本物のフレンチキス
今年 7月 11日のエントリーで、ニューヨークでは 「フレンチキス」 は舌を絡める濃厚なキスではなく、ほんの挨拶代わりの軽いキスのことをいうらしいと書いた。
ところが驚いたことに、日本でも唇をちょっと合わせるだけの軽いキスを、「フレンチキス」と称すると思っている人が多いようなのだ。
件のエントリーで紹介したのは、ニューヨーク在住の日本女性の「英語の間違い経験」というネタで、深い仲でもない男性からの「ほんのフレンチ・キスだから」という申し出を、目を丸くして「No !!!」と断ってしまって、後でバツが悪くなったというお話である。
ニューヨークでは、ほんの挨拶程度の軽~いキスのことを「フレンチキス」というらしいのだが、その日本女性は、日本流の意味でディープキスを求められたと思って、大いにあせってしまったというのだ。
確かに日本では「フレンチキス」といったら濃厚なキスということになっていると、私なんかは信じていたのだが、どうやらそうでもないらしいのだ。「教えて Goo」に、フレンチキスは、舌を入れるキスなのか、軽い唇だけのキスなのか、どちらなのかという質問が寄せられている(参照)。
どうやら、少女コミックスの世界などでは、「フレンチキス = 軽いキス」という解釈がまかり通っているようなのだ。ふ~ん、近頃の少女文化は、ニューヨーク流なのかしらん。
ところがよく調べてみると、ニューヨークという特定の都市ではどうなのか知らないが、フツーの英語文化圏では、フレンチキスはやっぱり濃厚なキスのことをいうんじゃあるまいかという気がするのだ。
"French kiss" のキーワードでググってみたら "French Kissing Tips & Techniques"(フレンチキスのコツとテクニック)というページが見つかって、このページの指南通りにキスをしたら、それはそれは、大変なことになってしまいそうなのである。少なくとも私はこの域に達していないと思う。
詳細は上記のリンクをクリックして、ご自分で読んでいただくしかない。英語としてはそれほど難しいわけじゃないので、高校生レベルの読解力があれば大丈夫だと思う。ただ、"lick" (舐める) とか、教科書にはあまり出てこない単語を知っておかなければならないが。
ここで指南されるテクニックの要点は、
"The tongue has a very sensitive surface, which is why tongue to tongue is the essence of french kissing."
というところにある。「舌の表面はとっても敏感で、それこそが "tongue to tongue" (舌と舌) がフレンチキスのエッセンスである理由」 と言っているのである。やっぱり、フレンチキスは濃厚なキスのようなのだ。
もしかしたら、件のニューヨークの男は、「フレンチキスは軽いキス」だなんて、だまし討ちにしようとしたのだろうか。いやいや、ニューヨークでも日本でも、フレンチキスには 2通りの解釈があるのだろうか。その辺の疑問はまだ解決されていない。
ちなみに、ここで紹介したフレンチキスのレシピの問題点は、際限がないことなのである。まず最初にしっかり歯を磨くということが書いてあり、続いてやさしく肩を抱くとか、鼻をぶつけないようにやさしくキスをするとか、順を追ってとてもていねいに説明してある。
そして、徐々に相手の唇の隙間から舌を侵入させるとか、絡ませるとか、相手の口内のいろんなところを "explore"(探検)するとか、どんどん佳境に入っていって、最後はただひたすら "continue"(続けなさい)で締めくくられているのである。
つまり、どのようにして唇を離すかは想定されていないのだ。本物のフレンチキスとは、かなり恐ろしいものなのである。
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