学習塾に通わせるのはコスト効率が悪い?
私の知り合いは、「子供を学習塾に通わせるのは、対費用効果の視点で考えると、コスト効率がはなはだ悪い」 と主張する。
親は少しでも偏差値の高い大学に子供を入学させようと必死なのだが、偏差値がたかだか 2~3ポイント高い大学を出たところで、就職に決定的に有利というわけじゃない。
「東大とか京大とか、早慶とか、上智とか、六大学とかなら、少しは就職に有利なんだろうけど、その他のちょっといい大学を出たからって、必ずしも一流企業に就職できるってわけじゃないし、三流大学を出ても、世間で成功してるやつだって、いくらでもいるんだし」 と、彼は言うのである。
「だったら、偏差値がちょっとばかり高い大学に入学させるためだけに、月に何万円も子供に投資するなんていうのは、馬鹿馬鹿しい。他のことに金を使って、子供をのびのびと育てるほうが、ずっといい」
なるほど、その主張にはほとんど同意せざるを得ない。ちょっとだけ反論するとしたら、私なんか、一応ワセダの、しかも大学院を出ているけど、一流企業なんて、全然縁のない暮らしをしてきたということだけだ。
そしてまた、学習塾に子供を通わせる親のすべてが、子供を一流大学に入れて、そして一流企業に就職させようと、明確に意識しているのだろうか。それもちょっとだけ疑問だ。
かなり多くの親は、ただ自分自身の漠然とした安心のためにだけ、子供を塾に通わせているだけなんじゃあるまいか。マジに子供の偏差値を上げたいというなら、もう少し塾の選択をしてもいいと思うのだが、多くは、単に手近な塾に通わせているだけだ。
月にたった数万円の出費で、ある程度の安心感を得られるのなら、それはもしかしたら、精神衛生上かなり安い投資かもしれない。子供の将来は、全然別問題として。
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コメント
こんにちは、塾講師+経営をしていたものです。話題の件についてコメントいたします。
学力と幸せの関係については、あまり関係ないと思います。高学歴だから幸福を感じる人は、低学歴でも幸せの口実を見つけます。低学歴だから不幸だという人は、高学歴でも不幸の口実を見つけます。幸福の口実を見つける人は幸福に、不幸の口実を見つける人は不幸になるだけの話だと思います。
塾通いと学力向上の関係について。高成績の子は向上することが多いです。そしてなるべく大きな塾に通わせるのが望ましい。学校では会えない「遥かに頭の良い子」を見ることで、さらなる向上を目指すようになるからです。また(役に立たないとは言いませんが)高成績者は低成績者たちのやっかみに気を使う必要があり、そのぶん学習が妨げられます。塾は高成績者同士のコミュニティーが盛んですから、余分な労力をかけず学習に専念できて学力を向上しやすいです。低成績の子については、致命的な学力遅れを防止する効果はあります。それ以上の学力向上効果は、正直あまりないと思います。
塾の効果として最も大きいのは、次の2つだと思います。
まず1つは、子の世界が広がるということです。塾に行かない子は、学校外の世界をあまり知りません。保護者の方には自信をもって次のように説明し、満足して頂いておりした。「ご承知と思いますが、塾によって必ず学力がグングン伸びるとは限りません。しかしそれでも塾にはメリットがあります。塾に通ってないお子さんは、入学校の世界しか知りません。塾に通ってるお子さんは他校生徒と交流しますから、話題や遊びの幅が広いのです。ですから当塾でなくても結構ですが、塾通いはお勧めします。なお当塾では高学歴講師とは別に、地元高校生もバイト採用しております。もしよろしければ、2年後に入学するであろう高校の先輩と一足先に交流してみてはいかがでしょうか」
もう1つは、親の責任感を満たすということです。子の学力が不本意なものであったとき、親として何もしなかったのか、親としてできるだけのことはしたのか。親としては後者でありたいのです。そこで塾に入れるわけです。月謝を払いさえすれば、親としては救われた気持ちになるのです。自分はできるだけのことはした、親としてつとめは果たしたのだ、と。
特定の生徒は別ですが、塾において学力向上はあまり重要ではありません。子の楽しみ、親の安心感が最も重要なニーズです。
投稿: ある講師 | 2007年8月12日 13:43
ある講師 さん:
コメント、ありがとうございます。
なるほど、なるほどと、かなり納得しました。
投稿: tak | 2007年8月12日 22:41