少しは自分で調べて書こう
先月 22日の当コラムにも書いたのだが、中国製衣料品に高濃度のホルムアルデヒドが検出されたというセンセーショナルな報道の余波は、まだくすぶっている。
「ホルムアルデヒドは発ガン物質」 という情報が独り歩きして、中国製の衣類を着ると皆がんになると思った人もいるらしい。
某団体には「家中の中国製衣類を引っ張り出して捨ててしまおうとしたら、結局手持ちの衣類のほとんど全部を捨てなければならないと気付いて、諦めた。どうしてこんなに中国製の衣類ばかり多いのか」 という消費者からの怒りの(?)電話まであった。
確かに、日本で流通している衣料品の 8割近くが中国製と見られている。大抵の人は、手持ちの衣類のラベルを見れば「中国製」 とか "MADE IN CHINA" だらけのはずだ。それらを全部捨ててしまったら、ほとんど裸で暮らさなければならない。
しかし報道を読むと、消費者がこうした過剰反応を示すのは無理もないという書き方がしてある。ほとんどは、中国製衣類から基準を大幅に超える発ガン物質が検出されたと報じているだけなのだ。それを読んだら、不安になるのも当然だ。
不安を煽るだけ煽って、対策をきちんと伝えなかったジャーナリズムは、ちょっとだけ罪だなあと思う。というわけで、私は及ばずながら、先月 22日のエントリーで、「ホルムアルデヒドはとても水に溶けやすい」ということを書いた。要するに、着用前に水洗いするだけでこの問題の不安は解消されるのだ。
確かに中国製品の中にはひどいものが多く、それを糾弾する世論を盛り上げることは重要だ。しかし、消費者レベルで簡単にできる対策があることを知らせるのは、また別の問題である。それをしたからといって、中国を弁護することになるわけでは決してないのだ。
冷静に対策まで書いたら、記事の衝撃度としては薄れてしまうだろうが、読者のためを考えるなら、やはり書くべきだっただろう。こんなことは、もし記者が事前に知らなくても、ちょっとウェブで調べればすぐにわかることなのだから。
今回の騒動は、ジャーナリズムの不勉強と、「マスコミは決して "読者のため" に記事を書いているわけじゃない」という姿勢を垣間見せてしまったと思う。
小泉政権の時から、調べればいくらでも出てきたはずのスキャンダルを、安倍政権になってから急に先を争って書くというのも、似たようなマスコミ体質だ。今なら書き放題に書く方が売れると思うから書くのである。まあ、ある意味では空気を読んでいるのだが。
それから、今回のホルムアルデヒド問題について触れたブログでも、ほとんどは記事をコピペして不安を述べただけで、対策まで調べて冷静に書かれたエントリーは極端に少ない。少しは自分で調べて書いてもいいよねと指摘しても、ウチ、炎上したりはしないよね。
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コメント
お邪魔します。がんなむぅでなも。
スポーツ紙の『○○発覚!…か?』という期待感もなく、『知らないことが幸せ』というレベルでもなく、まるで『無責任、無節操報道』ですよね。(なんだか、みずほちゃん的な切り口…)
”情報誌”と銘打った、『中身そっちのけで購読料と広告料の回収に終始するタウン誌崩れ』よりも、存在意義が明確でないかも…。
自分で調べて裏付けを持っておかないと、(晒すのに)不安で仕方がない。
投稿: がんなむぅ | 2007年9月10日 07:53
がんなむぅ さん:
ほとんどの報道は、ホルムアルデヒドが、「発がん性」 があり、「シックハウス症候群」 の原因になると書かれているだけですね。
普通は、「皮膚や粘膜への刺激」 が強く、かぶれたり湿疹が出たりすることがあるというのが、一番目に見える問題なのですが、それは無視されています。
通信社からの情報を、記者がリライトしているだけで、自分で調べたりしていないというのが、みえみえです。
それにしても、既製服のシェアがまだ高くなくて、「洋裁」で服を作るのが普通だった昔 (昭和30年代までかな) は、街に生地屋さんがたくさんあって、店に入ると目を開けていられないほどの刺激があったものでした。
あれって、ホルムアルデヒドが充満してたんでしょうね。
ただ、「日本だって昔はそうだった」 というのを免罪符的に言う人がいますが、30~40年前のスタンダードで現代の金儲けをしているというのは、やはり問題だと思います。
投稿: tak | 2007年9月10日 11:04