「サブプライム」という言葉は嫌らしい
米国の金融不安の元凶扱いにされている「サブプライム・ローン」だが、"subprime" という言葉は、"prime(上位)" の 下だから、「中位」とか「下位」とかの意味なのだろう。
この言葉、元々は特殊な業界用語のようで、フツーの英和辞書には載っていない。Goo 辞書でも出てこない (参照)。
手元にある研究社発行のリーダーズ英和辞典は、収録語数 20数万語を誇るが、そこにも出ていない。そのくせ、web 上で検索すると、くさるほど出てくる。"Subprime" でググると、約 1,320万件もヒットするし、「サブプライム」 というカタカナでも、約 292万件ヒットする。(本日時点)
フツーの辞書で出てこないものとしては、最強の言葉じゃないかと思ったが、なんと、Goo 辞書の国語辞書には、新語として出ていた (参照)。以下、引用である。
(1)上部に次ぐ位。
(2)マーケティングなどで,信用リスクの大きい消費者。一般に中低所得者をいう。
なんと、フツーの英和辞書には出ていないのに、国語辞書には、ちゃんとスペル入りで出ているという、非常に希な類の単語なのであった。
元々、この言葉、私はあまり好きじゃない。「本当は "prime" 層だけを相手にしたいんだけど、その下の連中のことは、"prime の下" とでも呼んで、別のカテゴリーとしてマーケティングしとこうか」 といったようなニュアンスで、失礼っぽい感じがプンプン臭ってくる。
慇懃無礼な差別用語とでもいおうか、ストレートな差別用語よりもずっと嫌らしい。こんな嫌らしい意識で運用されてきた山っ気たっぷりの際物分野なんだから、破綻して当然という気がする。
【当日午後、追記】
山辺響 さんのコメントをきっかけに、日本語での似たニュアンスの用例を思いついたので、追記しておこう。「特上」「上」 「並」 で、「並」というのは、実はスタンダードじゃなくて、最低クラス。フツーは「上」を注文しろよなという、無言の圧力。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 世界はきな臭いが、米国と日本が踏ん張らなければ(2024.10.01)
- 初めて「何を言ってるのかわかる」自民党総裁就任会見(2024.09.28)
- そりゃ、東洋の果ての万博なんて誰も知らないさ(2024.09.27)
- トランプを支える "asshole" (ケツの穴)人気(2024.09.25)
- トランプ選挙集会ルポに見る米国の「アブナい一面」(2024.09.24)
「言葉」カテゴリの記事
- 「レベチ」と「微レ存」という略語(2024.10.09)
- セブンとセブイレ、さらにスカツリ、いたせり、絞り染め(2024.09.29)
- 親友を空港に置き去りにした "AITA"(あ痛!)な女性(2024.09.23)
- 画びょう、押しピン、プッシュピン・・・ 同じ物? 別物?(2024.09.03)
コメント
リーダーズだと、新語・専門用語を強化した「リーダーズ・プラス」には収録されていますね。
「prime」は「優良」という雰囲気だと思うので、「primeの下」だと「普通」だろうと思うんですが、そうではないのが微妙なところ(笑)
投稿: 山辺響 | 2007年9月 3日 15:35
山辺響 さん:
>「primeの下」だと「普通」だろうと思うんですが、そうではないのが微妙なところ(笑)
日本語でもありますよね。
「特上」 「上」 「並」 で、並というのは、実はスタンダードじゃなくて、最低クラス。
フツーは 「上」 を注文しろよなという、無言の圧力。
これ、我ながらいいたとえなので、本文に追記しておきました。
投稿: tak | 2007年9月 3日 15:55