選挙の馬鹿馬鹿しさの根源は公選法
先月 19日に "「選挙に Web を使わせろ!」 キャンペーン " という記事を書いたのだが、あまりにも反響が少なくてずっこけてしまった。
で、ちょっと意地になってしまって、今度は「選挙で Web を使わせろ! -ネット選挙運動解禁キャンペーン公式サイト」なんてサイトを立ち上げてしまったのである。
で、基本的にはのんびりと、ゆる~く、しかし執拗に、ネット選挙運動解禁の日まで、このキャンペーンを展開したいと思っているので、よろしく。
ネット選挙解禁というテーマでは、Oh My News の一連の特集記事がとてもわかりやすくまとまっているので、件の公式サイトからリンクを張っておいた(参照)。全部読むのはなかなか時間がかかるが、お暇なときにでもクリックしてご覧いただきたい。
その一連の記事の第 1回目に、"原則禁止”の公選法を打ち壊そう" という記事がある。これを読んで、公選法というものがどうしてあんなにも変なのか、「なるほど」と理解できた。
私は以前、「日本一シュールな法律条文」というエントリーで、「選挙運動のために使用される自動車の上においては、選挙運動をすることができない」(公選法 第141条の3)という条文を槍玉にあげた。こんなおかしな条文を書いた役人の頭の中をのぞいてみたいとまで書いた。
しかし公職選挙法というのは、最初から最後までほとんどこのトーンで構成されているようなのである。つまり日本では、「選挙運動は、原則として、しちゃいけない」のだ。そして、公選法の中で「ただし、これとこれなら、こういう条件の下にやってもいいよ」という理屈になっている。
多くの先進国では(あぁ、本当はこういう言い方、嫌いなんだけど)、選挙運動は原則自由で、その上で法律で禁止事項や制限事項が決められているようだ。だから、新しい手法が出現すれば導入しやすいし、それに、わかりやすいし、お上の匙加減次第で取り締まるという嫌なことも生じにくい。
ところが日本ではまったく逆で、「本来、なんにもしちゃいけないんだけど、これとこれだけは、特別に許してあげるからね」という「お上の御慈悲」みたいな論理なものだから、おかしなことになってしまうのだ。
本来、法律というのはしちゃいけないことを明確にして、それが犯されたら罰則を与えるというのが本筋だと思うのだが、公選法というのは、「お上が許したことしか、やっちゃダメ」というコンセプトなのだ。道理で妙に窮屈なわけだ。
私が槍玉にあげた連呼に関しても、要するに、「選挙カーでは選挙運動しちゃいけないんだけど、特例として、連呼だけは許してあげる」ということなのだ。どう言い換えようが、やっぱり十分に変だけど。
で、公選法には「選挙運動はしちゃいけないけど、特例として、ウェブを使ってもいいよ」という条文がないので、せっかくの便利な道具が使えないのだ。ちなみに「選挙カーに大型液晶画面を取り付けて、演説を流していいよ」という条文もないので、将来的に液晶大画面がめちゃくちゃ安くなったとしても、多分、できないのである。
総務省の運用上の見解では、ウェブは「公職選挙法が公示・告示後の配布を制限している『文書・図画』 にあたる」と考えられていて、その範疇で許されるのは「枚数を制限されたビラやハガキなどで、それ以外は "原則禁止" (つまり、ウェブも禁止)」ということになるのだそうだ。
「文書・図画」の配布枚数が限られているのは、資金の潤沢な候補と貧乏な候補との間の公平を期すためだそうだが、紙の枚数を制限したところで費用に大した違いは生じないというのは、印刷の発注をしたことのある人ならよく知ってることだろう。
それに、その趣旨からいったら、ウェブを使えばコストなんてめちゃくちゃ安くなるし、資源節約にもなるのだから、いっそ推進すべきだろうにね。それに、ウェブ上にテキストや画像で表示したら公選法で制限されている「文書・図画」にあたり、禁止ということになるが、「音声」で流しちゃえば、全然問題ないんだそうだ。Wave ファイル万歳!
このあたり、なんでもかんでも「原則禁止」のくせに、「音声ならいいよ」という条文があるわけでもないのに、なんで OK なのか、その辺の総務省の理屈がさっぱりわからないのだけれど、とにかく、問題なしという見解が出されているんだそうだよ。なんか、頭悪いんじゃないの?
そんなことだから、実際の選挙では、グレーゾーンの中でうまくやるのが当選への近道ということになる。で、妙にすれっからした「選挙のプロ」が幅をきかせることになり、フツーの人間の常識が通じなくなる。
というわけで、8月 3日の「やっぱり変だよ、公職選挙法」というエントリーでも触れたのだが、とにかく公職選挙法こそが、日本の政治の最も守旧的な要素のようなのである。私がしつこく書き続けている「選挙カーの連呼」の馬鹿馬鹿しさと、選挙運動にウェブが使えない馬鹿馬鹿しさは、根っこが同じみたいなのだ。
ああ、ほんとに馬鹿馬鹿しい。
当ブログの、この問題の関連記事一覧 (だんだん核心に迫っているかも)
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