蝉の鳴き声に関するレビュー
シズル感たっぷりのアブラゼミの鳴き声がピークを越え、変わってツクツクホウシの鳴き声が目立ってきた。夏も終盤である。
「アブラゼミ」 の名の語源は、油炒めの音のような鳴き声からきていて、英語の "sizzle" も「熱でジュージューいう音」の意味。アブラゼミがシズル感たっぷりなのは道理だ。
できることなら、アブラゼミを "summer sizzler (サマー・シズラー)"、ツクツクホウシを "summer closer (サマー・クローザー)" と名付けたいほどだ。"Summer Sizzler" といえば、アメリカン・プロレスの夏シリーズの定番的名称だが (参照)。
蝉の鳴き声をテーマにして、私は記憶に残る限り、これまで 2つのエントリーを書いている。「セミの鳴き声というトラウマ 」と、「ツクツクホウシの修練」である。どちらも、我ながらなかなかの趣だと思っている。
前者は、蝉の鳴き声に関するトラウマの話である。我が故郷の庄内にはミンミンゼミがいなくて、「ジージー」と鳴くアブラゼミが主流だった。ところが、どんな本を読んでも、蝉の鳴き声は「ミーンミーン」と表記されている。
幼い私は蝉の種類の違いとは知らず、洗練された都会人の耳には「ミーンミーン」と聞こえるはずの鳴き声が、どうしても「ジージー」としか聞こえないというのが不思議だった。自分の耳の、いかにも田舎者じみた不風流さを呪っていたのである。
後になって、ちゃんと自分の耳にも、紛れもなく「ミーンミーン」と聞こえる別種類の蝉が存在すると知るのだが、このトラウマの痕跡は、今も心の隅のどこかに残っているような気がしている。
そして、後者のツクツクホウシの鳴き声に関する印象から発したエントリーには、次のように記している。
ツクツクホウシは、ウグイスのようには、自らの鳴き方に習熟しないようなのだ。「ツクツクホウシ、ツクツクホウシ、ツクツクホウシ」と、何度か繰り返すと、根気が続かなくなり、ウヤムヤに帰してしまうのである。
ツクツクホウシは、蝉の中では最も複雑な鳴き方をすると言っていいと思うのだが、悲しいことに、その鳴き方を完成段階にまで高めることができないのである。
それは、鳴き始めてたった一週間で命が尽きてしまうため、ウグイスのような時間をかけた修練ができないからだと、私は以前から信じている。ツクツクホウシがもし半年生きるとしたら、見事な洗練を獲得して、翌年の早春には延々と「ツクツクホウシ ・・・」を繰り返すだろうと思うのだ。
我が家の次女は、子どもの頃、「ツクツクホウシって、いつも、『くそ、またカンじまった!』 なんて、悔しがってるのかなあ」と言っていた。うむ、向上心のあるツクツクホウシなら、悔しがってるかもしれんぞ。
なお、ツクツクホウシの鳴き声について、夏目漱石は『吾輩は猫である』の中で、次のように記している。(以下、引用)
これもついでだから博学なる人間に聞きたいがあれはおしいつくつくと鳴くのか、つくつくおしいと鳴くのか、その解釈次第によっては蝉の研究上少なからざる関係があると思う。
和歌ログの昨日のエントリーは、次の歌である。
鳴き方を研ぎ澄ます間もなく死ぬるつくつくほふしの夏ははかなし
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コメント
夏といえば必ず「ミーンミンミンミンミーン」を使うテレビに違和感感じまくっていた九州人が通ります((((・・)ノ
セミと言えば「ワシワシワシワシワシ!!!!!!!!!!!!!!!」なので・・・。
!が多いのは、その通りの音量と数だからです・・・窓閉めないと何の音も聞こえません。風流もなにもありゃしない(笑)
投稿: あき | 2007年8月22日 23:04
あき さん:
>セミと言えば「ワシワシワシワシワシ!!!!!!!!!!!!!!!」なので・・・。
これって、音に聞く 「クマゼミ」 ですか?
すごそう。
近頃では、無線 LAN の電波に近い電波まで発したり、光ファイバーのケーブルに穴明けたりするそうで、東日本の人間には、妖怪じみた印象です。
投稿: tak | 2007年8月23日 01:00
こんにちは。
私は子供時代を標高の高い場所で過ごし、現在は太平洋岸に住んでいます。
子供の頃は、セミと言えば「ミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ、ニイニイゼミ」でした。
よくセミ採りに行って、標本作ってました。
現在住んでいる場所で見られるのは「アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクホウシ」です。
気候によってセミの種類があるんですよね。
ミンミンゼミは多分、比較的涼しい場所にいるのだと思います。
そして、どこにでもいるアブラゼミ・・・(笑)
投稿: karin | 2008年8月 3日 20:53
karin さん:
近頃、東京湾岸地域でもクマゼミの鳴き声が確認されたそうです。
(私はまだ聞いていませんが)
温暖化がまたひとつ進んだようですね。
投稿: tak | 2008年8月 3日 23:26