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2007年8月21日

確かに「安い中国は高くつく」だろうが

フィナンシャル・タイムズが「安い中国は高くつく」というリチャード・マグレガー氏の署名記事で、「世界が払うべき中国のコストは、今後必ず上昇する」と指摘している。

中国の様々な問題解決に要するコストを、中国製品を輸入する先進国が応分に負担すべきではないかという主張だ。

マクレガー氏は "「安い中国製」 を可能にしているのは、ずさん(あるいは有名無実)な環境基準だったり、投資誘致の競争を勝ち抜くために各地域が拠出する資金や様々なインセンティブだったりする" としている。

しかし今では、"付加価値の低い商品を作っている企業にかつて与えられていた低金利融資や投資誘因が、どんどん引き揚げられている" として、安い製品を作る中国の中小民間企業の存立基盤が危うくなりつつあると指摘している。

そして、この記事の終盤で、マクレガー氏は以下のように主張する。

しかし中国の人口問題のおかげで、アメリカのウォルマートの棚には安い商品が並び、それでアメリカの消費者がハッピーでいられるというのなら、問題解決のコストはそれなりに分担するべきではないだろうか? ます第一歩として、中国が排出する温室効果ガスの一部は、中国製品を買う人たちが住む国が排出したものとして、カウントしたらどうだろうか。

「カウントする」 ということは、その分の金を負担するということだ。つまり、中国の安い製品を買いたいのなら、中国が安い製品を問題なく供給し続けられるように、環境対策コストを応分に負担すべきだということである。一見すると、とても美しい主張のように思われる。

しかし、ことはそう簡単には進まないだろう。

品質が多少悪くても、それに目をつむれるぐらい安いからこそ、中国製品は世界で受け入れられているのである。品質が悪い上に、環境対策費までバイヤー負担になって上乗せされるとしたら、中国製品を輸入し続ける意味があるだろうか。

日本では、ただでさえ国内製造業の空洞化が問題視されている。環境対策費を上乗せされた品質に問題のある製品を、わざわざ海の向こうから輸入するぐらいなら、国内の安定した品質の製品を仕入れようという動きが、少なからず強まるだろう。

それに、中国製品を買うのは外国ばかりではない。中国国内でだって消費されるのである。だったら、中国自身が環境対策費を最も積極的に負担すべきということになる。なんといっても、中国の環境悪化で最も被害が大きいのは中国自身なのだし。

それに、こうしたことはあまり言いたくはないが、そこまでフェアに中国を信頼していいのだろうかという疑問も残る。

仮にバイヤー側が 「我々は貴国の環境対策費を負担する用意があるから、そのコストを上乗せした価格をオファーしてくれても、これまで通りの買い付けを保障する」 なんて申し出たとしても、中国側が労せず手にした余剰利益を、きちんと環境対策に振り向けるとは、私には信じられないのである。申し訳ないけど。

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