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2007年9月10日

武道とダンス

中教審が武道とダンスを中学校で男女とも必修にするという答申を出して、どうやら実現されてしまうらしい (参照)。

で、世の中では、安倍内閣の「戦後レジームからの脱却という復古主義」の色合いををダンスで薄めるナンセンスだとか、お約束通りの反論が渦巻いている。

この件に関しては、私はややシニカルなスタンスだが、頭っから反対というわけじゃない。中学で武道やダンスを習うということには、少しはメリットだってあるはずだ。

完全に個人的な趣味だけで言ったら、中学で武道とダンスを習うのも、悪くはないと思う。私が中学生なら、単純に楽しめるだろう。だけど、もちろん楽しめない中学生も少なくないだろうし、さらに、楽しめない大人はもっと多いだろう。

外国を旅行すると、日本人というだけで、何かの武道をやっているものと思われることが、案外少なくない。さすがに「ニンジャ」なんていうのは論外だが、「ジュードー」や「カラテ」を身に付けてるんじゃないかなんて、勝手に思われたりする。

そんな時、「ジュードーは学校で習ったよ」ぐらい言えたら、少しはカンバセーション・ツールになる。多分、その程度では喧嘩になったら使い物にはならないけれど。それから、これからの世の中、ダンスぐらいできた方が何かと役には立つかもしれない。

武道を必修化することの中教審的な意味は、「日本の伝統や文化を知るために役立つ」ということになっている。これを好意的に意訳すると、「礼儀作法が身に付く」というあたりに落ち着くんじゃないかと思う。中教審の具体的な本心は、多分ピンポイントでここにあるのだ。

いくら中教審でも、中学生が週に 1~2時間、授業で武道をやったぐらいで「日本の伝統や文化を知る」ことになるとは、本気で思っていないはずだ。ただ、「礼に始まり礼に終わる」 という武道を必修化すれば、挨拶ぐらいはまともにできるようになるかもしれないと期待しているんだろう。

しかし、実際にはそれだってあぶないものだ。町道場の子供クラスに通う子どもたちを見ても、本当に礼儀作法が身に付くのは一握りである。ましてや、必修化で水で薄めたような指導をしたところで、期待通りの成果なんて現われない。そんなものである。いくら学校で英語教育をしても、なかなか身に付かないのと同じことだ。

それに、学校で武道をやってもすぐさま 「復古調」 の色合いが強まるというほど、今の子どもたちはヤワじゃない。それに今の武道は「スポーツ」なのだから、「伝統文化教育」という旗印にあまり期待してはいけないし、逆に、無闇に反発するほどのことでもない。

それに、私だってこう見えても、ちゃんとした武道の黒帯をもらっているけれど、上下関係が絶対的ないわゆる「体育会的雰囲気」には、かなりの反発を覚える。それだけはきちんと表明しておこう。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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