バッグの奥とか、デスクの引き出しの中とかにしまっていて、かかってきても気付かないなんてことが多い。

だから、例え番号を知っていても、「どうせかけても出ないから」と、誰もかけなくなる。宝の持ち腐れだ。要するに、価値観が違うのである。

総務省の「平成17年通信利用動向調査」によると、65-69歳のケータイ普及率は 48.3%なんだそうだ。この 48.3%の中でも、まともに使っている人は、七掛けか八掛けぐらいかもしれないが。

それでも、シニア層でも多分、3分の 1 ぐらいは、必要と感じて、別に「カンタンケータイ」でなくても、とっくに使いこなしているのである。その中には、機能を絞った「カンタンケータイ」では、逆に不便を感じる人も少なからずいるだろう。

「カンタンケータイ」がまったく無意味というわけではない。それを必要とする市場もなくはないのだろう。それでも、それによってシニア市場が大きく変わるなんて期待は、持たない方がいい。いくらカンタンでも、いらないものはいらないのだ。

【追記】

このエントリーをアップしてから、ふと気付いたのだが、ケータイ屋さんは、年寄りがケータイを使いこなそうが、引き出しの奥にしまい込んでいようが、関係ないんだろう。

要するに、息子、娘の世代が、「おじいちゃんにもケータイ持ってもらおう」と考えて、プレゼントするという、そのギフト需要がありさえすればいいと。そうすれば、全然使わなくても基本料金だけは入ってくるから。

なるほど、要は、本当にシニア世代が使うかどうかではなく、「これなら、おじいちゃんもきっと使ってくれるかも」という幻想を抱かせることが重要なのだな。

でも、それはまさに 「幻想」 なのだ。前述のうちの父の例をみてもわかるけど。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

私は40代なのでシニアではないのですが、携帯を持っていません。
ああいうおもちゃはとても好きなので興味はありますが、買ったところで滅多に使わないだろうと言うことと、それを持つと会社に首輪と引き綱を渡すことになるような気がして持たないようにしています。
そんな私もケータイ屋さんの思惑にのってしまって、一昨年妻の母親に簡単携帯をプレゼントしたのですが、やはりほとんど携帯されていないようです。
必要ない人にはかえって迷惑な道具だと言うことでしょう。

投稿: fujioka | 2007年6月 1日 22:29

fujioka さん:

>必要ない人にはかえって迷惑な道具だと言うことでしょう。

不必要なら、いくらカンタンでも要らないし、必要なら、多少難しくても挑戦するってことでしょうね。

カンタンケータイのコマーシャルで、じいさんが 「なんだ、カンタンじゃないか」と呟くのがありますが、だからといって、よろこんで使い始めるかといえば、そうじゃないと思います。

投稿: tak | 2007年6月 2日 16:24

こんばんは。お久しぶりです。当方は稀な例なんでしょうか、オヤジに携帯を持たせたクチです。それも2年前に。電話をかけても出ないオヤジと連絡の手段を取ろうとしたためです。オヤジはすぐに携帯メールを覚えまして、必要な連絡がお互いにできるようになりました。いわゆる家族割引なんで月額¥1700の負担が必要ですが、お互いに必要な連絡が取り合えるようになって安心しているようです。あいかわらず、自宅の電話には出ないオヤジです。ちなみにメールは家族内のみしか使わないので無料。「おれおれ詐欺」とかは、そもそも電話に出るからひっかかるのであって、そういう点ではこれで良かったのだと思っています。ただし、個人的には、オヤジが自宅の電話に出るようなら、自分の携帯もやめたいと思っているくらいです。めったにかかってこないし、かかってくるときは面倒な話であることが多いから・・・。通話料金も高いので、こちらからはかけません。じゃあ、また!

投稿: バードマン | 2007年6月 5日 21:37

バードマン さん:

ケータイ電話を持つこと自体は、それほど希なことじゃないんでしょうけど、家庭電話には出ないで、ケータイなら出るというのは、おもしろい例のように思います。

ハッピーなコミュニケーションをどうぞ。

投稿: tak | 2007年6月 6日 01:22

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